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報道によりますと日本海で、巨大なクラゲ「エチゼンクラゲ」が大量発生し、漁業関係者を悩ませているとか。写真を見ましたが、大振りのクッションぐらいの傘のクラゲが漁船の網の中にごろごろしています。これが何ともしれん気味悪い茶色で。 大きくなると傘の直径は2メートル超とか。片っ端から中華料理の前菜にしても追いつかないでしょうなぁ。*********************さて、クラゲと言えばシャーロッキアン的には《獅子のたてがみ》です。《ライオンのたてがみ》では私の耳にはダイイング・メッセージっぽく聞こえません。《獅子の鬣》、では書き込みすぎですが。 原題は The Lion’s Mane。この話は単行本の 《事件簿》に収録されています。《事件簿》の作品はどれもそうですが、この作品も1926年に雑誌発表されています。ヴィクトリアンは遠くなりにけり。どころではありません、第一次世界大戦だってもうとっくに終わっているわけで、もはや古き良き時代の懐旧談でしかありません。 ワトソン博士はどんなこと考えながらペンを取っていたのでしょうかねぇ。さてと。お話しとしては、「……ししのたてがみ」言い残して青年は息絶えた。犯行現場の砂浜は完全な密室。青年の背中に刻まれた無惨な瘢痕の謎。そして第二の被害者が。姿なき犯人を追う、ホームズ引退後の難事件!ってところでしょうか。 ホームズ探偵いや、元探偵は引退してもなお明晰、といいたいところですが重大な見落としをしています。この見落としはいろいろな研究書で触れられていますのでここでは紹介しませんが、ヲイヲイ、ドウシチマッタンダネという気分。 やっぱりワトスン博士がいないと調子が出ないようですね。こっから先にはネタばらしがありますので未読の方はご注意下さい。 トリックとしては「意外な犯人」というカテゴリではないかと思います。サブカテゴリは《銀星号》同様に「動物が犯人」でしょうか。 この《獅子のたてがみ》の犯人サイアネア水母はマンガとかビジュアルメディアでは《バスカビル家の犬》と双璧をなす化け物、それも大怪獣として描かれることがあります。[2003-6-26]の日記でご紹介したユニコン出版のホームズ漫画に収録されている〈悪魔の足あと〉なんてその代表みたいな代物です。なにしろ傘の部分の直径が三メートルもありそうな大くらげ。まるっきり宇宙生物です。あんなのが水中にいたら、わかりますってば。 もっとも、その大くらげに米俵ほどもあろうかという大岩を目よりも高く差し上げて叩きつけるホームズ探偵もスゴいですがね。嗚呼、グラナダ版で見てみたかったぜ。水中からマクファースン青年やホームズ探偵を凝視?するクラゲ目線の実相寺ばりのカットがあったに違いありません。********************* ちなみに中華料理のクラゲは問題のエチゼンクラゲとかビゼンクラゲだそうで。 それらクラゲを食材にするにはこんなステップを踏むそうです(新潟県水産海洋研究所のHPのものを引用しています)。■加工法1.クラゲの体の97%は水分なのでまず脱水。(<一番多いのは天日干しだそうです。) 2.冷水に8~10時間浸して外側の粘液を取り除く。(気の短い人は洗濯機を用いるそうです。ヤワヤワ洗うモードで) 3.さらに水洗い(<手で、だそうです)し、すのこに載せて水切りをする。 4.ミョウバン5%を混ぜた食塩(食塩2㎏に対してミョウバン100g)をすり込んで樽につけ込む。 5.2~3日脱水させると半透明の黄白色になる。 6.3~5を3回繰り返す(!)とできあがり。2回目はミョウバンの量は始めの20%減、3回目はさらに2回目の20%減とする。 全工程でだいたい12日とか2週間くらいでしょうか 。こんなに手数が掛かるのでは、儲かりませんね。
2003年10月28日
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社内教育の講師を務めるために大阪へ日帰出張です。 往路はテキストのチェックで聖典どころではありませんが、連れがいないので気楽なものです。 私、大阪の街は好きですよ。 食べ物はウマクて安い。女の子はハデだけど気だてがいい。古本屋も繁華街の中に驚くような品揃えのお店が何軒もある。私の標準語が敵視されることさえなければ、とてもいいところです。が。 しかし今回は時期が悪すぎました。 タイガース、タイガース、タイガース、タイガース、タイガース、タイガース、タイガース。 大阪はタイガース一色です。 いや、黄色と黒だから二色か。 私はタイガースが好きとか嫌いとかじゃなくて、野球そのものに無関心なのです。 そもそも熱狂する野球フアンが苦手です。 私がシャーロック・ホームズを強要しないのだから、あなた方も阪神タイガースを私に強制しないで下さい(泣)。おお、いけない。落ち着け、落ち着け。気を落ち着けるために、梅田の地下街へ。お目当ては英国パブ シャーロック・ホームズです。日本には「シャーロック・ホームズ」というおみせも何件かあります。ここは名実ともにその名にふさわしい数少ない店の一軒です。〒530-0001大阪府大阪市北区梅田1-3-1大阪駅前第1ビルB1 (06)6344-4869 11:30~23:00 地下鉄四つ橋線西梅田駅 JR東西線北新地駅すぐ 各線梅田駅5分 内装も実に品がいいし、ギネスの泡の具合も大変に結構です。 このお店は大阪辺りのダーツ好きの集まるところだそうで、シャーロッキアンはいなくともダーツを楽しむ善男善女(いえ、ダーツをする女性にはまだ出くわしたことはありませんでした)がたくさん居ます。 遅くなるとやたらにダーツに誘われるので、そうなる前にのぞみで退散。
2003年10月23日
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芸術の秋です。 タダ券を新聞屋が何枚か呉れたので、《大英博物館の至宝展》へ人混み覚悟で出掛けてきました。****************************************** この展覧会は怪盗が狙いそうなダイヤモンドや宝冠が出ているわけではありません。いわゆる人類の宝というやつです。 さて、本日のお目当ては。 大英博物館には附属の図書館があるのですが、そこを利用するための利用者カードもあるわけで。はい、コナン・ドイル氏の利用者カード!です。 これがお目当てのひとつ。ハガキよりちっと縦長のカードでした。よく取っておいてありましたね。あ、博物館は何でも取っておくところでした。ほかにカール・マルクスのカードもありました。 ふたつめは、と。 アガサ・クリスティーの再婚相手のマロワンさんは考古学者ということで知られています。この方は発掘した品物が大英博物館に収蔵されているほどの大した学者なのだそうです。そのマロワンさんが発掘したアラバスターの目玉の意匠のアクセサリー。真っ白で綺麗な物でした。 発掘現場のアガサ・クリスティーの写真も飾ってあったのはご愛敬。 この二つだけ、キチンと見て、あとは空いている展示(サセックス・ループの腕輪なんてのもありましたっけ)だけさっと見て退出。 シャーロッキアン的に極めて純粋な観覧でした。タダ券でないとこんなことはできません。****************************************** やっぱり、わたしは人混みがキライです。
2003年10月19日
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昨夜は映画を観た後に、友人たちと天王洲のアイリッシュパブで映画を肴に騒いで、それからカラオケ。深更に帰宅。 本当に久しぶりです。健康っていいですね。********************************* それで今日は大寝坊。ヘロヘロです。ぼんやりした頭を振りながら古本屋へ。買いましたものは、まずは《ホームズ氏は魚座の男》。(株)日本メールオーダーのサスペンス・ロマンスのシリーズの10冊目です。もちろん聖典ではなく、背表紙本です。中身はハーレクイン系のショウもない本ですが、これはタイトルだけで買い、です。ちなみに定価は500円。古本値段は150円。 昭和60年2月5日発行。原題はLike A Lover。どっから《ホームズ氏は魚座の男》なんて邦題が出てきたのでしょうね。 主人公の相手役の私立探偵キルロイは魚座ということになっています。しかし作中ではパルプマガジンの超人警察官ディック・トレイシーになぞらえられることはありますが、斜めに読んだ限りでは、ホームズのホの字もありません。まあ探偵=ホームズという安直な考えが編集者にあったのでしょう。 それがために私の本棚の背表紙本が増えるというわけですが。評価 星なし。1月6日誕生説をとるならば、ホームズ探偵はやぎ座ということになります。*********************************他に買いましたものは山田章博の長編漫画《ラストコンチネント》。地球空洞説をベースにした「昭和浪漫空想科学大冒険活劇」だそうです。この漫画、オープニングが 伝説とはたとえ 長い歳月の間に 歪められる事が あろうとも その根底には 常に真実がある ものだというサー・アーサーの言葉(チャレンジャー教授ものだったか、《マラコット深海》だったか思い出せないのですが)で始まっているのが、またいいところです。
2003年10月12日
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□本日の映画:《リーグ・オブ・レジェンド》 この映画を真にエンジョイできるのは、シャーロッキアンだけ、です。と、のっけから断定してしまいます。********************************** 友人たちと品川の映画館へ。本日から公開の映画《リーグ・オブ・レジェンド/時空を越えた戦い》を観てきました。原題はThe League of Extraordinary Gentlemen。超絶紳士同盟とでもいうのでしょうか。でも「伝説の同盟」よりはマシかもしれません。いわんや「時空を超えた」なんていうちゃちな惹句なんか。 この映画に心がそそられるのはまず登場人物たち。《ソロモン王の洞窟》のアラン・クォーターメイン《海底二万浬》のネモ船長半分吸血鬼のミナ・ハーカー透明人間ジキル博士&ハイド氏不老不死の《ドリアン・グレイの肖像》のドリアン・グレイかつての少年今青年諜報員のトム・ソーヤー、 かつての世界少年少女文学大全集の主人公たちがずらりと並んでします。これだけでももうわくわく。メンバーにホームズ探偵がいないのが不思議なくらいです。1899年という時代背景をアメリカンコミックス調で面白く直してあって、まあ、うるさいことを言わなければ楽しめます。評価:シャーロッキアンとしては★★★ですが、映画として考えると★位でしょう。 私は19世紀全般に興味を持つシャーロッキアンですから時代背景やキャラクターそれぞれの本編を読んでいますから十分にエンジョイすることができましたが、予備知識なしでこの映画をエンジョイできるかどうか。 キャラクターの顔ぶれのせいでしょうか。どうにも銃撃戦やら殴り合いやらが目立つ映画で、インテリジェンスに欠けています。私は野蛮は好みません。 でも、そんな中でもネモ船長の殺陣はカッコよかった!剣と一体になった蹴り、拳打の流れるような動きそれより何よりかっこいいのはノーチラス号! ディズニー版を「銛」とするならこの映画のは「ボウイ・ナイフ」。やー、敵艦をそ衝角戦で切り裂くシーンを見てみたかった! この美しさは映画で観ていただきたい。 もちろん、この映画には、ちゃんとホームズネタがありました。 アラン・クォーターメインが船室でストランドマガジンを読んでいたのには笑わしてもらいましたが、もっとスゴイ奴が。 それがために私は断言します。 この映画を真にエンジョイできるのは、シャーロッキアンだけ、です。 配給は20世紀フォックス。例の20世紀フォックスのモニュメントがどんな風にロンドンの市外にはめ込まれるかもお楽しみ。********************************** それにしてもこんな予習というか基礎教養の要求される映画が興行的に何とかなるのだろうかと思います。多分かなり短期間で上映打ち切りになるんじゃないかと。
2003年10月11日
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1890年の今日。ジェイベズ・ウィルソン氏がフリート街の職場に出社してみるとオフィスは閉鎖されていました。閉じられた扉には一枚のメモが。「一八九〇年十月九日 赤毛連盟ハ解散セリ」 ということで今日は本棚を片付けながら《赤毛連盟》をあれやこれやと拾い読んでいます。****************************** 本棚には何種類か全集が入っていますし、端本もありますのでレッド・ヘッデッド・リーグも何冊かあります。それぞれに面白いのですが、ショックの大きそうなのは、と。 コミック・名探偵ホームズ全集第3巻《まだらの紐》収録の〈赤毛クラブ〉でしょうか。 この巻にはほかに表題作〈まだらの紐〉、〈ボヘミア王の恋人〉が収録されています。この〈ボヘミア王の恋人〉というのは好きな邦題のひとつです。 ちなみにマンガを描いているのは旭丘光志。貸本時代というか60年代から70年代が盛りだった方、だとおもいます。現在ではマンガ畑は廃業してシナリオライター兼フリー・ジャーナリストであられたと思いますが、健康関係の著作の多い同名の人物と同一人物かどうかは未確認。 この人の描くホームズ探偵は例えばアイリーン・アドラーの写真を貰ってでれでれするなどというまことに人間らしいホームズです。いいか悪いかは別にして細かい演出がなかなかよろしい。例えば。 ダンカン・ロスのひじに土ぼこりがついていたり、スポルディングの両の手のつめ土汚れがあったりして、ウィルソンが不審がる描写。 あるいは。 ホームズ探偵がウイルソンに尋ねます。「あなたはスポルディングを入れてから地下室にいったことがありますか?」「いえ 一度もないですね 今夜にでもいってみるかな」「いや いってはいけない!」と押しとどめる……なーんてとこらは、シャーロッキアンとしては痒いところに手が届きます。侮れません。 マンガですのでもちろん欠点もあります。 クラブの事務所のドアにガラス窓がはまっていて「赤毛クラブ」と文字が入っているというのはご愛嬌のうちですが。 大団円で地下室にホームズが携えるのが乗馬鞭ではなく本物の鞭。こんなの地下室で振り回せるのかしらと思っていたら、最後には地下道でジョン・クレーとホームズ探偵の一騎打ち!ホームズ探偵、クレーに、「へっ こうせまくちゃ とくいのムチもつかえなだろう!」とすごまれてしまいます。かっこわるい……。 短刀を擬するクレーにホームズ探偵はスコップでトンネルの壁を壊してクレーを首だけ出して生き埋めにしてしまいます。この辺はマンガということで。 さて、クレーの正体は如何に!というところで衝撃のラストが待っているのですが、この辺にしておくことにしましょう。講談社刊昭和59年2月10日 第一刷発行定価は480円。古本価格も定価と同じでした。****************************** 去年の日記を開いてみたら、EQ78年3月号掲載の『註で読む「赤毛連盟」』を拾い読みしていました。へえ。 ためしに一昨年2001年の今日はというと、延原訳でやっぱり読んでいますね。 まあ、これも年中行事ということで。 結局本棚はちっとも片付きませんでした。 これもまた、年中行事ということで。
2003年10月09日
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秋風が吹き始めて、だいぶ涼しくなりました。体調も元に戻りましたので、日記更新再開します。 今回はこれから観るつもりの映画の話です。************************ 11月15日からジャッキー・チェン主演のアクション映画「シャンハイ・ナイト」が公開されます。 前作の「シャンハイ・ヌーン」同様にこの映画も時代設定は19世紀末。前回は米国で西部劇でしたが、今回の舞台は世紀末ロンドン! 女王陛下暗殺の大陰謀を巡るジャッキー・チェン演じる主人公チョンの大アクション、なのでだそうです。この程度なら、流してしまうのですが、チャップリンやコナン・ドイル、殺人鬼の切り裂きジャックなどが登場するというのが気になります。でも、ホームズ探偵は出てこないんでしょうね、多分。 シャーロッキアン的には「肉体で解決可能な程度の陰謀」だから、ホームズ探偵が登場するわけがない、と説明できるのですが、やっぱりこれは負け惜しみですね。************************ この公開題名「シャンハイ・ナイト」は前の映画「シャンハイ・ヌーン」をもじったの日本公開時の題名かと思ったら原題もShanghai Knights。夜ではなく、騎士でした。へー、と思っていたら、シリーズ第三作は「シャンハイ・ドーン」(上海の落日とでもいうのでしょうか)に決まっているのでそうで。これの舞台はエジプトとか。エジプトじゃ、ますますホームズ探偵の出番はなさそうです。嗚呼。
2003年10月08日
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体調が良かろうが悪かろうが、仕事をさせてくださるので会社にはとても感謝しています。 残暑キビシい昼下がり。 汗だくで埼玉県は所沢近辺を彷徨っていると一層そう思われます。 悔しいので、会社には直帰の連絡をして駅のコインロッカーに書類鞄を預けて、駅前のくすのきホールで開催されている彩の国古本市へ。 ウィークデーの上に5時前なので割合に空いています。このイベントは出展している業者が多いのと価格がまっとうなので好きなイベントです。しかも会期中に本を追加しているので、初日に行ったからといって、ウカウカできないのが特徴です。(とはいえ、以前の話ですが、最終日に山中本が1冊100円で出るのもどうかと思いますが。いえ、もちろん買ったんですがね。) 2時間ほどかけて、丁寧に廻っているとホームズとも古本とも関係のない知人にばったりあって、驚きました。買いましたものは。《水晶宮物語》松村 昌家先生の本。ヴィクトリアンの参考書に。ちくま学芸文庫の前の版です。400円。《明治屋百年史》。MYジャムとか輸入食品の明治屋の社史です。これが電話帳みたいなサイズで布クロス装丁函入りの重たい本で。 明治時代の資料として買いました。シャーロッキアンをやっているとどこかで近代日本の歴史に踏み迷うことがあるそうです。今の私がそのようで。 その他取り混ぜて1万円ほど。 買いすぎです。 結構な重さになりました。 駅まで戻ってきて、思い出しましたよ。 駅のコインロッカーに預けてあった、書類鞄の重たかったこと。
2003年09月12日
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私たちは「ホームズ」という名のお店に何を求めるでしょうか。 それは歴史とか重厚さとかどっしりした木調の家具とかエールとか「英国」というキーワードを背景にして、インバネス・ケープとかキャラバッシュ・パイプとか、ディアストーカーとか映画のスチル写真とかが配されている。そんなイメージではないかと思います。で。 「ホームズ」という名を冠したお店は飲食店が多いのですが、大体二通りあります。 経営者の趣味を反映したシャーロッキアンも普通のお客さんも満足できるお店か、どこがどうホームズなのかわからない名前負けしたお店か。 さて、このお店はどうでしょうかしら。 今回足を運びましたのはその名も《ザ・ホームズ》。リアリズムの古本屋へ行きがてら、立ち寄ってみました。それにしても、「ザ」ですよ、「ザ」。並々ならぬ自信か余程のおバ○さんでなけでば、なかなか自分では言えません。 普請というか造作はお金掛かっていません。 かつて新宿にあったパブ・シャーロックホームズや八王子で頑張るパブ・シャーロック・ホームズ、大阪梅田のパブ・シャーロック・ホームズ。いずれも造作には大変に凝っています。お金を掛けるだけではなく、大半にセンスがいい造りなのですが、こちらはまあ、なんだな。 無闇にお金をかけるのもなんなのですが、それにしても安い。お店の弁では「ハンドメイドで未完成」なのだそうですが。あとは飾り付けで何とかしなければならないのですがこれかなり雑然とした印象です。減点10点。常盤台のパブ・シャーロック・ホームズのように時間がこの造作に箔を付けてくれるといいのですが。 店番のオニイちゃんはTシャツ姿のフツーのあんちゃんでした。カウンター客とお喋りの最中。ウーム、減点20点。 店内はカウンターのみで椅子が7~8客ほど。隅の棚にホームズのシルエットをあしらったグッズが陳列してあります。このグッズがセンスのないモノばかり。革製品にただロゴをあしらえばイイってもんじゃないのよ。減点40点。 ギネスビールは1パイントで900円。半パイントで500円。おつまみに殻つきの落花生が一皿出てきます。まあ、並みの価格です。これには文句はありません。連れの友人Z氏曰く、程良く冷えているし泡の具合も悪くない、しかも注ぎ方が下手なので泡の層が薄くてその分量が多いのがうれしいとのこと。ま、減点なしです。 でも、私は医者から節制を求められていますので、ウーロン茶です。飲み屋のウーロン茶は高くつきますよ。 総じて言うと、ホームズ好きを当て込んでいるわけでもなければ、酒を飲ませると言うことにもコダワリの感じられない、その割りにつまらないグッズを並べている……そんなお店でした。なんだかなぁ。という気分で帰宅。こんなんばっかりじゃ体に悪いですよ。梅酒呷って就寝。************************** お店は駒形どぜうの裏手。お店の横手正面が長屋門というチェーン店の駒形店。魚がワリに安くて美味しいので酔うなら私はこっちへ行きます。 あ、そうか。長屋門のウェイティングバーに使えばいいんだ。
2003年09月08日
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これは雑誌です。ホームズとつけば、不動産屋の広告にも反応するのがシャーロッキアン。買いましたですよ。それも通っている病院の売店で。雑誌タイトルが「懸賞ホームズ」だそうです。 実物をみるとズバリ「ホームズ」というタイトルのように見えます。8月末に刊行されたらしいのですが、書店やコンビニでは見かけませんでした。病院の売店というのは結構、盲点ですね。覚えておきましょう。「お宝ドンピシャ」という宝くじやらロトとかの情報誌(そんなモンがあるというのも今回初めて知りました)の9月号増刊という体裁です。この雑誌の売りは読者への挑戦形式の漫画が掲載されていること。これの賞金総額が300万円だそうで。ただ雑誌タイトルのワリには掲載作品がピンカーソン探偵社 IQ探偵 白河正臣シックスセンス捜査官 神宮寺響子横浜レビュー団 天海珠里の華麗なる推理迷探偵ショージ・クルーニーデパート探偵 マミ光が丘探偵団 ママは名探偵!とことごとくホームズ探偵に縁もゆかりもありません。おいおい、ホームズ探偵モノのパロディとは言わないから、もうちっとなんとかならないのかい?まあ、本棚に挿して置いて笑って貰うための本ですね。定価は580円。なお、この雑誌、「日本シャーロック・ホームズ協会推薦」だそうですが、そんな団体聞いたことないなぁ。JSHCは推薦なんてことはしないはずだし?************************久しぶりの日記がこの始末です。ネガティブな衝動もエネルギーのうち、ですか。
2003年09月02日
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ここのところ大幅に日記が空いてしまいました。先月末から体調を崩して、30年ぶりかで入院していたのが主な理由です。もちろん既に本復しておりますので、大丈夫です。さすがにまだお酒はいただけませんが。
2003年08月18日
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東北地方の震災が引き続き報道されています。被災地の様子を知るにつけ、こうして、日常を続けられる我が身の幸せを噛みしめています。************************ さて、今週は《最後の挨拶》事件の発生記念週間として、《最後の挨拶》を読んでいます。 この事件記録がいつの出来事であるかは研究者の意見はほぼ一致しています。1914年の8月2日日曜日。そういえば今年の8月2日も日曜ですね。で、発生記念週間なのです。 ちなみにこの事件の原題はHis Last Bow。短編集「最後の挨拶」に収録されています。 まだお読みでない方のために申し上げるなら「欧州の戦雲兆す大英帝国。暗躍するドイツ間諜団!英国海防の機密は果たして持ち出されてしまうのか!ホームズ探偵の最後の活躍譚!」ってとこでしょうか。惹句になればいいのですが。 この事件こそホームズ探偵譚の最後を飾る一編であるはずなのですが、実際にはこの後も短編集《事件簿》一冊分十二編が発表され続けます。 まだ読めるというのがいいのか悪いのか知りませんが、シリーズ構成というものをなんと心得ていたのでしょうか。 クリスティではないですが、《最後の挨拶》だけは金庫に仕舞っておいて、自身の没後の発表させる、くらいの芸当がほしかったですね。
2003年07月28日
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友人Zから出物情報を得たので、残業をそそくさと切り上げて、川崎の古本市へ。 川崎ですよ、カワサキ。 寄り道などというカワイイものではありません。まるっきりの遠征です。 新宿伊勢丹などのデパート系の古書市に比べるとこぢんまりしていますが揃いのいい市です。 今回の狙いはホームズ本ではなくて絵葉書。ヴィクトリアンの雰囲気を掴むための参考資料のつもりです。 十九世紀末から第一次世界大戦後くらいまでの西欧と日本の絵葉書がかなり安く出ています。状態もそれなりですが一枚二百円は安い! ホームズ探偵が活躍した頃の雰囲気のあるものを選びます。選んで買ったのは、結局四枚でした。 ロンドン風景が三枚。馬車に混じって自動車が結構写っているので、多分第一次世界大戦直前くらいでしょうか。 それから、名画?を絵葉書にしたもの。先日、上野で観覧したヴィクトリアン・ヌード展で似た画題の絵を見かけたので、買ってみました。 そのまま川崎でお酒を飲んで、夜更けに帰宅。 差し引きして考えると、使った電車賃よりちょっと得した感じの遠征でした。
2003年07月23日
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三連休の初日です。 先々週に変換コネクターを買ってきて遅々として進まなかった執筆環境の復旧にやっと成功しましたので、気分は上々です。 変換コネクター用のドライバがCOM3しか認識させられないとは思いませんでしたよ。 気分のいい余勢を駆って、しばらくアップを休んでいた分も後追い挙げながらの、日記再開です。*********************************** こんな日にはやはり〈空き家の冒険〉でしょうか。 林克己訳の《シャーロック・ホウムズ 帰る》で読んでいます。この本のことは[2003-05-13]の日記でご紹介しています。原題はThe Adventure of the Empty House。《帰還》に収録されています。1903年発表ですから、なんだ今年発表後100周年ですね。お話しとしては、 アデア卿はどこから狙撃されたのか?ロンドンを騒がす不思議な殺人事件。失意の生活を送るワトソン博士の前に、ホームズ探偵が劇的な帰還を遂げた! 待望のホームズ物語堂々の再開成る!みたいな話です。 しかし、1893年に《最後の事件》が発表されて十年。《バスカ》が発表されてからだって二年経っているわけですから、当時の読者さんは我慢強かったんですね、きっと。この事件記録で私が好きなのはもく切れのホームズ探偵の言葉です。「(略)そうして、シャーロック・ホウムズ氏はまたも、この複雑きわまりないロンドンの生活がいっぱい提供してくれる、ささやかで面白い問題の調査に、思いのままふけることになるわけだ。」ああ、この趣味人的な態度。こういう高等遊民の生活にはあこがれてしまいます。************************************* このささやかな日記の更新が休止していた間にも大勢の皆さんのご来訪をいただき、ありがとうございます。 私もこうしてまた、ホームズ物語の世界にわずかな余暇の許す範囲で耽ることができます。
2003年07月19日
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ここのところ浅草づいています。先週は古本屋に出掛けたのですが、今回は浅草寺のほおづき市がお目当てです。 でも、その前にまずは早めに出て古本屋へ。 雷門郵便局の対面にある古本屋、あかり書房は江戸東京の本やらサブカル系の本やらが中心ですが、偶に当たりがあります。 今は亡き講談社文庫版の聖典を何冊か買ったこともあります。 今日はシャーロッキアン的には空振り。 それでも非ホームズ本ですが探していた本があったので集合場所の雷門の向かいの銀行前へ。 お祭りですから結構な人出なのですが、こちらも友人達やその子供や8名ほどで、ぞろぞろと繰りだします。 仲見世を歩きながら近況などを話します。どうやら、友人のご子息、サッカー少年のN君はルパンものを読みまくっているようです。フン、あんな巾着切りの話など。 早いところホームズ物語という正道に戻さねば。平静を装ってまずはかれと会話から。「ルパン物を読んでいるんだって?どれが面白い?」「うーんと、奇厳城」いうに事欠いて奇厳城かい!ああ絶望的。
2003年07月09日
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先日来の執筆環境復旧のために秋葉原へ。 そんな大仰なものではなくて、特殊規格のケーブルというか変換コネクターを買いに来ただけです。 ついでに古本屋。小雨降る中を秋葉原から上野方面にトボトボと。疾うにシャッター降ろした上野文庫を横目に見て上野駅方向へ。西郷さんの銅像のある丘の下が上野百貨店というテナントビル?になっています。ここの一階がお目当ての古本屋です。土産物屋の奥にあってちょっと判りにくいとこにあります。この店の特徴は棚の整理が行き届いていないこと。そもそも棚自体がいろいろな棚の寄せ集めでかなり危なっかしい。しかし本日もシャーロッキアン的には空振り。ほんと、現実の店舗との相性が悪くなってきました。 上野から山手線に乗って、そういえばあの店なんていお店だろう?今の今まで、店名を意識していませんでした。
2003年07月08日
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といっても最近に亡くなった訳ではありません。 1930年(昭和5年)の本日。サー・アーサー・コナン・ドイル氏が亡くなりました。 江戸川乱歩の《貼雑年譜》に当時の東京日日新聞、時事新報、國民新聞、報知新聞の四紙新聞記事の切抜きを見ることができます。 乱歩さんありがとうございます。 つらつら眺めて面白いのは、どれも、私たちに目に馴染んだ“ホームズ”ではなくて“ホルムズ”と表記されていることでしょうか。 《緋色の研究》という訳語もまだ固定していなかったらしく、東京日日は《スタリー・イン・スカーレット》、報知が《スタディ・イン・スキヤレット》と半分づつに?な表音です。 ちなみに、時事新報はコーナン・ドイル氏と表記しています。改造社版の読者だったのかしら? ついでにぱらぱらとめくってみると、昭和14年のところにヴァン・ダイン(乱歩先生はワ゛ン・ダインと表記されておられます)の訃報のことが載っていました。曰く、「ドイル死去ノ時ト異ナリ、新聞記者ノ来訪質問モナク。放送ノ依頼モナカッタ。時代ハ既ニ探偵小説ヲ去テヰタカラデアル。」と。 最近はミステリの読者も確実に減少しているそうですし、読書習慣そのものが危機にあるようです。 通勤列車での読書からブレイクしたACDはどう思うでしょうかね。
2003年07月07日
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父の手術入院のつきそいで病院へ。 待ち時間の間に聖典を読みます。病院で読む正典というと、これしかないでしょう。************************************* 鮎川信夫訳の講談社文庫版の《回想》で《入院患者》を読んでいます。 原題はThe Resident Patient. 1893年8月≪ストランド≫誌に掲載。この話は単行本の《思い出/回想》に収録されています。お話としては、青年医師に開業させて自分はその入院患者に納まった男。その男が自殺した。遺留品にホームズ探偵の推理が冴える。ってとこでしょうか。 グラナダ版が好きな方には別名「ブルック街の怪事件」ってことで。 はじめて読んだのは大昔でしたが、こんな投資というかお金の使い方があるのかと、驚きました。************************************* こんな本を読んでいたと父に知れたら「世の中には茶化していいことと悪いことがある」といわれそうです。 これとても、父の手術がごく簡単なもので、もとの病気自体が深刻なものではないという確信があるからなのですけれども。 もちろん手術は問題なく終了し、父は病院に一泊して翌日帰宅しました。
2003年07月05日
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最近、日記の更新が滞っています。 4半期の締めとかいろいろあるのはそうなんですが、他に理由があります。そう、技術的な理由が。************************* 私はこの日記をpalm-OSベースのPDAの予定表ソフトを使って書いています。2年ほど前に会社が社員のIT化!の一環としてテスト導入したものです。 当時会社で説明会が開かれたのですが、ご多分に漏れずなんのコトだか判らない説明だったので、会社の近くの本屋に参考書を探しに行って見つけたのがこの本です。《実用パーム便覧―シャーロック・パームズの冒険》。 もう、中を見もしないで即買いです。 「いまやPalmのすべての謎が解き明かされた」という金田一少年のような惹句がちょっと恥ずかしいです。著者は松田 ぱこむさんと小島 邦男さん。出版社ローカスISBN: 4898142257。 まずタイトルがホームズ探偵晩年の著作「実用養蜂便覧」(《最後の挨拶》をご覧下さい)のもじりなのが嬉しかったですね。 シャーロック・ホームズならぬシャーロック・パームズの事件記録を読んでいる間に、自然にpalmOS機のことが理解できるという、まさに私のためにあるような本!素敵!。 こんな本がたったの1900円+税で買えるなんて、しかも経費で落とせるなんて!あ、しまった。領収書もらい忘れちゃった。レシートでイイかなぁ? これはPDAに関心のあるシャーロッキアン必読。全くコンピュータの本らしくない、エンターテインメントでした。これよむとpalmOS機が欲しくなります。ちなみに松田ぱこむさんのお仕事はhttp://www.matsuda-pa.com/work/ で公開されています。********************* 以来、会社からは自由に使って差し支え無しとのお墨付きをいいことに使い倒してきました。この日記も、会社と自宅それぞれのPCに連携用のソフトが入っていて、会社の昼休みに書いたり自宅で調べたり行き帰りにメモしたりして書いていたわけです。 ところが。 好いことは続かないものです。 会社の偉い人が交代したために、永らくテスト導入のままだったこのIT化が中止になってしまったのです。そのため連携ソフトは原則的に回収。 いっそ私物を持ち込んでやろうかしらとも思ったのですが、会社のPCはWin95!のままですが、自宅のPCを目出度く更新してXPにしたために、ハード的に連携が取れなくなってしまいました。 そんなわけで、日記の更新がプチ危機なのです。
2003年07月01日
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晴海のブランチオフィスで仕事が終わったのでオフィスに戻らずに帰宅するつもりで晴海通りをぶらぶら歩きます。1894年の今日。ロンドン名物のタワーブリッジTower Bridgeが完成しました。 テムズ川に掛かるH字みたような姿の橋、といえば皆様ハハァと思われるのではないかと。この“完成”が工事が終わったことなのか、渡り初めなのかは調査不足で判りません。 ロンドン風景のシムボルの一つですから、まちがうことも多いのですが、19世紀のある時期まではタワーブリッジは存在していなかった、のです。《空き家の冒険》でホームズ探偵がロンドンに帰還してきたときにはまだ完成していなかった、と覚えていただきましょう。ですから、《四つの署名》のテムズ川の追跡の描写には現れてこないのですね。 この辺を大間違いしているのが某漫画作品なのですが、間違いを見つけて喜ぶのは愚か者だけだという言葉をを戒めにしておきましょう。************************ 勝鬨橋から隅田川の川面を眺めながらそんなことを考えました。 ちなみにタワーブリッジの跳ね橋部分の動力は当時は水力であったそうで。上げ下げに10分以上掛かっていたとか。これが1976年にあってから電力に切り換えられて3~4分になったとか。ああ、さすが大英帝国。
2003年06月30日
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ネット古書店で買った本が届きました。これまた前から欲しかった本です。*******************************「名探偵ホームズ」というシリーズの第6巻。初版は1976年の12月。 収録作品は二編。〈赤毛クラブの秘密〉〈悪魔の足あと〉〈赤毛クラブの秘密〉は、名作〈赤毛連盟〉そのままですが、〈悪魔の足あと〉ってのはなんでしょう?〈悪魔の足〉でしょうかしら?背中の鞭打たれたような跡を、悪魔の足あとと表現したのですね。それにしても柴田錬三郎の翻案[2003-06-10日記参照]にしてもこれにしてもなぜこの話をシリーズに入れたがるのでしょう。こんなシリーズ考えた奴は誰だ?と思ったら、構成は加納一朗先生。国産のホームズパロパスの名作《ホック氏の異郷の冒険》作者です。へーぇ。こんなお仕事してあられたのか。ちなみに劇画はムッシュー・田中さん。 「原作とは別物として考えるなら、結構面白い」という評が多いです。同感です。ということは漫画が原作からかけ離れたところにあるわけで。 加納先生の名誉のために申し上げますが、一話毎の構成自体はまともなんですよ。ただ。この漫画は絵がものすごいんですの。まあ、この絵を放置しているという点では加納先生も責められてもしょうがないのでしょうけれども。 なにしろ男性キャラクターのことごとくが悪人顔。ホームズ探偵を含めて、みーんな大悪人。例外は狸オヤジのワトソン博士。この絵の元凶は全く絵描きのムッシュー・田中さん。この方の絵はさいとう・たかをタッチ、というかほぼゴルゴ13みたいな漫画を描く先生です。最近は恐怖マンガとか怪奇マンガでご活躍のようですが、この頃には既にそのテイストが現れています。栴檀は双葉より。流石はムッシュー先生。情報によれば、先生はプリンス田中というお名前で危な絵本を描いておられるそうです。詳しいね、Z君。*******************************ここのところネット古書店でのヒットが多いのですが、リアル古書店での当たりが今ひとつです。それとも古書店通いをおろそかにしているのかしら、私。
2003年06月26日
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本日の一編:〈悪魔の足〉 〈悪魔の足〉を柴田錬三郎の翻案で読んでいます。 事件記録自体としては[2003-03-16]の日記で一度触れていますね。 〈四つの署名〉の後で〈悪魔の足〉を読むというのもちょっと不思議な感じを受けます。何しろ正典としては《最後の挨拶》に収録されているのですから,順番的にちょっと違和感があります。 そもそも〈悪魔の足〉がなぜ選ばれているかもちょっと疑問ではあります。もちろん〈悪魔の足〉はコナン・ドイルの自選12作の第9位の作品ですから、まるっきりの駄作というわけでもないのですが、ほかに採録されているのが、名作の誉れ高い《青い紅玉》と《赤毛連盟》なんですから。その、落差が。 柴田錬三郎版での大きな変更点があります。 キャラクターの関係がいじってありまして、スタンデル博士を父親に、モルチマーそして被害者のブレンダ、オウエン、ジョージを一括りに兄弟妹にしてあります。ですから、第一の事件の動機が財産独占にあるのはそのままですが、次の事件の動機は大人向け翻訳での恋慕の感情ではなく、親子の情にしてあるわけです。 子供向けへの直しの方法として、これは上手いと思いました。でも、その分スタンデル博士の苦悩は深くなっているわけで、 なんだかこの柴田錬三郎の翻案。読み進むにつれて、捕物帖を読んでいるような感じにとらわれます。(やっぱり、どうもわからねエ)とウイギンス少年は、ため息をついた。なんて描写を読んでいると、ウィギンズ少年が下ッ引でホームズ探偵が親分さんか八丁堀の旦那のように読めてめいりやす。 とすると、ラデックス・ペデス・デアボリを南蛮渡来の毒薬にしてやって、スタンデイルを薬種問屋の大旦那にして、その一家の悲劇にすればいいのですね。 おお、なるほど。自分でいうのもなんですが、結構面白そう。これはこれで柴田錬三郎さんの筆で読みたいような。
2003年06月13日
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夏季一時金団交がスピード妥結。これでこの夏もまたホームズ本が買えます。ありがたい。 さて***************************〈四つの署名〉を柴田錬三郎の翻案で読んでいます。 なかなか上手にダイジェストしてあります。 ここのところ、しばらくのあいだ、謎の事件も怪事件もないので、われらの名探偵シャーロック・ホームズは、すっかり退屈していた。 冒頭を引用してみましたが、なかなかイイですね。大人向け翻訳同様に退屈しています。大人向けではコカイン注射にいってしまうのですが、児童ものですのでその描写はありません。でも、だからといってホームズ探偵が退屈を紛らわすために、「(略)食うか食われるか、スゴイ悪漢と一騎打ちがしてみたい。どうも運動不足でいかん」と口走ったアゲクに、アフリカ探検に行こうかと言い始めるのは、どんなものでしょう。 ウィギンズ少年も「冒険がしたいだなんて、先生、そりゃムリですよ(後略)」とたしなめます。 ワトソン博士が不在なので、ワトソン役はウィギンス少年が勤めています。その都合で、ワトソン博士とモースタン嬢のエピソードはまったくナシ。でも、ウィギンスくんの「モースタンねえさん」という呼びかけも悪くありません。 でも、まあ、ウィギンス少年とホームズ探偵の関係がまるっきり明智探偵と小林少年状態なのは予想されたこととはいえ、どんなものなのでしょうか。 これをイイと思うか悪いと言うかは読者次第です。 私はスレたシャーロッキアンなので、しきりに面白がっていますが、最初にこの本を読んでそれっきりになった人やこの本を読んでからこの他の正典に近い翻訳を読んだ人はどう思いますでしょうか。 ホームズ物語はホームズ探偵とワトソン博士の対等な大人のキャラクターあってこそだというのを改めて感じました。*************************** この訳業が何となく《小学生全集 45巻 少年探偵譚》[2003-03-06日記参照]収録の〈古城の怪寶〉を下敷きにしているのじゃないかと思わせる雰囲気があります。 もちろんこれは現段階では言いがかりに過ぎないのですが、後世のためにこの疑念はデジタル世界の記録に残しておきましょう。
2003年06月12日
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月初を過ぎてストンと暇になりました。このスキに書棚を整理したいのですが、片付けはじめると、いつの間にかホームズ本を読み耽っています。 さて。******************* 柴田錬三郎訳の《名探偵ホームズ》をご紹介しています。 昨日の日記は、収録作品の〈赤い怪盗〉は正典のどの作品なのか?という問いかけで、まあ、ツマラナイひっぱりをしております。 ひっぱりはツマラナクともこの本はオモシロイ。 さっさとネタを明かしてしまいますと、〈赤い怪盗〉は正典にはありません。この作品は柴田錬三郎さんのオリジナルな作品、つまりパロ/パスなのです。もう一度、この本の前書き「この物語について」を読み返してみましょう。ナニナニ。 この本には、長篇「四つの署名」のほかに、三つの短篇を入れました。と書いてあります。 なるほど〈四つの署名〉、 〈悪魔の足〉、 〈宝石を生んだ鳥〉、 〈赤髪者同盟〉については解説がありますが、〈赤い怪盗〉には一言も触れていません。 これははっきり確信犯ですね。 中身はというと、これがスゴイのなんのって。日を改めてご紹介したいくらい。 というわけで、柴田錬三郎訳の《名探偵ホームズ》スゴイところ・その二 翻訳者のオリジナル作品、つまりホームズのパスティーシュが、パスティーシュであるという説明無しで収録されている! これはかなりスゴイです。 これがためにこの本がスレたシャーロッキアンに珍重されるのですな。 世界ひろしといえども、こんなバカな本はなかなかありません。 こんなバカな本を有り難がる人間もそう多くはないことも確かですが。 手元の資料に寄りますと〈赤い怪盗〉は《名探偵ホームズ 恐怖の谷》(偕成社刊(1954)世界推理科学名作全集 第5巻世界科学探偵小説全集)にも収録されているとか。未見なので何とも言えないのですが、コチラが初出のようですから、ひょっとすると何か書いてあるかもしれませんね。 これまた欲しい本が増えました。ああ、業が深いなぁ。********************* ところで、柴田錬三郎さんのファンの方はこのお仕事をどのように評価しているのでしょう。興味あります。
2003年06月11日
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これは前から欲しかった本です。この度やっとこネット古書店で買いました。偕成社刊の 少年少女世界の名作というシリーズの11巻です。初版は1964年のようですが、資料によっては1968年としたものもあります。私がこの度求めたのは1972年の重版です。ちなみに定価は480円。購入価格は1000円+送料+振込手数料。でも私的にはちっとも高くありません。 一見すると、まあ、なんということもないようです。 この本は現在の目から見るとなかなかスゴイ本なのです。スゴイところ・その一 基本的に翻訳ではなく、児童向けの翻案(と言っていいでしょう)です。 どの程度の翻案かというと、このお話しではワトスン博士は出てきません(!)。だから書き方も三人称。ウィギンス少年が、まあ、ワトスン役を務めています。読者が子供だから、でしょうか?表紙に 原作/ドイル!はイイとして、その下に名前があるのが「柴田錬三郎」。と、どーんと、。まあ、判るのですけれどもね、おそらく翻訳者だというのは。でも、ちょっと驚かされます。 とまれ。この翻訳いや、翻案をなさったのがあの柴田錬三郎さん。チャンバラ小説の名手の仕事です。 シバレンといえば、大昔にクイズ番組(ほんものは誰だ!だったと思います)のレギュラー解答者してた仏頂面が印象に残っています。どんな顔してこの翻訳していたのかしら。 この本の前書き、「この物語について」と題された文章はなかなか力が入っています。 シャーロック・ホームズ!この名探偵こそ、全世界の探偵小説の中で、さんぜんとかがやく最高峰であります。書き出しからこれですもの。期待はいや増すわけです。収録作は 〈四つの署名〉 〈悪魔の足〉 〈宝石を生んだ鳥〉 〈赤髪者同盟〉 〈赤い怪盗〉の5作品。 これらの作品は「この物語について」によれば数多いホームズの冒険物語のなかから、もっとも面白いものをと、選んだ短篇です。というのですが、この選択眼や如何に?目次を眺めてみましょう。 頭に〈四つの署名〉。これはまあいいでしょう。面白い話だし。〈緋色の研究〉はワトソン博士不在では成立しないし。その次が〈悪魔の足〉!いきなり飛ぶなぁ。〈宝石を生んだ鳥〉。これは〈青いガーネット〉ですね。〈赤髪者同盟〉。せきはつしゃどうめい、とルビが振ってあります。せきはつしゃ。《險冒のズムーホ・クッローャシ》[2003-04-20日記参照]をご紹介したときにサラッと流してしまったのですが、はー、こう読むのですか。そして、〈赤い怪盗〉。〈赤い怪盗〉?〈緋色の研究〉かしら?いや、怪盗なんか出てこないし。〈赤い輪〉?いや、これにも怪盗は出てこない。なんでしょうね。こういうどの作品だか、わからないタイトルが付けられているのが、面白いですね。どれどれ、本編を読んでみましょう。??????なんだいこりゃ!************************************************というところで、続きは次回!
2003年06月10日
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6月には休日がありません。一週間が長ーく感じます。そういうときにはまずはホームズ本を手に取ることにして。************************************* 以前[2003-05-14日記参照]にご紹介した〈眺めのいい客室〉の続編です。 シリーズ化されるかなー、と期待していたら、ちゃんと次?がでてました。英語教師トリヴァー先生と生徒の桃ノ井孝太郎君が活躍するシリーズ第二作です。多分。(と、ここいらで情報収集力のヨワさが露呈していますね) しっかし、まぁ、2002年夏号を2003年の梅雨の入り鼻に読むのもオツなものです。そう思わないとはずかしくて。 掲載誌は創元推理212002年夏号。 ISBN4-488-49505-2 定価は700円+税。 ホームズ物語の登場人物、ミスター・トリヴァーが明治日本で素人探偵振りを発揮する楽しいパロパスです。 今回のお話はしっかりホームズ物語がらみです。 タイトルにもある「花嫁」がキーワードなのですが、そうなるとだいたい出てくるモノが決まっています。そう、それですよ、それ。でも、知らないフリをしていただいて。 トリックも単純な「******」で、そう大したことはないのですが、後半のタネ明かしの段の換骨奪胎ぶりの見事なこと。 作中の第二節の最後。事件のめどがついてご機嫌なミスター・トリヴァーは、師匠(ホームズ探偵です!)のひそみに倣った解決方法を思いついて一層ご機嫌になります。 これはトリヴァー先生がご機嫌であるとともに作者自身もまたご機嫌だったのではないかと思われます。 この作品もそうですが、トリヴァー先生の視線の暖かさ、何かに似ているなーと思っていたら、そうです。 吉野源三郎.の『君たちはどう生きるか』.。 これに出てくるコペル君のおじさん。これに似ているんです。似てませんかね? 今回はキャラが増えています。樺嶋伯爵の三男坊の樺嶋成臣君。おやと思って読み直してみたら前作の〈眺めのいい客室〉にチョイ役で登場していました。レギュラーキャラになるかどうか楽しみです。評価★★★ 勘のイイシャーロッキアンにはすぐに筋はわかってしまいますが、この快い感動は予想できないでしょう。単行本化を激しく希望。************************************* 2002年夏号にはいっている他の作品で面白いのは、〈首なし宇宙人の謎〉正真正銘の安楽椅子探偵が登場します。〈『八十日間世界一周』論〉は目ウロコの示唆に満ちた評論でした。
2003年06月09日
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今日会った知人からこの本、貰いました。 新刊で買ったのが手元にあるのですが、ご好意はそのまま受け取るようにしていますので。せっかくのご好意だから、でもあります。以前に海外土産を持っているからと」断られて悲しい思いをしたので、断りツライということもあります。ただ。「持っているから要りません」と断ってると、そうすると次ぎにはくれなくなってしまいます「草敷はきっと持っているからなぁ」と。これがコワイのですよ。浅ましいといわば言え。私が断ったので他の人に廻してくださるなら良いのです。私が断ったばっかりに廃棄処分になってしまった本が何冊かあるのです。それを考えると、浅ましいといわれようとなんと言われようと笑顔で受けとりますとも。さて。************************ この本のスペックはというと。シャーロック・ホームズ研究会/編出版社:青春出版社ISBN:4-413-07072-0発行日:2000年1月価格:1,000円+税 ホームズ本の新刊の情報はキチンとフォローしているつもりでした。ところがこの本が唐突に刊行されたので驚いた覚えがあります。その後某大手の新刊書店の平台に並んでいるのをみて思わず買ってしまいました。 タイトルのネーミングは悪くありません。 巻末に参考文献として挙げられている本から切った貼った写したで造ってあります。この種の雑学本にはよくある仕立て方です。その下らないウンチク本ならそれでもごまかしが利きますが、シャーロッキアーナのように熱心家が大勢いる分野ではかなりむぼーな試みです。 しかも。それらの研究書は邦訳があるもの、そうでなかったら日本人による研究、と日本語で読める文献のみから引いてあります。ですからシャーロッキアーナとしては古典というかカビが生えているようなレベルのものばかり。 ですからレレンバーグやランセリン・グリーンといった、現代の(というか存命の)シャーロッキアンのお名前がほとんど出てきません。 ただ継ぎが上手というか、編集の腕は悪くないので、そこそこのシャーロッキアンであるならさらさらと読み進むことができます。たとえが悪いのですが「リーダーズ・ダイジェスト」みたいな感じ。そこそこのシャーロッキアンでないと?な用語が解説もなく出てくるのは瑕瑾といたしましょう。いや、瑕瑾じゃないですね。大きなキズです。 失敗したヌエみたいな本です。評価星無し。どうみてもシャーロッキアンが絡まった形跡のない本。シャーロック・ホームズ研究会の方々はホームズ物語にあまり愛がないのかなぁ。 カバーのレンガ積みの壁。あの積み方は実は「イギリス積み」 English bondという方式ではなかったかと思います。こういうところは洒落ているのにね。**************************** 私のところで本がダブったら、本の状態にもよりますが二冊までは手元に置いて、三冊目からはミステリに強い古本屋に引き取っていただいています。本は天下の回り者ですからね。
2003年06月08日
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月末月初は副業が忙しくてどうもイケマセン。 忙しいにかまけているうちに、日記記入率も60%を割り込んでしまいました。赤点状態です。こういうときには古本屋に寄り道してホームズ本探し!が決まりのパターン。 でも、ちょっと不安。 ひょっとして買い物依存症かも知れない。それも、ホームズ本限定の、と思う今日この頃です。そんなのもあるかい。さて。************************ 会社が退けてから、新宿へ。 このイベントは今日が初日です。 惹句は「本との出会い広場新宿西口地下-知と遊のめぐりあい-」と大上段に振りかぶっていますね。 30軒の古書店が参加して20万冊の本が出品されているとのことですが、中心は雑誌とか写真集、文庫本にマンガ本と、あんまりホームズ本はなさそうな品揃えです。ミステリマガジンもほとんど出ていません。すこしくガッカリ。 それでも、三十分ほど会場を回って求めましたのは 《シャーロック・ホームズの囘想》 《シャーロック・ホームズの帰還》 以前にご紹介した[03/04/20日記参照]岩波文庫の菊池武一譯《險冒のズムーホ・クッローャシ》のシリーズです。一冊二百円、合計四百円と税。 今回のは二冊とも昭和32年の第十二刷ですから、表紙のタイトルは「ズムーホ・クッローャシ」、ではありません。ちゃんと左から右に書いてあります。漢字は旧漢字というか異体字ですが。 あれ?でも、中の各ページのタイトルは「ズムーホ・クッローャシ」だ! 表紙だけ改めて中の紙型は変えていないんですね、きっと。 これ以上の中身改めはまた今度ということにして。 ちなみにこのイベントは開催期間は 2003/06/04~2003/06/08場所は 新宿西口広場イベントコーナー開催時間はAM8:00~PM9:00(最終日AM8:00~PM7:00)です。************************ 今日は一週間ぶりに非バーチャルでの古本買いでした。でも、ネットでは結構買っているんです。 楽天のフリマは、草敷的にいい本が多いのでついつい買ってしまいます(ちょっと宣伝でした)。
2003年06月04日
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ここのところ古本屋でいいホームズ本に巡り会えなくなってきました。ネット古本屋でのヒットはありますが、実店舗の方が不振気味、いえ、近年まれにみる大不振です。ちっともいい本に当たりません。 もっと真面目に古本屋を廻らなくては。ああ、いけない、いけない。私としたことが妙な使命感に燃えてしまいました。さて。************************ 「歴史と地理の会」の友人たちと王子で会うことになったので、早めに会社を退けて出て古本屋へ。王子駅の裏手、音無川親水公園近くのブックマート王子店へ。ここで昔、長沼本を買ったことがあります。 いけない、いけない。過去の成功体験に固執していると、進歩はないぞよ、わたし。ブツブツいいながらも店には入るのです。 で、見つかりましたよ、ホームズ本。講談社の世界の名作図書館という全集の33巻《怪盗ルパン 名探偵ホームズ》。 何故に泥棒風情の名前が名探偵の名前より前に来るか理解できないのですが、まあ、久しぶりのヒットですので、イイとしましょう。代価は僅かに100円。うれしいなぁ。 品物改めはまた、あした。************************ 王子のキリンシティで呑んだビールの美味しかったこと!。
2003年05月29日
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先日から、業務でフローチャート(流れ図)を描くソフトに取り組んでいます。 近々、組織変えが発生するのですが、人的合理化を目的にした業務改善が指示されていて、そのための資料作成に仕方なく使っています。こいつのややこしいの、使えないのって、もう。 いろいろあって、本棚からこの本を取り出しました。************************ 確かこれを買ったのは横須賀の古本屋でした。 平成3年か4年だったと思います。横須賀まで何をしにいっていたのかなぁ? 購入価格は350円。この本はホビージャパンから出たシャーロック・ホームズ・ソロミステリーズの第1巻。初版は昭和63年9月30日。1988年ですね。15年近く前。当時定価680円。参考までにISBNは4-938461-40-4です。紹介して何か意味があるのかと言われると大変に困るのですが。 原題はMurder at the Diogenes club。作者はジェラルド・リーンツGerald Lientz。訳者は桜井八重子さん。 これは小説ではなくて条件に沿ってパラグラフを追いかけていく、いわゆるゲームブックです。 社会思想社の現代教養文庫から《火吹山の魔法使い》The Warlock of Firetop Mountainが出版されたのが1984年で、この本が火付け役になって、その頃大ブームになりました。私は読むというのか遊ぶのが面倒くさいのでゲームブックは手にしなかったので新刊では買い損なっていました。 中身の方は飛ばし読みできないので何とも言えないのですが、タイトル通りにディオゲネスクラブの中での殺人事件を捜査するお話しのようです。説明になっていませんね。本筋の殺人に競馬の不正が絡んでいるようです。ちなみに読者はワトソン博士の従弟!という設定。おお、第三者の視点で描くホームズ物語という私の好きな展開ではないですか。しまったなぁ。あのころ買っておけばよかった。 このシリーズ、2巻が《ブラックリバー・エメラルド》ピーター・ライアン作。そして3巻が《アップルドア・タワーズ》ジェラルド・リーンツ作。両方とも未見なので何とも断言できないのですが、前者は《青い紅玉》を、後者は《チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン》を思わせるキーワード。なかなか魅力的なタイトルです。うーん、読んでみたい。 問題は4巻の《ワトスンと王冠》。これもジェラルド・リーンツ作。資料によっては出版されたと書いてありますが、これは予告だけで出版されなかったようですが、詳細不明調査中。************************ この本をを今更取りだしたのは訳がありまして。 例のフローチャートを描くソフトに習熟する必要が生じたからです。練習にかこつけて、このゲームブックの流れをフローチャートにして追っているのですが、それにしても面倒くさいこと。
2003年05月28日
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顧客が今流行の汐留に移転したので、挨拶へ。ついでに新橋駅前広場で開催されている新橋古本まつりに寄り道。あくまでも、ついでです。************************ このイベントも私の好きなイベントです。 ミステリマガジンやEQのバックナンバー(もちろんホームズものを掲載している分です)に当たりが多いのと夜遅くまで催されているので、会社を退けてからでも行きやすいので。 今回は平日の午後のなのですが、背広姿が多いです。あなた達、会社どうしたの? いえ、人のことは言えません。 映画パンフを扱うブースはなにやら、殺気だった人だかりがしているのでやり過ごします。 さて、このイベントのアナはSL広場から細い道を新橋駅前ビル側に渡ったとこで店広げているあたりです。 この位置はわりに死角になっているらしく、比較的空いているののと、サブカル系の面白い本はこの辺に出店しているお店で買ったことが多いので。 毎回毎回というわけにはゆきませんが、結構好みの本が入っています。 今回は……ホームズ本探しは空振り。こういうこともありますよ。 サブカル系の本を数冊と古い絵葉書を買って帰社。************************ ホームズ本は×でしたが、サブカル本は当たりでした。この本を山の手線に載っていて読み耽っていたので、東北地方の大きな地震には全く気がつきませんでした。
2003年05月26日
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昨夜は友人達と馴染みの店で一献。心中のわだかまりを出してしまうにはこれが一番です。 でも酔うと本を読んだり日記を書いたりはできなくなります。自制、自重。さて。************************ 〈六つのナポレオン像〉を林克己訳の《シャーロック・ホウムズ 帰る》で読んでいます。原題はThe Adventure of the Six Napoleons。《帰還》に収録されています。1904年発表ですから、来年発表後100周年ですね。お話しとしては、 ナポレオンの胸像が壊された。三つ目が壊された脇には死体も一緒だった。殺人犯を追うレストレード警部。ホームズ探偵が明らかにした真実とは!みたいな感じです。 このお話しの面白いところはなんといっても、単なるナポレオン像の連続損壊事件から****家の黒**を取り出してみせるところ。まさに「名探偵」の「名探偵」たるところではありませんか。「諸君!」と、ホウムズはさけびました。「****家の有名な黒**をご紹介します!」 レストレイドも私も一瞬、口をきけずに坐りこんでいましたが、やがて、よくできた芝居の見せ場でやるように私たちはそろって拍手しはじめました。ね、かっこいいでしょう! この「名探偵」の「名探偵」たるところ、「よくできた芝居の見せ場」の面白さがわかったのは、ホームズ物語をある程度読み込んでからでした。 子供の頃にはよく分からなかったのです。多分このシーンに来るまでの展開がだるかったからではないでしょうか。このだるめのプロセスがあるから、このシーンが映えるというのが、子供には判りにくいのでしょう。「名探偵」の「名探偵」たるところ。 「いっぱしのシャーロッキアン」([2003-05-15]日記参照)ならざるへなちょこシャーロッキアンの私にはこの辺の感覚を上手く説明することができないのですが。 言ってみれば、凡人(exウォトソン博士.)は藪しか見えませんし、常人(ex.レストレード警部)は薮を叩いてヘビを出してみせる程度ですが、超人なる名探偵は薮を叩いてゴジラを出すことができるのです。それはそこにあった事実を見い出したのではなく、あたかも真実を創り出したかのように。 そう、この感覚こそは「センス・オブ・ワンダー」。 驚異の感覚というベタな訳語しかないのが残念です。どちらかというとSFの分野での言葉です。そうか!名探偵ってSFだったのかぁぁぁぁぁぁぁ************************ おかしいですね。まだ酒残っているのかしら。自重、自重。
2003年05月17日
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部門長が不祥事で更迭されて、会社が騒然としています。一族連理は大騒ぎですが、私は社内政治には関わりのない事務屋なのでさっさと帰宅。 ゆっくり正典を読んでいます。************************ 林克己訳の正典です。岩波少年文庫収録。1976年の第一刷。 ホームズ、ではなくて、ホウムズというのがこだわりです。ま、鈴木幸夫先生のシャーロク・ホウムズ程ではないにせよ。 《帰還》とか《生還》を《帰る》、と訳してあるのも特徴です。ちょっと「父帰る」や「派遣軍還る」みたいですが。 収録作品は次の通り。もちろん《帰還》の中から選ばれています。〈空き家の冒険〉〈ノーウッドの建築業者〉〈六つのナポレオン像〉〈三人の学生〉〈金ぶちの鼻めがね〉の5編。どういう基準で選んだのかとても気になるところです。 林さんがお書きになった訳者あとがきにこんなことが書いてありました。 読者のみなさんも、いずれあとで、ホウムズの物語をぜんぶ通読したときに、いろいろと考えてみていただきたいと思う。すぐれた点、疑問の点、まちがっている点をどしどし数えあげられるようになれば、みなさんもそれでいっぱしのシャーロッキアンになれるはずである。 他人の説やカタログ・データなんかには詳しくなりましたが、自分の頭で考えて自分の言葉の言葉でホームズ物語を語ることはなかなかできません。 ああ、自分は「いっぱしのシャーロッキアン」かしらと思います。************************ さて、この本の表紙はペン画のホームズ探偵の絵です。〈六つのナポレオン像〉の一シーンでしょう。ちょっとパジェット風のなかなかいい雰囲気。 この挿絵を描いたのが岩淵慶造さん。岩崎書店の児童向けのホームズ全集の挿し絵を描いている人とは思えないカッコよさです。[2002-11-19]日記参照
2003年05月15日
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月初の忙しさも一段落。落ち着いてホームズ本を読むことができます。************************ この作品はホームズものであるということを知らずに読むと、カタルシスが最大になるのでしょうけれども。でも、シャーロッキアンがまったくの白紙の状態でこの話に巡り会う野は難しいでしょうね、きっと。 さて、この〈眺めのいい客室〉という短篇は東京創元社の季刊誌、《創元推理21》 2001年の冬号(ISBN4-488-49503-6 700円+税)に収録されています。作者は伊神貴世さん。第七回の創元推理短編賞で佳作になった方だそうです。 この本の存在は友人のS・S・ヴァン・ダイン好きのミステリファンが教えてくれました。この号がヴァン・ダインの特集号だったのですね。 明治日本を舞台にした大変に心温まる短編です。英語教師トリヴァー先生が探偵役。ワトスン役はその生徒である桃ノ井孝太郎君。 トリヴァー先生。そう、《グロリア・スコット号》の事件に登場したホームズ探偵の学友です。 パロ/パスというカテゴリとは少し違います。TV番組の言葉でいうとスピンアウトというのでしょうか。もう一つ言うと、このお話で語られる事件は何ともとってつけたようなストーリィから浮いた印象があります。一応は密室トリックですが、トリックそれ自体はバカミスの部類です。 多分、このお話の読みどころはそんなところではなくて、トリヴァー先生がホームズ探偵ばりの推理をするところです。例えば、こんな風に。 すると何を思ったのか、ミスター・トレヴァーはついと教壇を離れ、教壇の正面、前から二番目に座っている生徒のところに歩み寄った。そこで足を止めると、ふむと小首をかしげ、「どうやら君は、ダウンのボウイングが苦手なようですね。肩に余分な力が入っているから姿勢が悪くなって、弓を取り落としてしまうのでしょう」と唐突に言った。ね、いいでしょう?そして、この推理を説明するときに するとミスター・トレヴァーは見るからに嬉しそうな顔をして、「なに簡単な観察と推理の結果です」と答えた。 ホームズがかりのパターンなのですが、このあたりが実にその穏やかでイイ意味で教師っぽいのです。ホームズ探偵とは大違い。 しかし。 ホームズ物語の中ではヴィクター・トリヴァー君はテライで茶園を始めたはずでした。その彼が明治日本で英語教師をするまでには色々と会ったはず。例えば《ホック氏》シリーズでのヴィクター・トリバー氏の末路は哀れに尽きるではないですか。 ですが、その語られざる苦労もこの作品の中では彼の品性を些かも損なうことはなかったようです。 それに、とりあえずホームズ探偵はもちろん、どうやらワトソン博士とも交流は続いているようですし。 そんなこんなで、嬉しい気分になる一編でした。 シリーズ物のようなので、続編を気長に待ちましょう。評価:★★★ インターネット書店ではまだ買えますので、一読をお勧めします。------------------ 同じ号に入っている〈やさしい死神〉もイイ話でした。
2003年05月14日
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顧客が移転したので挨拶に。会社に帰る途中で寄り道です。 鄙には稀な神田の古本屋街にあるような佇まいのお店です。佇まいだけではなく、価格の方も神田値段なのが瑕瑾。いや、《シャーロック・ホームズのロンドン》を参万円という想像を絶するバカ値を付けていたこともあるので、はっきり言って重傷。 でも八勝堂サンの名誉のために申しますが、《シャーロック・ホームズのロンドン》の件は例外ですよ、例外。品揃えはとても良いのです。日本の推理小説関係の本はなかなか見るべきものがあります。目の保養になります。 さて、ここのお店のアナは百円均一のワゴン。毎回毎回というわけにはゆきませんが、結構好みの本が入っています。今回は……空振り。こういうこともありますよ。
2003年05月12日
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連休中にひいた風邪の直りがわるく、どうもいけません。 金曜日には思いきって休暇を取って、布団の中で読書です。その為には今日は残業。************************ 例によってパロパスです。 妙齢の婦人ミス・ローズ・ソーンダイクがホームズ探偵が自分に気があるのだと思い込んで……、というコミカルなお話。 大した話ではありません。 この短編の値打ちは、この婦人がベイカー街221Aに住まいしているところです。 というわけで、今回のお話は《ベイカー街221A》。EQ1979年3月号通巻8号収録。翻訳は山田順子さん。 「一体、221aはどうなっていたのだろう」 このシャーロッキアン的な疑問は、221bのbがbis階上を意味するという小ネタを仕入れるとすぐに思いつきます。私も思いつきました。このお話の中では221Aは221bの隣家と言うことになっていますが。 作家という人種の偉いところはそういった思いつきを捨て置きにしないところです。ほんと、シャーロッキアン的疑問=パロパスのネタです。 そんなわけでこのお話、着想はとてもいいのですがどうもくいたりません。原題のLetters from 221A Baker Streetの通りの書簡体のスタイルもだるいし。評価★ この★は着想の良さに。************************ 作者のエスター・L・ナッシュEsther L. Nashのことはよくわかりませんでした。イタリアのシャーロッキアン団体に関係があるとかないとか。乞御教示。
2003年05月08日
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連休ですが、どうも調子が悪いので臥せっています。まあ、休日の並びが悪いので張り切って出歩くような雰囲気でもありませんしね。 と、負け惜しみを呟きながら、布団の中でリアリズムの古本屋[2003-04-11日記参照]で買ったミステリマガジンのバックナンバーを読んでいます。************************ さて、《シャーロック・ホームズの日常生活》はミステリマガジン1987年9月号通巻.377号掲載。 坂田靖子先生のマンガです。といっても見開き1面のみ。ショート・ストーリィですが、坂田作品共通のなんとも知れぬ味わいがあります。 コミックを言葉で説明するのは虚しいので、ここは実物を眺めていただきたいですね。 古本屋さんでミステリマガジンのバンクナンバーを漁るのがイヤな方には、この作品を含むHMM掲載作27編を収録した《バスカビルの魔物 坂田靖子ミステリ・コミック集》の方をどうぞ。ホームズっぽいものはこの作品と表題作だけですが、その他のもとても面白いですよ。 ワトソン博士を大食漢であっても美食家ではない(むしろ味オンチ)、としたのはファニー・クラドックの《シャーロック・ホームズ家の料理読本》の罪だと思います。 それにしたってスゴイレシピのカレーです。英国料理を揶揄して頭のよすぎる人間が考えすぎて造った料理と評した人が居ましたが、日本人にとっては英国のウナギ料理は想像を絶しています。 とまれ、この坂田ワトスンは《マーガレットとご主人の底抜け珍道中》のご主人みたいで、カワイイですよ。《バスカビルの魔物 坂田靖子ミステリ・コミック集》のデータは以下の通りです。ご参考まで。著者:坂田靖子出版社:早川書房ISBN:4-15-208229-1価格:1,600円+税
2003年05月04日
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通常4労働日程度掛かる月初の処理を今日と明日とでしなければなりません。仕方なく早朝6時から出社して作業。泣きたいです。ああ、メーデーが休日になるといいのですが。 で、会社を退けてから発作的に駒込の遅くまで開いている古本屋へ。************************ で、買い求めましたのがミステリマガジン1998年5月号通巻506号。250円ですから許容範囲内です。 これまたホームズの特集号です。もちろん。 題して「ホームズの新しい楽しみかた」。新しい?そんな楽しみ方あるのかしら?という疑問は置いておいて。 表紙がモノクルにボウラーハットの旧式なおっさんの写真。いえ、人品賤しからざるお顔で、特集にふさわしいです。新潮社からCD-ROM版の聖典が出たのはこの年ではなかったかと思います。 収録作はまたしてもパロディ/パスティシュが三作品。ホームズ探偵の特集といいながらも、その実はパロパスばっかしです。ミスマガ読むような人はホームズは卒業済ということなんでしょう。しかし、しかしですよ。 いまさら、本家作品を掲載することはできない、と編集者が考えるのはよく分かります。しかし、ほんとうにそうかどうかは別問題。もう聖典そのものにすることがなくなった。その昔EQに私註の入った《赤毛連盟》が掲載されたことがありましたが、そういった形で聖典を読ませる試みを考えていただきたいです。もっともこの私註がこれはこれでスサマジイものでしたが。さて収録作品の話でした。〈マナー・ハウスの秘密〉。原題はシンプルに The Manor House Case。作者は怪盗ニックの人 エドワード・D・ホック(Edward D. Hoch)。(エラリイ・クイーン風に) 翻訳は垣内雪江さん。こんなダイイング・メッセージあるか~?というのが正直なところ。ホームズ探偵の物語には連続殺人は似合いません。〈悪名高いカナリヤ訓練師事件〉。 原題はThe Case of teh Notorious Canary Trainer。 作者は去年亡くなったヘンリイ・スレッサー(Henry Slesar)。(W・サマセット・モーム風に) 翻訳は:高儀 進さん。この作品は私評価高いです。〈血痕が多すぎる(第二の血痕)〉。原題は Too Many Stains (The Adventure of the Second Stain)と長々としています。作者はマーヴィン・ケイ(Marvin Kaye)。(レックス・スタウト風に) 翻訳は興津真理子さん。これもちょっと凝りすぎ。シャーロッキアンが書いたシャーロッキアンのためのパロ/パス。多分単行本未収録作ばかりではないかと思います。ちょっと自信ないですが。さーて、どのあたりが新しい楽しみ方だったのか?これがまた、ミステリなんだな。************************ この頃のHMMには《広居堂の拾い物》という未訳の海外ミステリを紹介する見開きのコラムが連載されています。帰国子女?の女性古書店主と女子大生の会話。これがなかなかお洒落でわたくしのオキニです。といってももう連載終わって居るんだろうなぁ、きっと。 私自身は女性が店主、店番ではなく店主の古書店は三軒しか知りません。どれもポリシーのある綺麗なお店です。
2003年05月01日
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六本木ヒルズはおおかたの予想通り大変な人出のようです。胸をなで下ろしながら統一地方選の後半戦の投票へ。さて、誰に投票してイイものか。************************ 1977年の今日。日本におけるシャーロッキアンの一人にして巨星であった長沼弘毅氏が亡くなりました。 氏について孫引きで語るもの潔くないので、その辺は他のサイトや本をご覧頂くとして。 氏はホームズ物語について9冊の著作を残しました。現在それらは《長沼本》と呼ばれて、日本のシャーロッキアーナの中で特別な位置に置かれています。私の本棚でも、特別な場所に置いてあります。《SHの知恵》 朝日新聞社1961《SHの世界》 文芸春秋新社1962《SHの紫煙》 文芸春秋1966《SHの対決》 文芸春秋1967《SH秘聞》 文芸春秋1968《SHの挨拶》 文芸春秋1970《SH健在なり》 番町書房1972《SHの恩人》 家の光協会1974《SHの大学》 実業之日本社1976 自分の趣味について語った本というのは幾らもあるでしょうが、これほど面白く読ませてくれるのはなかなかありません。その語り口は、趣味人のお金持ちの伯父さんのようといえば、判っていただけるでしょうか。 現在、 《長沼本》はその高額な古本価格で知られています。バブリーな時代には9冊+1冊(《ミステリアーナ》というミステリ解説書)のセットで6万円というバカ値が付いたのを某古書市で目撃したことがあります。 今はその頃よりは落ちつきましたが、市場に出回る件数の多い《SH健在なり》でも2000円以上。《SHの知恵》なんて今時はいくらするのやら。 《長沼本》は発行当時は日本語で読める本として貴重な海外のシャーロッキアーナを紹介していました。当時未訳あるいは現在も未訳である海外研究のエッセンスを紹介した功績は真に大きいものがあります。 これら《長沼本》こそが日本人をシャーロッキアンにした本、ナンバー・ワンではないかと私には思えます。 現在では、《長沼本》には情報的には特別な価値はありません(30年以上前の本に情報性があることの方が本来おかしいのですが)。 長沼本が情報性を失ったのは、ただ時代が経過したからではなく、まさに長沼本によってホームズ探偵とその物語についての理解が拡がり、啓蒙がなされたからであります。長沼本がその使命を立派に果たしたからこそ、長沼本は“古く”なったのです。 それでも《長沼本》を読み直すことはなかなか楽しいものです。 私たちが既に知っていることをかくも面白く聞かせてくれるこの語り口。これは当分古びないと思われます。 そう、そして、できれば。 著者がそれぞれの本をオードブルやメインなどと料理の皿になぞらえているように、できれば全9冊を通して読むとなかなか味わいも増すというものでしょう。評価★★★★ 日本語ネイティブのシャーロッキアンなら、一冊も読まずに通過することはできないはず。************************ううむ、語ってしまった。恥ずかしいです。
2003年04月27日
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六本木ヒルズがオープンしました。TUTAYAと石川次郎さんがプロデュースした面白い本屋さんがあるようなので、ちょっと行ってみたいのですが、混むでしょうね、当分。********************** ミステリマガジンの1982年8月号 通巻.316号掲載。原題は The End of Sherlock Holmes 。 初出は1927年《マンチェスター・ガーディアン》誌だそうです。 作者はフルネームも正体も経歴も不祥。翻訳は中川裕朗さん。 この作品は《シャーロック・ホームズの災難》の下巻の方にも収録されています。ミステリマガジンに掲載されているものと同じかどうかは検証していません。 これまたホームズ探偵を揶揄するタイプの短いパロ/パスです。友人のZに言わせると、中川裕朗さんが訳すような程度の作品、ということになります。(彼は《ホームズは女だった》を読んで、中川さんが嫌いになったらしいので。) とはいうものの。 ホームズ探偵のような推理の才能が乱用されたら、エライ迷惑になるなと思いませんか?このショートストーリィはそんなお話です。 真実の蔓延が混乱の元になる。 このモチーフをコミカルに展開するとフレドリック・ブラウンの《火星人ゴーホーム》になって、真面目に悩むと《狩野俊介の冒険》シリーズの少年探偵狩野俊介君になるのかな? 私たちは生活の中でウソとか真実ではないことを口にします。理由はいろいろでしょうが、ホームズ探偵のような全くウソの通じない相手がいると困るでしょうね。 ワトソン博士は裏表のない人物ですし、ホームズ探偵に嘘をつく必要がなかったのでホームズ探偵と付き合っていても平気でいられたのでしょう。多分。ホームズ探偵にしてもワトソン博士が探偵に嘘をついたとしてもウソの理由が分かるだけに、黙っていたのではないかと思います。 これらは、数少ない例外であって、凡俗の徒である私はそうはいきません。 私には多分にウソがないと生きていけません。評価 星無し ほんとはあまり紹介する程のことはありません。でも、いろいろのことが思われるお話しではありました。******************* 世の中では誠もウソも等しく“赤い”ようです。そういえば罪も緋色でしたっけね。
2003年04月25日
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雑忙に紛れて忘れていましたが、今月は世間は新人さんシーズンだったのですね。これから五月病になったりするのでしょうね、彼ら。この本を読むにはいい時節かもしれません。私も再読。心がけを新たにします。************************ 奥付によるとこの本が出版されたのは1982年12月。もう20年も昔です。発行はPHP研究所。ISBN: 4-569-20916-5 で、価格: 980円+税、と。 一番時代を感じるのは表紙のイラスト。このイラストでホームズ探偵に扮しているのが怪奇俳優ピーター・カッシング。時代ですね。今どきなら間違いなく、ジェレミー・ブレットです。 日本人はなんでもビジネス書として読むのが好きなようです。旧日本軍の作戦要務令とか宮本武蔵の五輪書とか。その昔、会社の人事部の書棚に並んでいたのを読んだのですが、充分にトンデモ本でした。 そして、ホームズ物語も例外ではありません。 本書の主張は「ホームズの手法とスタイルをビジネスに生かそう」というのか、「ビジネスパースンよ、シャーロッキアンになろう」というのか、かなり微妙です。乱読家の友人Z氏に言わせると「有為の青年をシャーロッキアンにしようという陰謀の書」だそうです。私もそんな感じがします。当時この本を読んでシャーロッキアンになった人がいるのかどうか、気になるところです。 しかもまあ、経済が昇り調子の頃のビジネス書です。このご時世の新人会社員-茶髪、ピアス、三釦スーツ、スクエアトウの靴という常軌を逸した種族-には理解しがたい内容のようです。彼らからすれば、本書もおそらくトンデモ本でしょう。 そもそも、ホームズ探偵と我々勤め人の最大の違いは独立した個人事業者か会社組織の一構成員かということです。ホームズ探偵に倣ってはみても、自ずと限界があるワケで。これを言ってしまっては元も子もありませんが。 かつてはそれでも組織の一員であることを自覚しつつ、自己をホームズ的に磨き上げるということも可能でした。しかし書いてあることは極めてまっとうであるにもかかわらず、時代と世間がこの本をトンデモ本にしているのでしょう。嗚呼、嫌な渡世だぜ。評価★★ コレクションとしての価値はもちろんあります。ビジネス書としての価値は?ですが。それ以上に人間としての著者の真摯な態度には頭が下がります。私のようにシャーロッキアンと会社員との二足の草鞋を履く方には、イタイところも啓発されるところも多くあることでしょう。************************確か私が読んだのは童門冬二さんの《「作戦要務令」の新しい読み方》(出版社:三笠書房 ISBN:4-8379-1328-8)と《 武蔵型強者の経営法50ヵ条 五輪書の極意に学ぶ現代ビジネス》(阿部正城/著 プレスジャーナル刊 ISBN:4-88877-601-6)ではなかったかと思います。
2003年04月24日
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楽天では映画絡みの知人ができました。たまに伺って楽しい思いをさせていただいています。さて。************************ これはビデオです。レンタル屋流れで買ったものです。ホームズがかりの青年が大活躍するサイレント・コメディ。原題はSHERLOCK Jr.。このタイトルゆえに買ったようなものです。1924年作品。50分程度の作品ですが当時はこれでも“長編”に分類されています。日本初公開時のタイトルは《忍術キートン》、だそうです。 主演のペギラみたいな眠そうな目をした兄ちゃんがバスター・キートンBuster Keatonです。 彼こそ三大喜劇王(スリー・キングス・オブ・スラップスティックス)の一人にして、笑わぬ喜劇王。走る無表情。ザ・ストーン・フェイス。 1895/10/04に生まれて1966/02/01に亡くなっていますから、〈一人きりの自転車のり〉、〈黒ピーター〉、〈ブルースパーティントン潜水艦〉なんかの事件が起こった年にお生まれになって、私が生まれたときにはまだご存命だったんですね。へーぇ。 スラップスティックでストーリィを紹介しても意味がないので、省略しますが、印象に残るのが彼が“入門書を読んで名探偵になろうとしている”こと。なんだかすごくプラグマチックじゃないですか?これ。アメリカ人の書いたもどきホームズのパロ/パスには通信講座で探偵になっていうのがあったですよ、たしか。 三大喜劇王の中でトーキー以後に勝ち残ったのがチャップリンだけだったのでチャップリンの方が高く評価されていますが、トーキー以前の作品に限れば、チャップリンよりもキートンだと思うんですが(で、キートンよりもロイドだと思うのですけど)。 初歩的な特撮、いや人力SFX!これがが演出が良さもあってのでかなり楽しめます。あの一瞬の変装術のみごとなこと!しかしキートンってば走ってばっかし。 あの美しい端正な無表情は、考えようではかなりホームズっぽいような気がしないでもないです。 シャーロッキアン的には評価なし。でも、古い「トムとジェリー」で笑える人なら、一見の価値はあります。************************ちなみにこの映画で令嬢の父親役の小父さんはキートンの父親だそうな。
2003年04月23日
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ここしばらく体調が優れないのですが、どうやらウイルス性の風邪がお腹に廻ったようです。***************** さて、リアリズムの古本屋[2003-04-11日記参照]で買ったミステリマガジンのバックナンバーから拾い読んでいます。 本日読んでいますのは、シャーロック叔父さん》 ミステリマガジン1987年9月号通巻.377号収録。原題はMy Dear Uncle Sherlock。作者は ヒュウ・ペンティコースト Hugh Pentecost。翻訳は嵯峨静江。 ホームズもどきものに対して、ホームズがかりもの、とでもいいましょうか。神憑り、ではなくてホームズ探偵憑り。ホームズ物語からインスピレーションを得て書かれ、なおかつホームズ探偵やもどきの登場しない作品、と定義すればいいのでしょうか。もどきとかかり。もどきは得意ではないです。 ただ、このお話でのホームズ役、ジョージ・クラウダー氏の人物描写は「すらりと上背のある骨ばった姿」といい、「冷徹なまでのひややかさをおびた」瞳といい、なかなかホームズ風。 この描写が現れるのは解決編に当たる法廷シーンです。それまで主要登場人物のセリフや回想のみの存在だったのが、実にカッコよく登場します。「できればわたしがウィリアム・レジットの弁護を引き受けましょう。報酬の有無には関係なく」 もちろんミステリなので題材は殺人事件なのですが、この作品は大変に心温まる筋立て。私の好みです。 子供が出てくる法廷ものという点では先にご紹介した《ホークスヴィルの決闘》が思い出されます。 この短編の表題はタイトル扉と目次ともに“叔父さん”ですが、翻訳中の描写や表記は“伯父さん”になっています。手元の資料によると《ボクのホームズ伯父さん》のタイトルで水沢伸六さんの訳で日本版EQMM1960年5月号通巻47号に収録されているそうです。 校正ミスか?確信犯か。多分、前者ですね。こういうことは実見しないとわかりません。評価★★ シャーロッキアン的には“吠えなかった犬の謎”と付された副題のとおりの〈銀星号事件〉がモチーフになっています。トリック自体はちょっと苦しいのですが、ホームズ伯父さんことジョージの法廷シーンがかっこいいので許す。この話を入れたアンソロジーが読みたいなあ。
2003年04月21日
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天気がいいような悪いような。こういう日にはひねもす読書。************************ この本は所用で中央線沿線をうろついていて見つけた古本屋さんで買いました。「ああ、汚いホームズ本だなぁ」と何の気無しに手にとって、表紙を見てビックリなにしろ“ズムーホ”。で、作ルイド・ンナコ、譯一武池菊とくるのでございますから。 何しろ古い本だモノでタイトルが左から右に書いてあるだけなのですが、かなり驚かされせられました。もちろん本当はもちろん《シャーロック・ホームズの冒險》です。 岩波文庫。初版は昭和十一年の十二月。私の手元にあるのは昭和十三年六月の第三刷です。 昭和十一年、一九三六年というとベルリン・オリンピックの年。その十二月というと“王冠を賭けた恋”エドワード八世が退位してジョージ六世が戴冠したとき。もう既に歴史の一部分ですね。ちなみに昭和十三年(1938年)は《モダン・タイムス》が公開されて、オーソン・ウエルズのラジオドラマ《宇宙戦争》でパニック発生(10/30)などなど。 古本市で《昭和家庭史年表》(1990年の河出書房新社刊。ISBN4-309-22178-5)を買ったもので、ついつまらぬ引用をしてしまいました。エヘヘ。 これくらい古い本ですと旧カナ使いの字面と言うだけでも雰囲気が違いますが固有名詞の表記なんかも違います。一番大きいのは ウォットサン、でしょう。私の見慣れたワトソンとは大違いです。ウォットサン。 この本、タイトルは《冒険》ですが訳出してあるのは5つの事件記録に過ぎません。これをサギというかイイトコとりと取るかは個人の自由です。 収録作品 〈獨身の貴族〉 〈碧い紅玉〉 〈ボスコム谿谷事件〉 〈赤髪者聯盟〉 〈ボヘミヤ事件〉 面白い構成です。 発表順でもなければ、発生学説順でもない。ワトソンの結婚の話が結末に来ているところなんか、この本全体として《四つの署名》みたいな構造になっています。 生真面目なシャーロッキアンからすると“改悪”以外の何ものでもないのでしょうが、これはこれでなかなか新鮮です。選者はホームズ物語に対して独自の理解があったのでしょうか。***************************昭和37年に改版されて仮名遣いが改まったのとともに配列も変わってしまいました。〈碧い紅玉〉〈まだらの紐〉〈赤髪連盟〉〈ボスコム渓谷事件〉〈ボヘミヤ事件〉〈独身の貴族〉この配列の転換も謎です
2003年04月20日
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リアリズムの古本屋[2003-04-11日記参照]で買ったミステリマガジンのバックナンバーを読んでいます。 ミステリマガジン1987年9月号通巻.377号掲載。原題はA Cace of Facsimile 。作者はヴァイオラ・ブラザーズ・ショア(Viola Brothers Shore)。翻訳は長野きよみ。 ホームズもどきもののパロディ/パスティシュです。もどき探偵の出てくる話は読むのが苦痛であることが多いのですが、これはそうでもありませんでした。 登場するのはシャーリー・ホームズ、ジーン・ワトソン、サマンサ・スペイド、その他イロイロ。どこかで見たようなお名前のオンパレード。これが皆、ベイカー・ストリート学寮の女子学生さん達。多分ハイスクールでしょうか。 翻訳文がかなり読みづらいのですが、これは翻訳のせいなのか、それとも私がミステリファンではないからか。 事件が一体何に「そっくり」なのかは、勘のいいシャーロッキアンならすぐに判ります。探偵役のシャーリー・ホームズ嬢曰く「昔からよくあるケースだわ、ワトシー。私の父の冒険の中にそっくりなのがあるの。細部がほんのちょっと違うだけ」 まったく太陽の下新しきことなし、です。でも、この手で行けば60編全部贋作を仕立てられるんですな。面白いかどうかは別ですが。評価★ まあ、話の種に読んでおけばイイという程度。************************ パロディ/パスティシュというコミカルな分野にあるので判りにくいことですが、元ネタの事件もこのお話でも動機はお金に対するあさましい欲望です。 死ぬよりは、という見方もありますが、それでも「渇しても盗泉の水は飲まず」の気概は人間たるもの持ち続けたいもの。しかも、大抵は生きるために盗むのではなく、遊ぶ金のため贅沢のために貪るのですからやりきれません。 こんなこと考えはじめると、ブンガクは愉しめないです。
2003年04月14日
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リアリズムの古本屋[2003-04-11日記参照]で買った昭和62年の9月。もう15年ばかりも前のこと、と考えるとどっと老け込んでしまいます。 この号ではシャーロック・ホームズ生誕百年記念として特集が組まれています。なかなか読みでがありますね。収録作はパロ/パスばかりです。《そっくりな事件》原題は A Cace of Facsimile 。作者はヴァイオラ・ブラザーズ・ショア(Viola Brothers Shore) 。翻訳は長野きよみさん。《シャーロック叔父さん》原題は My Dear Uncle Sherlock 。作者はヒュウ・ペンティコースト(Hugh Pentecost) 。翻訳は嵯峨静江さん。これはいいお話。《第二の“まだらの紐”》 原題はThe Return of the Speckled Band 。作者はエドワード・D・ホック(Edward D. Hoch) 。この人結構ホームズパロパス書いているな。翻訳は菊地よしみさん。この話は新冒険に「まだらの紐の復活」として高橋 豊さんの訳で収録されています。 《ホック氏の知られざる対決》」 加納一朗 さん。《紫禁城の対決》の頭のとこ。これを書いた時点で長編にする気があったのかなかったのか。未検証です。《シャーロック・ホームズの口寄せ》 清水義範 うー、満腹。と言いたいんですが、夜店のヤキソバみたいにすぐ小腹が空きそうなのは何故でしょう。 それぞれの作品は短編集に収録されたモノも少なくありませんが、未収録のものはまず間違いなく単行本化されそうにないものばかりです。決して面白くないわけではないのですが。
2003年04月13日
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以前から探していたのですが、この度やっと本棚に挿すことができました。甘木夫人ありがとうございます。今度、ケーキセットご馳走しますね。さて。************************《シャーベット・ホームズの冒険》 サイナン・ドースル 著 三菱文庫 裏表紙の解説は、事件の手がかりは、ボールペンで書かれたメッセージただひとつ。その軽い書き味の秘密は何か。そして、エクシードの魅力とは…。お馴染み、クールでスイートな探偵シャーベット・ホームズが、親友ワッフル博士と大活躍。水性ボールペンのごとき軽快さで、物語は一気に、鮮やかなクライマックスを迎える。 訳知りの方も多いと思うのでさっさとはっきりさせてしまいますが、これは本ではなくて文庫本型のノートです。 三菱鉛筆がかつて高級水性ボールペンのエクシードEXCEEDを発売した時に販促用に配布?したノベルティの“文庫本ノート”の一冊。。 三菱鉛筆はこの種のノベルティに面白いのが多くて、確かコンサイスサイズの辞書風のノートなんていうのもあったと思います。 だからこれはは“本”ではなくて“グッズ”、です。 でも、なんちゃってホームズの文庫本風の造りのセンスが絶妙なので、これを本ではないと切り捨てるのも忍びないので。 私は例えば《ワイルドとホームズとサロメのレヴュー世界》[2003-1-14日記参照]なんかに“背表紙本”という言葉を使っているのですが、この“本”なんか背表紙本の極北に位置づけてしまいます。************************ ちなみに腰巻きによれば《シャーベット・ホームズ》は“三菱文庫”の4巻目で、1巻目はルック・キャンノットの《不思議の国でアリマス》。以下、2巻 《第4の学》 ワラッテル・フォーサイエンス3巻 《吾輩はおサツである》 薩目即席5巻 《赤と黒でぶどう色》つまり“文庫本ノート”は5冊あったわけです。
2003年04月12日
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例えばバスや電車から雰囲気の良さそうな古本屋見かけることとか、ありませんか?車窓をすぅーと横切っていくオイシそうな店構え。 そういうときに限って、仕事中だったりして途中下車ができない状況だったりいたします。 私の場合にはそういうときにはなけなしの動体視力を動員してどの辺りか見当を付けて、後日足を運ぶようにしています。同乗の知人に言わせると、ビクッとしたかと思うと、窓の外を食い入るように眺めてあわてて手帳に何事か書き付けるので、すぐに判るそうです。 さて、本日行きましたのは浅草の待乳山聖天の横手あたり。 以前に会社の接待のお供で通りかかったことがあるところです。イエローページには載っていない古本屋さんの地図にも載っていない。実地踏査しか方法がないわけです。 見覚えのあるあたりに辿り着いてみると。 日除けのテントはズタズタのぼろぼろ。 ほこりで曇ったガラス戸の向こうには天井まで積み上げられた本の山がうっすら透けていて。まるでマンガのよう。リアリズムの古本屋です。「すいませーん、拝見させてくださーい」「はい、どーぞ」 通路というか本の隙間は僅かに25センチ弱。身体をこう、横にしてカニ歩きしないと店に入れないのです。 分け入ると背中が本の山をこすります。 胸で本をなぎ倒さないようにするのが一苦労。「何かお探しですか?」 お探しっていっても、棚の前にも本が天井まで積んであるので、探しようがないのです。何冊か頼んで出して貰って買い求めたのが、《シャーロック・ホームズの大学》。状態のかなりイイものが1500円!他にミステリマガジン1987/9 .377号など数冊買って2000円ほど。安い! 店を出て友人と落ち合ったら、私の上着のボタンのあたりを指さして、笑いやがります。見下ろすと本のほこりで真っ白。やれやれ。
2003年04月11日
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この本は先日《エマ》の2巻を買ったときに一緒に買いました。文庫です。 ヴィクトリアンの参考図書のつもり。こういう本は大抵面白くないことが多いのですが、この本はなかなかインタレスティングな本でした。 さて。************************ 1898年8月15日。ホームズ探偵が《踊る人形》事件を解決した翌月のことです。 ロンドンで若者集団による暴動が 同時多発的に発生しました。この騒乱の主役たちがいわゆるフーリガンです。言葉としては昨年のワールドカップを機会に日本人の馴染みができました。 犯罪としては極めて粗暴で乱雑つまりは非ホームズ的なためでしょうか、聖典から読みとることの困難な社会現象の一つです。 で、このフーリガンの発生とその背景とその対策について平易に論じているのがこの本です。 著者は井野瀬久美惠先生。大英帝国をキーワードに歴史学的な視点でのご著書があります。ヴィクトリアンに関心がある方なら、一冊二冊はこの先生の本をお持ちなのではないでしょうか。 しかし、フーリガンを論ずるときのキーワードが 「ミュージック・ホール」(<これは井野瀬先生お得意の分野でもあります) 「国民の退化」 「ボーイスカウト運動」であるとは思いもしませんでした。すごいすごい。軽い知的興奮を覚えますね。 で、特に「国民の退化」からは「ボーア戦争」、「ボーイスカウト運動」からは「ベーデン・パウエル」とキーワードが伸びてきます。 ヴィクトリアンの末期のことがらは何もかもが「ボーア戦争」に繋がっているようです。キーワードとしてホームズ物語のなかで直接に関係があるのは《白面の兵士》くらいですが、実はシャーロッキアンとしても外せないキーワードの一つです。 読んでいて、思われるのはいまどきの日本のバカガキ共とそれを取り巻く状況。19世紀末の英国とちょっと似ているのが、面白くもあり、イヤでもあります。そういえばボーア戦争と英国の関係は、ベトナム戦争と米国の関係に似ています。 いやー、歴史っていうのは面白いものですね。************************ 評価★★★ 知的好奇心のあるシャーロッキアンは買ってソンは無し。でもホームズ物語の出番があまりにも少ない(一箇所だけ。〈美しき自転車乗り〉を引用しています)ので★減らしました。 この本のスペックは、出版社:中央公論新社。ISBN:4-12-203373-X 発行日:1999年3月。この文庫版が出た時期といい、タイトルといい(副題に、「子どもたちの大英帝国」と入っています。これはハードカバーの時のタイトルですね)、なんか狙っていますね。 ちなみに価格:838円+税 なのですが、私は自由価格本で買いました。 こんないい本を廉価で買えたことは嬉しいのですが、この本を大勢の人が新刊書店で手軽に買うことができないのは残念なことです。
2003年04月10日
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昨日からの引き続きで、ヴィクトリアンを舞台にしたコミック《シャーリー》、です。 出版は《エマ》同様にエンターブレイン。ISBNは4-7577-1313-4。価格は620円+税。作者は森薫さんです。************************ 《シャーリー》。《エマ》よりは安心して読めました。 腰巻きの惹句によれば中身は少なくとも悲しいお話ではなさそうなのが、読む前から見当がついたものですから。(「悲しい話やハッピーエンドでない話はイケマっせン。人生と世界がこれだけ苦渋に満ちているのですからせめて読むもの位はハッピーでないと!」と友人Zは力説します。私も同感です。) ヴィクトリアン・ロンドンに「カフェ」があるのか?とか比較的クラースの高い(ように思われる)未婚の婦人が接客業をするのはリスペクタブルなのか?といったヴィクトリアン的な疑問は多少感じますが、だからといって作品をケナす理由にはしたくありません。面白いからイイとしましょう。 作者は物語を、お話しを紡いでいるのであって、クダラナイ現実をトレースしているわけじゃないのだから。 収録作品は〈シャーリー・メディスン〉、〈僕とネリーとある日の午後〉、〈メアリ・バンクス〉。友人Zによれば〈クレールさんの日常茶飯事〉が収録されていないのは何故だ!ということになるようです。 全作品これ作者の思想(メイドスキー)全開なのだそうですが、趣味全開にありがちな中身のハタンもないのがスゴイですね。 ちなみに草敷の好きなのは〈僕とネリーとある日の午後〉のメイドさんのノーマ。マリリン・モンローが好きなもので。またこの本の表紙が気が利いていて。登場するメインキャラクターが上手に収まっています。 でもなぁ、相変わらずホームズ探偵もワトソン博士も出てこないのは、何故なんだろう?不思議です。************************ どうやら本日の早朝?にエンターブレインの方にご訪問を頂いたようです。2003-04-09 02:37:09 *.enterbrain.co.jp2003-04-09 02:29:32 *.enterbrain.co.jp ご訪問、ありがとうございます。 だからというわけではないですが。私、草敷は本ホームページ上で森薫さんを応援します。ま、蟷螂の斧、とも言いますが。
2003年04月09日
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