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ホワイトボードをびっちり埋めつくした予定は、僕にとって肉体的な拘束と苦痛を意味する反面、精神的には安らぎである。また、仕事だからと、身の回りのあれこれをおざなりにするのも嫌である。要するに、僕は愚痴をこぼしながら忙しい自分を楽しんでいる。先週、僕は冒険をした。2週間かけて2日間分の空き時間を造り出したのだ。段取りを整え、客先に偽りの途中経過報告をし、事務所を空にした。密かにバスツアーに申し込みをし、この工作には女将が加担してくれた。忙しいはずの平日の昼前に、何と僕は遠く淡路にまできていたのだ。大鳴門橋を渡ったところでお昼を食べ、一人でうず潮を観ながら不思議な気分だった。鳴門から徳島自動車道で四国を横断、ぼちぼちと隣の席の61才のお父さんと話し始め仲良くなれた。高校野球の名門池田高校のあるインターで下道におり、渓谷美が素晴らしい大歩危(おおぼけ)の景色を楽しみ、やがて平家の落人伝説が残る高知県の新祖谷温泉に着いた頃にはすっかり仕事を忘れていた。混浴の露天風呂に先のお父さんとたった二人きり…、やはり現実を実感。(笑)次の日は高松自動車道で四国を縦断し、坂出から瀬戸大橋に乗った。四国も初めてだったが、やはり初めての瀬戸内海の景色は、ぽつりぽつりとほうぼうに島が浮かび、行き交う船も多く絶景だった。隣のお父さんが実に博識で、あれこれ解説してくれ僕は旅が数倍楽しめた。ぼちぼちとこの人が現役時代、この橋の建設に関わったエリートだと判り納得した。バスは橋を渡ってこれも初めての倉敷に入り、僕的には一番の目的だった大原美術館に到着。本物のモネの「睡蓮」、クルーベの「波」、クリストのエスキースなど感激の対面ができた。帰りの車中、お父さんに「睡蓮」のハンカチをプレゼントした。そうしたら僕の写真を撮ってくれた。焼き上がったら送ってくれると言う。誰も知らない、あってはならない空白の旅の証拠写真。多分、誰にも見せることなどないだろう。そっと机の奥にしまって、たまに出しては大切な想い出にしたいと思う。
2005年10月20日
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