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October 18, 2007
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カテゴリ: 思わず納得!



石川好さんっていうのは、1960年代に「移民船」に乗ってアメリカはカリフォルニアに向い、当地で農業に従事した経験を『ストロベリー・ロード』という作品にまとめ、それで知られるようになった物書きですけど、その後どういう経緯だか東北の方の大学の学長さんを勤めたりした後、今は中国に夢中で、日本と中国を頻繁に行き来する生活なのだそうです。

で、そんな石川さんですから、話題の中心は中国のことになるのは当然でしょう。何しろ実際に中国のあちこちに行って見聞している石川さんの中国談ですから、「ほ、ほう」と思うことも多かった。

例えば、我々日本人が見る現代中国というのは、オリンピック景気に沸くバブル真っ只中の国という感じで、事実その通りなんですが、そんな中国には「農民」と呼ばれる人口が3千万もあって、これが彼の国の政府にとって悩みの種だ、というのですな。

というと、そりゃあんなに大きな国だもの、農民が3千万人いたって不思議があるものか、と思いますが、この「農民」というのは、日本で言う「農民」とはわけが違うのだそうで。

つまり、中国で「農民」というのは、4千年前と変わらぬ生活をしている未開の人々のことを指すんですな。日が昇れば起き出して畑仕事でもし、日が暮れれば床に就く。今日が西暦何年かも知らず、自分たちが地球上のどこに住んでいるかも知らず、文明の利器など見たこともない、という人たち。当然、自分たちが「中国人」であるという自覚すらない。そういう、統治しようにもしようがない連中が国土の中に3千万もいたら、これはやっぱり大変なことでしょう。

で、ことは「農民」に限らないのであって、満州の方に行けば人種的には朝鮮民族である「中国人」がいるわけだし、モンゴルの方に行けば人種的にはモンゴル人である「中国人」がいる。チベット方面もまたしかり。そういう連中は、みな括弧付きの中国人なのであって、自分たちが中国人であることの自覚も誇りもさほどない連中だったりする。そういう多種多様な人種・民族からなるあの広大な国土を、曲がりなりにも統治しようという中国政府の苦労たるや、ものすごいものがある、と、石川さんはおっしゃるわけ。

ですから、中国は共産党による一党独裁ですけど、そうじゃなきゃやってられない、というんですな。せめて政府の中だけでも一枚岩じゃなきゃ、あんな茫洋とした国を治められないわけですよ。

で、とにもかくにも中国は、毛沢東の作り上げた「共産中国」という理念によって、何とかこの多種多様な民族群を囲い込み、中国人たる自覚と誇りを無理やりにでも植えつけ、彼らを真正なる中国人に仕立て上げようとやっきになっている。中国が国境問題に非常に神経を尖らすのもここに原因がある、と石川さんは指摘しておられました。「中国ってのはこの国境線の内側全部だ、この中にいる奴は全員中国人だ」と言うのは、多民族の「中国化」を促す際、最も分かりやすい説明になりますからね。



ただ、アメリカが国造りをゼロからスタートすることができたのに対し、中国の場合は一つの国の中に「有史以前の人々」「産業革命をくぐり抜けつつある人々」「バブルを謳歌している人々」といったような様々な歴史段階の只中にいる人々がいる。それをまとめようというのですから、ある意味アメリカよりもはるかにしんどいことをやっているわけですが。

ところで、そんなフィクショナルな国・中国では、最近になってようやく「小説」なるものが生まれつつあるんだそうです。

え、じゃ、今まで中国には「小説」はなかったの? と思ってしまいますが、彼の国では、重要な言説というのは国家を論じ政治を論ずる「大説」であって、男が女に惚れただの、別れただのといったことを描く「小説」なんてものには価値がないと思われていたんですって。ところが、さすがに少なくとも国の一部で「バブル経済」なんかが起こる時代になった今、中国ではこの種の人生の機微を描く文学作品が生まれつつあるのだそうで。

で、その中国の新たな「小説」なるものは、案外、「アメリカ文学」的なものではないか、と石川さんはおっしゃいます。国の成り立ち、国造りのプロセスがこれだけ似ている多民族社会から生まれるものですから、当然そうなるだろうと。

だとしたら、中国の新しい文学を正当に評価できるのは、ひょっとしてアメリカ文学を研究している人たちなのではないか・・・。

ま、これが中国好きの石川さんが、我々アメリカ文学の研究者に対してなされたお話の、落とし処だったんですけどね。私なんぞは根が素直ですから、こういうことを言われると、「ほう、そんなもんかねえ」とすぐ思ってしまいますが、皆さんはいかがですか?

というわけで、石川好さんの講演、私は面白く伺いました。少なくとも中国という国について、少しは啓蒙されましたからね。広島まで行って学会に参加した甲斐があったというものでございますよ。


さてさて、3日間にわたって綴ってきた広島学会ツアーの詳細はこれにて終了。明日からはまた日々のよしなしごとについてのしょーもない考察に戻ります。それでは皆さん、明日からの「教授のお気楽日記」にもご期待くださーい。





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Last updated  October 18, 2007 09:55:32 PM コメント(6) | コメントを書く
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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