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夏風7537

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見たまま、感じたま… Dr.悠々さん
日々徒然に ジョーさん
ツブコの茶店 ミドリツブコさん
2004.04.24
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カテゴリ: カテゴリ未分類
いささか私のここの枠からははみ出す話題ではありますが、高校の時分必須部活動が地学部で、天気図を書いたり、岩石プレパラート作りをしていました。
ある程度スライスしてある岩石をば、カーボンで削り、磨き、うすーくして、顕微鏡で見る事が出来るようにする訳です。が、この作業はとてつもなく気長い仕事で、何よりも、最後に松脂でスライドグラスに定着させるのが本当に難しかったのです。
松脂を熱して緩くしておいて、グラスに塗りつけ、その上から、標本をぴらっと乗せて圧着させるのですが、どうしても気泡が入ってしまいます。そうすると、また、カーボンで松脂を落とし、磨き、再挑戦!となる訳です。
必須の部活と言うのは、授業の一環としての「部活」ですので、週に一回一時間でした。それで一度失敗すると、二週間程カーボンと戯れる事になり、また、かなり薄い状態で更に削ろうとし、且つ、松脂もまんべんなく表面に付着している訳ではないので、とても辛い作業でした。

また、担当の先生が大変個性的な方で、ボキャブラリー豊かに罵倒して下さるので、なんとかして松脂チャレンジの回数を増やそうと、休み時間に地学室に通っては、カーボンで研磨していました。
とにかく、この一番恐ろしい部分を早く終わらせ、新しい石に取り掛かりたい一心です。新しい石は良さそうな部分までは豪快に削って構わないので、気分も楽ですし、それはとりもなおさず、先生から罵詈雑言を浴びせられなくていいからでしたが、そうしてせっせと「終わらせたい」気分一杯で研磨していると、来る筈のない時間にも関わらず、何故かその先生がやって来て、
「おう、お前らまた磨いとるのか?! お前らそんなに標本作り好きか!? じゃ、今度はこれ磨くか?! やー、ワシは好かんなそういうこまこました仕事は! よくやるなあ!」
がっはっはー!
と、呵呵大笑しながら、黒衣となっている白衣を翻し、標本をわしづかみにして去っていかれるのでした。


この先生は、不思議な頭部の持ち主で、脳が入っているとおぼしき辺りが実に大ぶりで、特に後頭部が張り出していました。前頭部から頭頂部には毛髪がなく、側頭部から後頭部にかけてふさふさとした白髪がぐるりと取り巻いている、という具合で、出来損なったカルデラ湖の様な風情。
声はどこかの高い山に住んでいる怪鳥の様、真冬でも素足に破れたサンダルをつっかけていて、あわや「妖怪?!」と見まごうばかりです。
黒衣となった白衣をなびかせ、ばだんばだんとサンダルをならして廊下のかなたから、
「おい! ○○! お前地学室に行くならこれ持って行ってくれ!」
と呼ばわれると、耳がびりびりします。
もう、随分時間が経っているのに、今日、目の前に鮮やかに蘇りました。今、脳裏に記憶の奥底から登場するその姿、それは頭部を異様に大きくしたプテラノドン! 雰囲気といい、歩き方といい、そっくりです。(どうして今まで気がつかなかったんだろう)
怪鳥プテラノドンはカーボンの細かい使い分けについては教えて下さいませんでしたが、「反骨」の精神はばっちり教わりました。まあ、一説には「ひねくれ」とか「アマノジャック」等とも言いますが。

嫌だなあ、先生。今日はミネラル趣味について書こうと思っていたのに、先生の事思い出しちゃいましたよ。
お元気でいらっしゃるのでしょうか。
先生、お蔭様でいまだにラジオを聴いての天気予想が出来ます。宮澤賢治の気持ちも変わった方向から見る事が出来ますよ。
なんだかひょんな事から発生したと思っていたミネラル趣味も、ちゃんと素地があったんですね。






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Last updated  2004.04.25 16:35:50
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