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May 23, 2021
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カテゴリ: 教授の読書日記
ジョージ・ギャラップ・ジュニアが書いた『死後の世界』(原題:Adventures in Immortality, 1982)という本を読みましたので、心覚えをつけておきましょう。

 著者の名前から勘づく通り、これ、ギャラップ社の創設者の跡継ぎが書いたもので、ギャラップ社によるアメリカ人の死生観アンケート調査の結果に基づく考察集ですな。ちなみに邦訳は俳優の丹波哲郎氏。もっとも本当に丹波さんが訳したかどうかは分かりませんけどね・・・。

 で、この本、1980年から翌年9月まで、ほぼ1年半にわたる調査の結果をまとめたものなんですけど、本書によると、ジュニアが「人間、死んだらどうなる?」という素朴な疑問を主題にした調査を計画したのは「数年前から」だそうですから、例のエリザベス・キューブラー・ロスとレイモンド・ムーディが引き起こした1975年の「死後の世界ブーム」に触発されてのものであるのはほぼ明らかでしょう。もっとも「天国は存在すると思いますか?」的な、死生観を主題にした調査というのは大規模なものだけでも1952年、1965年、1980年と定期的に行っているようで、そういう過去の調査との比較がなされているところもある。

 で、さすがギャラップ社と思うのは、なにせ統計調査のプロ中のプロですから、間違ってはいないんでしょうけれども、実際の調査から割り出したパーセンテージをアメリカ総人口に直で掛けて数字を出しちゃうところ。だから、「今回の調査で出た割合からすると、全米では2300万人(15%)が死にかけた経験を持ち、そのうちの800万人が特異な臨死体験を経験している」とか、言い切ってしまうわけね。それでいいんか? と思うけれども、多分、いいんでしょう。知らんけど。

 で、この調子で数字を挙げていくと、例えば幽体離脱の経験者は、生死をさまよう経験をしたうちの9%だから、200万人。この上なく平和な気分を味わった人は11%だから250万人。明るい光を見た人は5%だから40万人。自分の人生を走馬灯のように一瞬に見た人は12%だから300万人。なにか生命体に出会った人は8%だから60万人。トンネルをくぐった人は3%だから20万人・・・とか、そんな感じで数字が出てしまう。

 で、こういう数字を見ていて思うのは、先のムーディやロスの調査(あるいは立花隆の本)の印象では、臨死体験をした人の大半が暖かい光に包まれたり、トンネルをくぐったり、幽体離脱をするのかと思ってしまいがちなんですけど、ギャラップ社の調査からすると、必ずしもそうでもないなと。そういう体験をするのは、臨死体験をした人の中でも、割と少数派なんだなということが分かります。その辺は、ちょっと注意しておかないといかんのでしょうね。132‐133頁の記述によると、臨死体験者のうち、天国を見た、多分見たと言う人を合せてもたった29%、すなわち3人に1人しか、幸福な体験をしてないわけだから。

 ちなみに幽体離脱をしたと答えた399人のうち、90%は、死にかけた時ではなく、別な時に体験したと答えたとのこと(231頁)。

 あと、「天国の存在を信じるか」という問いに対してイエスと答えるアメリカ人の割合は、1952年、1965年、今回(1980年)の調査でほとんど変わらず、大体、70%だと。ただ男女で若干の差があって、女性の方が75%、男性が66%となっている。女性の方が、若干、信心深いわけですな。

 あと地域差もあって、東部では61%、極西部では58%なのに対し、中西部で76%、南部で86%、深南部で89%という結果になっている。まあ、こう言ってはアレですけど、文化的に進んだ地域で低く、文化的に遅れている地域で高いということにはなるわけ。同じことは学歴にも当てはまるので、中卒の人は77%、大卒で60%となっている。逆に年令にはあまり差が出ず、若い人に低く、年寄りに高いという傾向は、さほど見られないとのこと。



 後、面白いのは、各国間の比較で、1968年の調査で、地獄の存在を信じるアメリカ人が65%いたのに対し、ギリシャが62%、西ドイツ25%、イギリス23%、フランス22%・・・だったとのこと。つまり、アメリカとギリシャがダントツで高く、その他のヨーロッパ先進国では低いと。

 こういう点にかけてのアメリカとギリシャの共通性というのは面白くて、例えば「悪魔の存在を信じますか」というアンケートをやると、アメリカ人の場合、信じるが60%、信じないが35%、分からないが5%になる。で、ギリシャも大体同じで、信じるが67%、信じないが21%。分からないが12%。まあ両国とも信じる人が結構いる。ところが西ドイツの場合、「信じる」は25%、イギリスは21%、フランスは17%となって、アメリカ・ギリシャと比べて断然低い。

 何だろう、このアメリカとギリシャの共通性って。他の面で、両国がそれほど似ているとは思いませんけどね・・・。

 さて、話題変わって臨死体験をした後の話ですけど、これは大半の人が、それを経験したことによって死への恐怖が薄らぐとか、他人に対して優しくなったとか、そういうことを答えているんですな。怖いのは、死そのものではなく、死への過程であるということが分かったと。また死ぬことの意味が分かったために、逆に、今生きていることを大切にしようという風に考える人が多いわけ。だから、臨死体験ってのは、決して悪いものではないんでしょうな。

 ・・・とまあ、そんなことがあれこれ書いてあるんですけど、数字的な説得力はあるとしても、これを読んだからといって死後の世界のことが分かるというわけでもなし、期待したほどのアレではなかったかも。

 つまり、何でもそうですけど、同じ経験から何を引き出すかは、人によって異なるのであって、キューブラー・ロスのように、臨死体験の実例から哲学的なことを引き出しちゃう人の話を聞くと、はは~!ってなるけれども、ギャラップ調査のように淡々と数字だけ出されると、「案外、大したことないな」という印象になってしまう。そういう意味で、キューブラー・ロスの話だけ聴いて、すぐに「臨死体験=あの世の実在/魂の不滅の証明じゃ~!」などと騒いではいけない、ということでしょうな。

 っつーわけで、この本、キューブラー・ロスの本のように面白くはないけれど、面白過ぎる臨死体験本への戒めという意味で、一読の価値あり、という感じです。ま、もともとそういう方面に興味のある人にしか、アピールしない本ではありますけどね・・・。


これこれ!
 ↓

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Last updated  May 23, 2021 03:33:55 PM
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