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July 6, 2012
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カテゴリ: 教授の読書日記



 で、それを読了したので心覚えを書き付けておきます。


 本書は、明治大学で経済学を講じていらっしゃる安部悦生氏が、訪問教授として1年半ほどケンブリッジ大学に滞在されていた経験をもとに、この大学のありようを書いてみた、という趣旨の本。滞在期間の短さもあり、長い歴史のあるケンブリッジ大学の隅から隅まで紹介するような本ではありませんが、私自身、アメリカの大学に同じような立場で滞在していた経験があることもあって、自分自身の体験からの類推、あるいはそれとの対比をする楽しみもあり、結構、面白く読むことができました。

 で、まず興味深かったのは、ケンブリッジ大学の複雑な構造の話。

 私はイギリスの大学事情についてはまったく疎いので、本書を読んで初めて知ることが多かったのですが、イギリスの場合、たった1校の私立大学を除いて、すべての大学が国立大学だというのですな(1992-3年時点での話)。で、それゆえに大学の学費はすべて無料であると。だから、当然、ケンブリッジ大学も国立大学であると。

 しかし、ケンブリッジ大学には「カレッジ」と呼ばれる組織が30ほどあって、こちらは私立なんですな。だから、ケンブリッジ大学というのは、国立大学と私立大学の複合体と言うことも出来る。

 もう、この段階で、よく分からないですよね?!

 で、学生は、国立のケンブリッジ大学の学生であると同時に、30あるカレッジのどこかに所属することになる。その際、カレッジにも格があって、それこそ古いものになると西暦1284年創立だそうですが、そういう由緒ある奴から、1970年代にできた新しいものまであるので、当然、優秀な学生ほど、創立の古い、由緒とパワーのあるカレッジに所属することになる。

 一方、教授陣の方ですが、これも国立大学としてのケンブリッジに所属するわけですが、同時にカレッジからオファーされればカレッジの方の教授にもなると。しかしこれは必ずしもそうでなければならないということでもなくて、ケンブリッジ大の先生ではあるが、どこのカレッジにも所属していないという先生もいる。逆に、カレッジの方で教鞭は執っているが、ケンブリッジ大学には所属していないという先生もいる。何だそれ?って感じでしょ。



 その他、各カレッジでは、フェローになると一日に一食はカレッジの食堂でタダで食事ができるとか、フェローの長、マスター・フェローになると、かなり広大な屋敷が提供され、定年までそこに住めるとか、色々恩典があるらしい・・・。

 で、大学でのランチとかディナーというのが、これまたかなり儀式ばっていて、日本の大学のように、先生と学生が同じ食堂で雑多に食べるなんて無粋なものではなく、教授陣の食事スペースは、学生の場所よりも50センチばかり高い位置にしつらえられ、厳密に区分されているとのこと。またディナーでは毎回席順が決められ、気軽なランチにおいても、全員一緒に取らなければならないなど、自由気ままなカフェテリア方式ではないようです。

 さらに、カレッジの庭の芝生の上を歩けるのは、フェローのみ、みたいな規則もあって、観光客が勝手に芝生に入ることは禁じられている(無言で)とのこと。良かった~、このことを先に知っておいて!


 さてさて、大学での講義に目を転じると、ケンブリッジ大学の方では、「講義」と言えば日本の大学と同じく一斉授業で、先生が講義し、学生が大人しくそれを聴くというスタイル。アメリカの大学のような演習形式の授業というのは少ないらしい。ただし、日本の私立大学の多くのように、学生数100人とか200人の大講義というのはなくて、せいぜい30人程度なんだそうで。

 その一方、カレッジでの授業は、スーパーバイザーと呼ばれる先生と学生が一対一の対面で指導する形を取り、これが日本の大学での「教養課程」的な感じになるらしい。ちなみに、ケンブリッジではこういう指導をするカレッジの先生をスーパーバイザーと呼ぶのですが、同じ役割を果たす先生をオックスフォード大学ではチュートリアルと呼ぶらしい。その辺は、それぞれの大学の伝統の違いなんだそうで。

 ちなみに、修業年数ですが、イギリスの大学の修業年数は3年。ただし「東洋学」のように、学業に語学の習得が必須の場合は修業年数が4年となり、ある程度の期間、研究対象の国への留学が必要になるとのこと。その辺はイギリスらしく柔軟かつ合理的なんですな。

 で、イギリスでは優秀な大学ほど、授業期間が短いのが常で、ケンブリッジ大学ともなると、年間の授業期間は20週とのこと。日本の国立大学が一概に32週と決められているのと比べると、いかにイギリスの大学の授業期間が短いかが分かりますな。


 本書では、こうした大学のシステムの記述の他に、イギリスに滞在して経験した様々なことも書いてありますが、その辺のことはむしろ林望しの『イギリスはおいしい』的な本を読んだ方が面白いので、私としては、純粋にケンブリッジ大学のシステムについて語っているところを面白く読んだ、という感じです。

 だけど、大学のシステムの中に色々儀式ばったことが組み込まれているというのもそうですが、イギリスの大学、そしてイギリスの大学人ってのは、何だかこう、面倒臭いですな。プライドが高いというのか。

 例えばあるランチだかディナーだかの席で、安部さんが隣に座った先生に「How many years have you been working here?」(何年くらいこの大学で働いていらっしゃるのですか?)と尋ねたら、その相手の人が「I am not working here, I am teaching.」(私はここで働いているんじゃない、教えているんだ)と答えて、ぷいと横を向いてしまったとか。



 イギリス人、感じ悪!

 とまあ、色々ケンブリッジ大学の様子を読んでみて、私としては、アメリカの大学、とりわけ西海岸の大学の方が、気さくでいいなと思ったことでございます。ま、そういうイギリス人気質、ケンブリッジ気質に順応すれば、それはそれで楽しいのかも知れませんけどね。

 ということで、イギリス名門大学の何たるかを、ちょっとだけでも垣間見ることが出来たという点で、本書『ケンブリッジのカレッジ・ライフ』、そこそこ面白かったです。少なくとも105円の価値はあったな。


これこれ!
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Last updated  July 6, 2012 04:55:34 PM
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