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January 13, 2007
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カテゴリ: 教授の読書日記



この本、1976年から1977年にかけて池田満寿夫が行った芸術家や小説家たちとの対談をまとめたものなんですが、池田満寿夫が『エーゲ海に捧ぐ』で芥川賞をとるのが1977年の夏ですから、その直前の頃の話ですね。彼は芥川賞をとる前に角川書店の主催する「野生時代新人賞」をとっていて、ひょっとすると芥川賞も・・・と思われていたのですから、本業と副業の双方で波に乗っていた頃、と言えるでしょう。ですから、対談においても大御所相手に堂々と渡り合っていて、自分に対する自信が窺えます。

で、本書の中で満寿夫と対談しているのは誰かと言いますと、詩人で慶應大学教授の西脇順三郎、画家の加山又造、作曲家の武満徹、小説家の安岡章太郎、村上龍、吉行淳之介の計6名。まさに錚々たるメンバーですな。

で、相手が相手なので、どの対談も面白いですが、対談というのは、結局、その場の空気ですからね。活字におこしてしまうと、どうしても「とりとめのない話」のようになってしまいますから、それをここでさらに私が解説・紹介したところで、さらに面白くなくなってしまいます。ですから、興味のある方には一読をおすすめします、と言っておくに止めておきましょう。

ただ、一つだけ、加山又造との対談の中でちょっと面白いことが書いてあったので、それを紹介します。この時二人は「洋画と日本画の違い」ということについて話をしていたのですが、最近では日本画家でも油絵具を使う人もいたりして、画材の違いが両者を分けるとは言えなくなってきたのではないか、というような話の流れがあった後、ひょっとして「キャンバスを立てて描くか、寝かせて描くか」というところに大きな違いがあるのではないか、という話になっていったんです。

洋画はキャンバスをイーゼルに乗せて描きますから、絵を立てて描きますよね。一方日本画は紙を机の上に寝かせて描くことが多い。この違いが、洋画と日本画に影響を与えているのではないか、というのですな。

つまり絵を立てて描く洋画では、水平線(地平線)というものが重要になってくる。天と地を分ける線ですな。で、そうやって上と下がはっきり決まってしまうと、今度は必然的に奥行きというものが要求されるので、遠近法で奥行きも決まってしまう。となると、もうその段階で空間が厳密に限定されてしまいます。

ところが紙を机の上に水平に置き、四方から色を置いていく日本画では、空間が持つ「上・下・奥行き」というものが曖昧になり、画家もちょうど神様が天から人界を見下ろすような感じで、ものを描くことになるのではないか。つまり視界が四方に広がるような調子で描いているのではないか、というのです。

ほ、ほう、って感じでしょ?



なるほど、洋画は「光と影」、日本画は「動と静」ですか・・・。

で、だから加山さんなんかから見ると、光と影で物を描く「印象派」なんてのは、非常に古臭く見えるし、逆にセザンヌやピカソは分かるのだそうです。なるほどねぇ~!

私、今まで洋画と日本画の違いなんてことに、さほど深く思いを巡らせたことがありませんでしたが、こう言われてみると、なんかヒントをもらったような感じがしますね。二人の意見に賛同するかどうかは別として、次に洋画・日本画を見る時、注意してみるべき視点を与えられたような気がします。

ま、この対談集には、このような「ちょっとしたヒント」がちょこちょこあります。一読して損はない本だと思いますよ~。もし古書店や図書館などで入手できるようであれば、読んでみて下さい。

ちなみに、この本の巻末には、池田満寿夫が芥川賞をとった時の記者会見でのスピーチ・質疑応答も掲載されているのですが、こういうのを読むと、今からちょうど30年前の芥川賞というのが、いかに権威があったかというのがよく分かりますね。特に池田満寿夫のように、異業種の人が受賞したということが余計反響を呼んだのでしょうけれど、当時中学生に過ぎなかった私ですら、その時の大騒ぎのことをよく覚えていますもんね。

それに比べると、今、誰が芥川賞とったかなんていちいち覚えていないですもん。2年くらい前に二十歳くらいの小娘が二人、受賞したのは覚えていますが、その後、あるいはその前、誰がこの賞をとったか、覚えています?

もう芥川賞とったから、その作家の将来はばっちり保証された、というような時代じゃないんでしょうな。かつて価値や権威のあったものも、今ではすっかり相対化されてしまったし・・・。

というわけで、芥川賞一発でその人の人生が変わってしまうような時代。そんな時代のことを懐かしく思い出しながら、私はこの池田満寿夫の対談集を、大いに楽しんだのでした。





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Last updated  January 13, 2007 04:48:21 PM コメント(2) | コメントを書く


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