教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

PR

×

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
September 9, 2005
XML
カテゴリ: 今日もいい日だ
今日は両親を連れて東京郊外の府中市にある、府中市美術館というところに行ってきました。家から車で40分ほどですね。

これを見ようと思ったのは、丁度今「ホイットニー美術館コレクションに見るアメリカの素顔」という展覧会をやっていたからなんです。私はアメリカ美術についてその善き理解者といえるかどうか、いささか心もとないところがありますが、それにしてもニューヨークまで行かずしてホイットニー美術館収蔵の作品が見られるとすれば、一応は見ておきたいですからね。

ちなみに、このホイットニー美術館というのは、ホイットニー夫人という方が個人的に集めたコレクションをもとに作られています。20世紀のはじめ、彼女はアメリカの若い画家たちのパトロンとなって、無名の彼らの絵をどんどん買ってあげていた。ところが彼女のコレクションが5000点ほどになったところで例の有名なメトロポリタン美術館に寄贈しようとしたら、あっさり断られてしまったというんですね。メトロポリタンの学芸員の目から見れば、当時のアメリカ美術なんて、無価値に思えたのでしょう。で、クヤシー!と思った(かどうかは分かりませんが)ホイットニー夫人は、だったら自分で美術館作るからいいわ! ってな感じで「ホイットニー美術館」を作ってしまった。それが1930年の話。大不況のさなか、そんなことができるのですから、ホイットニー夫人というのはよほどのお金持ちだったんでしょうな。ミドルネームが「ヴァンダービルト」ですから、ひょっとするとアメリカ南部の鉄道王ヴァンダービルト一族の出なのかも知れません。それにしても、メトロポリタン美術館が断ったホイットニー夫人のコレクションこそ、今となってはアメリカ現代美術の代表作ばかりなのですから、大したもんです。えらい、えらい。こういう奇特なパトロンがいるから、美術史というのは作られていくんですな。

さて、そんなわけでホイットニー夫人の審美眼やいかにとばかり展覧会場に乗り込むと、のっけからエドワード・ホッパーの佳作があるではないですか。今回の展示の目玉ですね。ホッパーというのは、ご存じの方も多いと思いますが、独特の画風を持った画家で、私の好きなアメリカ画家の一人です。ま、その画風を私なりに表現すれば、「音のない風景」を描く画家、とでも言いましょうか。彼が描くのは何気ない、むしろ平和な、と言っていいような日常の風景なのに、なぜかその風景からは人間のたてる「音」が聞こえてこないような感じがするんです。静謐な、という意味ではなく、音が暴力的に遮断されている感じ。そういう意味での「音のない風景」というのは、見るものを不安にします。

また彼はしばしば穏やかな日差しの中に佇む郊外住宅などを画題にするのですが、その「日差し」の描写が一種独特で、明るく健康的な太陽から放射されたものとは思えないような、冷たい日差しなんです。つまりホッパーの絵には音がなく、また熱がないんですな。それは、単純な言葉に置き換えてしまえば「アメリカ生活における人間性の蹂躙」を象徴しているのかも知れない。しかし、そんなふうに言葉で言ってしまったら、一体なぜ、彼の絵が私を惹き付けるのか、その説明がつかなくなります。ま、ホッパーはなにやら独自の不思議な世界を作り上げているなぁ、ということだけを言っておきましょうか。今回の展覧会では、ホッパー作品2点はどちらもよかった。

それにしてもいつも思うのですが、エドワード・ホッパーの作品というのは、ある意味、アメリカ美術を代表しているように思うんですよね。つまりアメリカの絵には、人間のぬくもりとか、人間の笑顔とか、要するに人間性の自然な発露が描かれていなくて、むしろそういうものが抜き取られた後の、きわめて「無・人間的」な世界が描かれているように、私には思われるのです。アメリカ人というのは、すごく陽気な国民性を持っていると思うのに、彼らの描く絵は決して陽気ではない。ハリウッド映画なんて能天気なほど人間性賛美の映画ばかりなのに、アメリカ絵画は決してそうではない。不思議なところです。

ま、それはともかく、この他今回の展覧会で見られるのは、ジョージア・オキーフ、ジャクソン・ポロック、ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、フランク・ステラ、ジャン=ミシェル・バスキア、ジャスパー・ジョーンズ、マーク・ロスコといった面々の作品です。要するにアメリカのモダニズム画家全員集合! ということなんですが、ま、私の好みからすると、(ホッパーとウォーホルを除いて)これらのアーチストの作品の中の代表的なものが展示してある・・・とは言えないです。私の好きなバスキアにしても、もっといい作品があるはずなのに。それに展示作品がちょっと少な過ぎますよ。オキーフもポロックもたった1点ずつですしね。今回は作品自体が大きなものを選んで持ってきたとのことですが、それよりもっと多くの点数を見せてもらいたかったな。

ところで、今回のようなモダニズム画家の作品の何たるかということについて、おおよそのところを理解したいという方のために最適の本があります。中ザワヒデキという人の書いた『近代美術史テキスト』という500円くらいで買える黒い小さな小冊子なんですけど、一般の書店というよりは、美術館のミュージアムショップなどで売っていることが多い。中ザワヒデキという人は、確か医学部か何かを出た人なんですが、その後アーチストに転向したという妙な肩書の人で、確か私と同じくらいの(若い!)年齢の人なんじゃないかと思います。随所に彼一流のヘタウマ技法で描かれた名画の模倣が散りばめられ、本文は手書きの文字で書かれたこの本は、読んで面白く、見て楽しく、それでいて「モダン」というものの本質を上手に捉えながら、モダニズム絵画について見事に解説しています。これだけの小冊子で、これだけの内容のものを、これだけ面白く語れるというのは、並の才能ではないですよ。今後もし展覧会を見に美術館を訪れるようなことがありましたら、ぜひミュージアムショップを覗いて、この本を手に取ってみて下さい。『近代美術史テキスト』、「教授のおすすめ!」です。

で、この企画展を見終わった後、常設展も見て、そして美術館併設のカフェで簡単に昼食を済ませた後、今日はあっさり帰宅しました。何しろ連日出歩いているので、私も少々疲れてしまいましてね。で、家に帰ってからお昼寝。これで少し、疲れが取れたかな?






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  September 9, 2005 09:37:20 PM
コメント(3) | コメントを書く
[今日もいい日だ] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


マディソン街のひっくり返った階段  
azure77  さん
 ひっくり返った階段のような美術館。デザインはマルセル・ブリュアーでしたかね? 朝、ギャラリーのオープン前に行って、ひとあし早く開いている地下のレストランでブランチをとる。腹ごしらえしてから、じっくり展示室をめぐろうというプラン。----そんな思いでがあります。
 ホッパーの最初のころの都会風景はまったく無視されたんですね。あのホッパー・スタイルは、白黒の銅版画を勉強して色価を対照させて視覚的印象をつよめることを考えついた。そうして確立したらしいです。 (September 9, 2005 10:44:40 PM)

なるほど!  
釈迦楽  さん
azure77さん
なるほど、ホッパーの光は銅版画からヒントを得ているんですか! うーん、そうか。なるほどねぇ。
素人考えですけど、あの光源が特定できないようなホッパーの光は、少しデ・キリコに通じるところがないでしょうか。そういえば、デ・キリコの絵にも私は「無・人間性」を感じるのですけど。 (September 9, 2005 11:28:21 PM)

Re:なるほど!(09/09)  
AZURE0702  さん
釈迦楽さん

> あの光源が特定できないようなホッパーの光は、少しデ・キリコに通じるところがないでしょうか。そういえば、デ・キリコの絵にも私は「無・人間性」を感じるのですけど。

それは卓見かもしれません。というのは、ホッパーは色価で視覚的印象の強調と同時に、風景画を抽象に向わせようとしたフシがあります。すなわち光と影を写生的観察によるのではなく、人工的に操作したのですね。ということは、対象としての風景はかぎりなく幻想的心象風景に近くなっていったとかんがえられます。そこでキリコとの親近性もでてくるのでしょうね。とても大雑把ないいかたですけど。
-----
(September 11, 2005 07:02:13 AM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Comments

釈迦楽@ Re[1]:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) ゆりんいたりあさんへ  いやあ、メッシ…
ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
釈迦楽@ Re[1]:S師範と稽古(06/11) はちみつ先生へ    こちらこそ、有意義…
はちみつ@ Re:S師範と稽古(06/11) 先日の稽古、大変勉強になりました。 あり…
釈迦楽 @ Re[3]:柔術のコツが少し分かってきた気が・・・(04/23) はちみつ先生へ  引っ越し、思っていた…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: