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August 18, 2018
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カテゴリ: 教授の読書日記
マラベル・モーガンという人の書いた『トータル・ウーマン』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 この本、1973年に弱小出版社から出版されるや、すぐに50万部が売れ、1974年にアメリカで一番売れたノンフィクション本となったベストセラーでございます。

 で、1973年とか74年なんつったら、ウーマン・リブ運動の真っ只中と言ってもいい時期。それで『トータル・ウーマン』と来たら、こりゃすごいフェミニズム本だと思うでしょ?

 ところが、さにあらず。フェミニズムとかウーマン・リブとか、その類いの運動の180度対極にある本よ。

 で、この本の内容ですが、冒頭、マラベルさんご自身がご主人となるチャーリーさんからプロポーズされた時の思い出から語り始められます。当然、甘ーい話ですわなあ。

 ところが甘かったのも束の間、世の大抵のご夫婦同然(?)、その甘さはあっという間に消え去り、さらに7年後に生まれた娘が4歳になる頃にはマラベルさんとチャーリーさんの仲は冷えきっていたと。

 しかし、このままじゃ後10年もしないうちに,夫婦互いに憎み合うようになるぞと思ったマラベルさん、夫婦関係の改善に乗り出します。まず結婚関係について専門家の書いた本を何冊も貪り読み、セミナーにも出、さらに信仰深いマラベルさんとしては聖書も研究し、戦略を練ったと。

 で、その戦略を実際にチャーリーさんに適用してみたら、あーら不思議、チャーリーさんのマラベルさんを見る目が劇的に変わり、二人の関係は新婚当初のようにラブラブなものに!

 かくしてマラベルさんはご自身の成功を元に、単なる主婦ではなく、いつまでも夫から愛され、子ども達から信頼される家の光、すなわち「トータル・ウーマン」になるためのセミナーを起ち上げ、さらにはこの本も書いて、悩めるアメリカ中の主婦たちに自分の後に続けと獅子吼しているのでありまーす。



 っていうか、ひょっとしてこの本はベティ・フリーダンの『女らしさの神話』に対する、主婦の側の反論なのかもね。「主婦の何が悪いっていうの!? 聖書にだって女の役目は夫を助けることだって書いてあるじゃない。あんたら、偉そうなこと言ったって、しょせん女の幸せの何たるかも知らない哀れな連中でしょ。そんなに男に伍して働きたかったら働くけばいい。その代わり、夫に愛想つかされて離縁されるのがおち。フリーダンとやらも離婚したんでしょ。フェミニストなんぞ、みんな一人寂しく惨めに死になさい! 完璧な主婦たる私たちは、夫の愛に包まれ、子ども達の笑顔に囲まれた最高の幸せの中で充実した人生を歩むのよ!」っていうね。

 とはいえ、単なる主婦からトータル・ウーマンになるには、それなりの修行が要ります。

 では、マラベル流・完璧な主婦になるにはどうすればいいのか? という話になってくるわけですけれども、結構すごいこと書いてあるよ! 少なくとも私はちょっとビックリ。

 マラベル曰く、まずね、とにもかくにも「家の主は夫である」ということを認めろ、と。あなたが今住んでいる家は夫の城であって、その城の王様はあなたの夫なのだから、すべての舵取りは夫の仕事、妻たるものは、差し出がましい口は挟まず、ひたすら夫の言うなりになれと。

 ひょえ〜〜〜!! 

 すげー! 1973年という時代にそんなこと言っちゃうマラベルすげー!!

 でもね、マラベルさんの観察によれば、世の失敗した結婚の例(っていうか、大抵の結婚はそうなんだけど)を見ると、大抵、この点で女は間違うと。つまり、自分が家を切り盛りしている気になって、夫を自分のいいなりにしようとする妻が多過ぎる。だけど、それをやって結婚生活が成功しているのを見たことがないとマラベルさんは言うわけ。

 逆に、結婚生活が成功しているのは、夫唱婦随を徹底しているカップルの場合だと。だから、結婚生活をうまく回して行きたいなら、夫唱婦随になればいい。マラベルさんの主張はそういうことですな。たとえ、夫がへまばっかりしているように思えても、そこはぐっと我慢して、「あなた、最高よ! あなたの考えに賛成! 私はいつもあなたの味方! あなたの行く方向に私もついて行くわ!」と言うだけで、万事うまく行く。

 と、ここまで話を聞くと、何と言う時代錯誤! 封建社会じゃあるまいし、なんで女が男の後に従わなきゃいけないのよ! と思うでしょ? だけど、マラベルさんのこの先の説明を聞くと、なるほどと思うところもあります。

 つまりね、男と女は違う、とマラベルさんは言うんですな。女が欲しいのは愛。だけど男が欲しいのは愛じゃない。賞賛だと。



 だから、女性の皆さん、もし夫の愛が欲しくば、先ずは夫の空っぽのグラスを満たしなさいとマラベルさんは指摘するわけ。

 えーーー。だって、私の夫に賞賛すべきところなんて一つもないもん。そう思ったあなた。だけど、あなたの隣に居る男性は、かつてあなたが恋し、結婚したいと思った人なわけでしょ? 夫だって、あなたを愛し、あなたと結婚したいと思ったから結婚したのであって。だから、もし今の夫に賞賛すべきところがないように見えても、そこは恋愛時代・新婚時代のことを思い出して、とにかく夫を褒めなさいと。あなたのこういう所,好きよ。あなた、まだまだカッコいいわ。あなたならきっと今回の仕事、うまくやり遂げられるわ、だってあなたいつも立派に仕事をこなしてきたじゃない。私、いつもすごいなあって、感心していたんですもの・・・。こんな言葉を一言掛けてあげれば、あなたの夫は、俄然、あなたのことを見つめ直し、あなたへのプレゼントを手に、いそいそと家に帰ってくるようになりますよ、と。

 マラベルさんのアドバイスをまとめると、もし今の冷えきった夫婦関係を改善したいなら、夫を変えようとしないで、まず自分が変わりなさいと。そしてとにかく先に与える。夫は妻からの賞賛を欲しがっているのだから、その欲しがっているものを与える。そうしたら、夫はあなたにその何倍もの愛を返してくれて、白馬の王子様に変わりますよ、と、まあそういうことですな。

 つまり、マラベルさんのアドバイスの中には、「世界を変えたいなら、まず自分が変われ」「受け取りたいと思ったら、まず与えよ」という、自己啓発思想の二大テーゼがちゃーんと入っているんですな。だから,この本は自己啓発本、それも女性向け自己啓発本と言えるんです。

 だからね、妻は夫に従うべし、という点だけ見ると、なんだか時代錯誤に見えますけど、その内容をしっかり見れば、主導権を握っているのは女だ、ということでもあるんです。こうやれば、自分の思う通りの夫に仕立てられますよ、夫を自分の手のひらの上で転がせますよと言っているようなもんですからね。男は馬鹿なんだから、それを認めて、頭のいい女がうまく操縦すればいいじゃんと。



 で、このあと、トータル・ウーマンはセックス面でも活発! 誘惑されるばかりじゃなく、夫を誘惑しちゃえ! 的なノウハウが書いてあったり、あと、子育ての面で、いい親になるにはどうすればいいか、的なノウハウが書いてあったりもして、その部分もなかなか読ませます。

 で、最後の方になって、マラベルさんの宗教観が語られるセクションが来る。ま、それ以前に書いてあることからして、マラベルさんが保守派であることは分かり切っていますが、結構、マジな感じで神とつながった実感を得た時の事なんかを語ったりしております。本書全般、聖書からの引用も多いですしね。

 とまあ、本書の内容はこんな感じ。

 ちなみに、マラベルさんは「トータル・ウーマン」のセミナーを各地で実施してきたのですが、アメフトの「マイアミ・ドルフィンズ」の本拠地近くで実施した際、ドルフィンズのメンバーの奥さんが結構沢山、セミナーに参加したそうで。それでマラベルさんのセミナー受けて、その奥さんたちがトータル・ウーマン、すなわち完璧な良妻に変身したせいか、次のシーズンでドルフィンズは全勝、スーパー・ボウルでも勝って全米ナンバー1になったとか。いやあ、マラベルさんの影響は、そんなところまで及んでいたのね・・・。

 まあ、なかなか面白い本ではありました。っていうか、家内にも是非読ませたい! 


これこれ!
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 ところでこの本、最初のうち訳がぎこちなくて、なんだか読みにくいんですわ。読み進めて行くと,段々気にならなくなるのですが。

 で、読み始めた当初、「誰だよ、この下手っぴーな訳をしているのは・・・」とか思って訳者の名前を確認してビックリ。津田塾大の板橋好枝先生じゃあーりませんか。ひゃー、お見それしました〜。

 しかし、板橋先生って・・・フェミニスト、なのかと思っていましたが、違ったんでしたっけ? フェミニストがこの本訳すってのも変な話ですが。

 しかもこの本(私が読んだのは講談社文庫版)、巻末に曾野綾子氏と渡部昇一氏による推薦文が付いているんですけど、まずその人選がすごいよね。曾野綾子と渡部昇一。

 特に渡部昇一氏の推薦文はすごいよ。「ウーマン・リブの風潮に断乎として目もくれず、『主婦こそ完全なる女性』と宣言したのがこの本である。女の幸せとは,夫があって子供があり、しかも夫を幸福にし、子どもを幸福にしている女性に見出されるという『古き良き時代』のテーゼをかざしてこの著者は揺ぐことがない。そういう女性が『トータル・ウーマン』というわけである。/結婚している女性も、これからしようとしている女性も、必ず一度は読むべき本である! そしてこの著者と意見を異にする時は『自分は結婚する資格があるのかどうか』と一度考えてみるとよい」なーんて書いてある。

 板橋先生〜! これで良かったのでしょうか? 先生の女性観って「女たるもの、主婦になって幸せになれい!」でしたっけ? 意外〜!





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Last updated  August 18, 2018 03:17:52 PM
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釈迦楽@ Re[1]:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) ゆりんいたりあさんへ  いやあ、メッシ…
ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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