座乱読無駄話日記2

2019.07.01
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カテゴリ: 歴史・本など・・
「ゆれるおっぱい、ふくらむおっぱいー乳房の図像と記憶」(武田雅哉・編・岩波書店)
なんとも、刺激的なタイトルですが、内容は、女性の乳房に対する、絵画や写真などを通じて、多くの研究者が、歴史的、民俗学的、風俗学的、文学史的に考察する本です。

 サブタイトルの方が、いわば、お堅いほうの「題名」です。
 内容は、三部構成で、 日本、中国、西洋 での、それぞれ、絵画や彫刻、図俗に表れた、女性の身体(当然、裸体、半裸体です。あ・・スケスケというのもありますが、何らかの形で、乳房が表現されている画像です)表現を考察しています。
 男性側の視線を意識しているのか、・・それとも、女性側からの視点か、・・というものでも、なかなか面白い。
日本篇 は、絵巻物から、浮世絵と、女性の裸体、半裸体を描くものが多いし、見慣れた画像なので、さほど意外にも思いませんが、本来、西洋文化が入ってくるまでは、日本人は乳房の大きな女性を好まなかった・・とか、乳房を性的な対象とみていなかった・・とかいう説が、主流だったらしく(そうなの?)、「そうじゃないんだよ・・昔から、日本の男たちは、おっぱいが大好きなんだよ・・」というのは、良く分かる気がします。

 この本にも取り上げられている、 平治物語絵巻 の、井戸に投げ込まれている女性たちが皆衣服が乱れている(たぶん、犯されて殺された)表現にしたって、あらわわな胸の描写は、明らかに性的な意味を持たせていると思いますし、古くは 伴大納言絵巻 なんかでも、別にこんなもの描かなくていいよな・・ってところにも、女性の乳房を描く表現があるので、まあ、「好き」だったんでしょう。
  ちなみに、女性画家集団が描いたのではないかとも言われている「 源氏物語絵巻 」でも、雲居の雁は巨乳を強調されているみたいですね。まあ、これは赤ん坊を生んだばかりの女性を、表現している、というところもあるでしょうけれど。

中国編 に至っては、たしかに古い中国・・つまり、唐代くらいの豊満な女性像は、胸を強調するような衣服を着ているし、しなやかな体の線も出ていますが、だんだん、衣服に隠れて、美人の価値が、顔ばかりがメインになると、春画でも、裸なのにどちらが男か女かわからないのを見たことがある。日本の浮世絵でも、着物を着ていればどちらが男かわからないのがある。見分け方は、日本の場合は、髷の形で、中国の場合は、足。纏足の靴を履いている方が女性。
 これが、中国ポルノのすごいところですよね。かの金瓶梅でも、やたらに足の話が出てくる。纏足をしている足・・・それも小さければ小さいほどよい・・そして、その足そのものが、性的な対象になるんですよね。テーブルの下で女性の足をつつくのは、いわば、「胸を触る」くらい意味深な行動なわけです。
 中国の女性については、乳房はきつく縛って凹凸を隠すものであったのが、西洋文明が入って、纏足を解放され、胸を突き出して誇るような衣服が導入されると、女性たちも、意識が変わるようになり、いわば、女性解放は、足と、胸の解放だったのかも。
 そして、それは男たちも喜ぶようになって、そういう絵画も大量生産される・・・う~ん・・・単純なんだか、どうなんだか・・。
 それと、日本の歌舞伎と同じように、男性ばかりで演じられた京劇などの伝統的な芝居が、洋装をしたりすれば、いくら美しい「旦」でも、男の身体の線が誤魔化せず、現代劇ではなく、神話や妖怪などが登場する「古装劇」を発明した・・というのは面白かった。現代は、ファンテジー系の古装、大流行じゃないですか。

西洋編 は、まあ、いまさら、ですけど、ギリシャ、ローマの裸彫刻が大量にあった国だし、女性の上半身など、意識していないのではないかというくらい、自然に見えますが、まあ、そこは一筋縄ではない。禁欲的な教会藝術から、絵画に描かれる女性はみな平板で、男女の差もあまりわからない。中世の絵画で、女性と同衾している絵でも、鎖帷子をつけている(!!! そのままベッドにはいる? どういう場面なんでしょう! 女性は怒りません?)のが男だとわかるような描き方です。
 女性の乳房を表現して、自然に見えるのは、やはり「授乳」だということで、幼いキリストに授乳するマリアの絵が盛んに描かれるのも、ある意味、「乳房観賞」の口実だと思います。
 肉感的な女性の絵が描かれるのはルネサンスを待たねばなりませんが、ミケランジェロでも、女性の裸体を描くのに、モデルは男だったとかいうので、胸はとってつけたようにデカいが、ものすごくマッチョな女性ですよね。
 それ以降、西洋絵画はとどまるところを知らずに、女性の裸体(男性もですが)を描きます。だから、なんとはなしに、全部脱いでしまったら、あまり、深くは考えなくなったような気がする。ルーベンスの女性って・・乳房が大きいか小さいかなんて考えないでしょう? 身体全体で、お肉ですから。ま、これは、あくまで私の感覚ですが。
 そのほかにも、面白い視点で、「男性の乳首」を描くか描かないか・・・。

 マンガなどでも、あまり描かないんだそう・・・。う~ん・・そういえば、あの北斗の拳でも、筋肉はすごかったが、乳首なんてあったっけ? 
 なんで、そんな話が出てきたかというと、中国の連環画で、水滸伝の李逵が、やたら裸になって暴れまくる。その絵が、隆々たる上半身には胸毛と乳首がちゃんとかいてあるんだそう。胸毛は描く人はいるだろうけどね・・。 まあ男性の胸は、筋肉以外にあまり誰も興味がないってことか・・?
  でも、女性の胸がふくらむというなら、西洋では、男性については、古来、股間が意識されていると思う。これこそ、直接的に性的である訳だし、古代においてはローマのプリアポスが代表だろうし、あからさまに詰め物をして大きく見せたいというコッドピースなんかに比べると、女性の寄せて上げて、なんて可愛いもんじゃないですか。
 日本だって石棒が出てるし、道祖神や天狗の鼻は、民俗的にはそうでしょう?
 でも、まあ、これについては古代から、裸体彫刻でも、その部分は「記号」であって、大きな大人なのに、子供の道具を付けるという不文律があって、それでずっとやってきているんですから、まあ、つつましい・・というか、恥ずかしいんでしょうね。その「記号」ですらけしからんと、すべての彫刻に無花果の葉っぱをくっつけた教皇がいましたけれど。無花果の葉っぱって、よけい、そこに目が行きません?

 男性の話はおいといて、古今東西の「乳房」の話は、なかなかと面白かったんですけど、執筆陣は、女性研究者も多いのですが、自らが、いわゆる巨乳か、スレンダーか・・・・なんてことをわざわざ書かなくてもいいと思う。しかし、「乳房研究」に入ったきっかけが自分のものだったりしたら、まあ、それは、いわば研究史のひとつではではあるんでしょうけれど・・・・。
 家の近所に、土器がたくさん落ちていて、それを拾っているうちに、考古学者になったとか、裏に古墳があって・・・なんて話は、よく聞くので、まあ、思春期の衝撃(?)が、学問的分野に繋がるのはあるかも・・・・・・ですが。

ゆれるおっぱい、ふくらむおっぱい 乳房の図像と記憶 [ 武田雅哉 ]

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 ​ 座乱読ー別荘ー ​       マンガ置き場。 現在「足利家の執事」連載中







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最終更新日  2021.04.17 12:14:17
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