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夏風7537

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見たまま、感じたま… Dr.悠々さん
日々徒然に ジョーさん
ツブコの茶店 ミドリツブコさん
2004.07.26
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カテゴリ: カテゴリ未分類
久しぶりに夕立らしい夕立が来て、雨に濡れた花を見ようと外に出た。


写真でも撮ろうかと近寄ると、なつしらすの葉の上で5センチ位の細いかまきりが、羽の生えた緑の虫を両の鎌で持って食べているのを見つけた。

バッタだろうか。そうでもあるし、違う様でもあった。頭の部分は既に食べられていて、これだという特徴がつかめない。
かまきりは音もなく口を動かしているが、しずしずと確実に咀嚼していて、もし、聞こえる耳があったらばりばりと音がするに違いないと思えた。

雨が止んだから蝉が再び鳴き出している。
遠くでまだ雷が光っていた。

雨粒がいっぱい葉や花の上に落ちていて、小さい百日紅は雨を含んでしなっていた。
美しい日暮れに、かまきりが咀嚼する音が聞こえるのではないかと耳を澄ませていた。


でも、かまきりの口元は、何か音がしないといけないと感じる程正確なものだった。
懸命に食べている。

私はそっとかがんでみた。
まだ細く華奢な鎌の影に隠れて、小さい蝿の様なものが一緒に食事をしているのが見えた。
かまきりが夢中で食べているのに便乗し、相伴しているらしい。
緑の羽虫は二匹が食べても食べてもなくなっていかなかった。
多分、このかまきりにとっては大きすぎる獲物だったのだろう。
それでもひたすらに彼らは食事を続けていた。

私は静かに立ち上がって、そこからゆっくり離れて来た。
色々な感情が渦巻いていたけれど、それはどれも人間の勝手な考え方にしか過ぎなくて、言ってはいけない気がしたし、彼らを侵害してはならないと思えて、私はただ黙って、営みの前から退出するしか術を知らなかった。

蝉が鳴き続けていた。





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Last updated  2004.07.27 13:48:18
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