教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
June 28, 2023
XML
カテゴリ: 教授の読書日記
島田雅彦さんの新刊『時々、慈父になる。』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 普段、この種の本を読まないワタクシがなぜこれを読んだかと言いますと、たまたま今、某アメリカ作家の子育てエッセイみたいなのの書評を頼まれているのですが、それを読んでいる間に、これまたたまたま、日本の作家の島田雅彦さんのこの本が出たことを知り、同じく作家の子育てエッセイなのだとしたら、比較になるかなと。

これこれ!
 ↓

時々、慈父になる。 [ 島田 雅彦 ]


 で、読んでみたのですが、うーん、この本は「子育てエッセイ/子育て私小説」というほど、そこまで子供のことが書いてあるわけではなく、島田さんの30歳から60歳あたりまでの30年間の来し方を綴ったものであって、その中に時々、息子さんである「ミロク」さんのことが出てくる、という感じですな。ま、もちろん、子供を持つということは人生の一大事であって、ミロクさんの存在が島田さんの人生観になにがしかの影響を与えていることは間違いないのではありますが。

 で、ふんふんと読み始めたのですが、第2章に入って、ミロク君に幼稚園のお受験をさせることになった、というくだりがあり、そこで玉川学園にするか、桐蔭学園にするかで迷う、という話が出てくる。

 ここは面白かった! というのは、私はその両方に在籍していたから。どちらに転んでも、ミロク君はワタクシの後輩ということになるのよ。



 とはいえ、少し長じてからミロク君が日本の学校制度には合いそうもないなと判断した島田さんは、彼をアメリカの音楽系の大学に送ることにする。学費、大変だったみたいですけどね。でも、ミロク君はアメリカの大学でのびのびと育ち、自分の好きな道に行く基礎を築いたようですから、子育てとしては成功したことになる。めでたし、めでたし、でございます。

 とまあ、そんな感じで、本書には島田さんとミロク君の関係が色々と書かれているのですが、私が書評を頼まれているアメリカ作家の子育てエッセイと比べると、島田さんのミロク君に対する執着の度合いはよほど低い。いや、そうではなくて、島田さんが普通で、アメリカ作家の方が異様なんですけどね。

 アメリカ作家の場合、56歳くらいで思いがけず父親になった、というのがあって、それで子供が成人を過ぎて、独り立ちするまで生きていられるだろうか、という不安もあり、自分がこの世から消え去った後でも、子供が自分のことを覚えていてくれることを願うあまり、異様なまでの執着が生じているわけよ。だから、同じく作家の子育て私小説と言っても、性質が大分異なる。

 その意味では、あまり比較対象にはならないので、わざわざ島田さんの本を読むことはなかったかな。

 でも、そういう仕事上の都合とは別に、島田雅彦という作家のここ30年くらいの活動については、この本を読んでしっかり把握しましたので、その点では読んで良かった。特に、芥川賞選考委員になった件とか、付き合いのある他の作家との交流とか、島田さんが嫌いな作家のこととか、色々、面白いことが書いてありますしね。

 読んだからといって大感動の巨編ではないですけど、職業作家の暮らしぶりが分かるという意味で、面白くなくはないこの本、興味のある方は是非。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  June 28, 2023 10:43:45 PM
コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Favorite Blog

朝食を摂りながら六句 New! AZURE702さん

季節の変わり目に ゆりんいたりあさん

YAMAKOのアサ… YAMAKO(NAOKO)さん
まるとるっちのマル… まるとるっちさん
Professor Rokku の… Rokkuさん

Comments

ハッパフミフミ@ Re:「断トツ」は何の略?(11/24) 関係ないですが、オッパイをパイオツと言…
誰も知らないCoffeeWorld@ Re:46年ぶりに、テレビ越しに、同級生と会う(11/04) O教授殿 ご無沙汰ですね。 この業界、世…
nwo69 @ Re:野崎訳 vs 村上訳 さて軍配はどちらに?!(12/30) 非常に激しく同意、しかも美味しい翻訳を…
釈迦楽@ Re[1]:母を喪う(10/21) ゆりさんへ  ありがとうございます。今…
ゆりんいたりあ @ Re:母を喪う(10/21) 季節の変わり目はなんだか亡くなる方が 多…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: