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January 3, 2015
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カテゴリ: 教授の旅日記
 今日は一足先に家内が実家に戻るので、それを送りがてら上野・西洋美術館で開催中の「フェルディナント・ホドラー展」を見てきました。

 ホドラーというのは、1853年にスイスに生れ、1918年に没した、クリムトと並ぶ世紀末芸術の巨匠。しかし、スイスに止まって活動をしていたため、日本ではその名をあまり知られていないという。それだけに、これだけの規模の展覧会は是非見ておきたいと、随分前から思っていたんですよね。

 で、初期には普通の風景画などを描いていたホドラーですが、人間列像というのか、数人の人間が列をなして歩いているような絵を描くようになってから、俄然、絵に個性が出始めるんですな。

 この列像は、歩いている数人の人物がそれぞれ異なったポーズをとっており、人間を多面的に描いているとも言え、また時間の経過を表しているとも言え、少なくとも複数の人間が「行進」しているようには必ずしも見えない、という感じなんですな。むしろこの複数の人間の列像によって、ホドラーは「リズム」を描こうとしたと言われているそうで、それはこの時期にスイスの音楽教育家、エミール・ジャック=ダルクローズによって提唱された、音楽と体操の融合を目指す「リトミック」運動と深い関係があるらしい。

 で、こうしたリズミカルな人間列像は、壁画に適しているということもあり、教会とか公共の場所の壁画をホドラーは随分描いております。その意味でも、ホドラーはクリムトに似ていると言えるでしょうか。

 それと同時に、彼は風景画(なにしろスイスは風光明媚なところゆえ)も描くのですが、この頃の彼の風景画は、初期のものとは異なって、すごく特色のあるものとなります。山を描けば、その山肌はまるで人体の複雑な筋肉の盛り上がりのようであり、また空の雲を描けば、その雲は人間列像と同じように、リズムを生み出す列雲となる。誰だったかが、「ホドラー芸術の基本は人物画だ」と喝破したそうですが、まさにそんな感じ。風景画がリズミカルな人物画に見えて来る。

 ちなみに、ホドラーは恋多き人だったのか、なんどか結婚と離婚を繰り返していて、しばしば自分の絵のモデルさんと結婚しているんですな。で、最晩年は、ヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルという若いモデルさんと恋に落ちるのですが、残念なことにこの女性は若くして癌で亡くなるんです。病床の彼女を描いた絵もありましたけれど、すっかり痩せ衰えてしまって。そして彼女が亡くなったとき、ホドラーは、「この美しい頭部、美しい目、美しい鼻、美しい口、すべてが蝕まれてしまう・・・」と嘆いたそうですが、晩年は彼女と自画像しか描かなかったというホドラーにとって、最愛の人を失った悲しみはいかばかりであったかと。

 ホドラーはその生い立ちからして、幼少期に親・兄弟が次々と結核などで死んでしまい、孤児同然で育つのですが、親しい者の死によって人生の最初と最後を縁取られたような、そんな一生だったようでございます。

 というわけで、ホドラー展、予想通りなかなか充実した展覧会でありました。会期はあと1週間ほどしかありませんが、興味のある方は是非。教授のおすすめ!です。


ホドラー展




 だけど、あれですね、コルビジエの設計した建物ってのは、やっぱりどこか頭でっかちなところがあるので、実際そこで人が生活するとなると、結構辛いのではないかと。今回も展示を見ながら、階段でどんどん下に下げられてしまうので、「最後にもう一度、最初に見た絵を見よう」と思っても、「あの階段をまた上がるのかあ・・・」となってしまって、結局、断念、みたいなところがある。

 モダンというのは、人間の感性よりも思考を優先させ、アイディアの下に人間を置くみたいなところがあるので、ある意味、愚かなところがある。それは、建築も絵も音楽も、みんなそう。その愚かなものを「世界遺産に」ってのも、どうなのかなと。まあ逆に、だからこそ、という考え方もありますけどね。





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Last updated  January 3, 2015 06:27:27 PM
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誰も知らないCoffeeWorld@ Re:46年ぶりに、テレビ越しに、同級生と会う(11/04) O教授殿 ご無沙汰ですね。 この業界、世…
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ゆりんいたりあ @ Re:母を喪う(10/21) 季節の変わり目はなんだか亡くなる方が 多…

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