草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2016年08月07日
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 白眼の大部分を覆っている、青い翳が、心なしか濃さを増しているように見える。今

彼女は何故、「神」の問題に強い関心を示し、人間の生命の尊さに想いを致すように、

なったのであろうか?それは、彼女の母親と某かの関連を、持っているのであろうか…、

眞木の直感では、母親の不行跡と密接な繋がりが、あるように思えて仕方がない。一度

少女の母親に会ってみる必要が、あるのではあるまいか、否、何となく会ってみたい誘惑に

駆られる。すると、男好きのする、淫らな目つきの母親らしい女の表情まで、想像できる。

そして、今度は、是が非でも少女の母親に面談しないではいられない、気持ちに囚われ始め

ている、しかし、どのような理由があって、クラス担任でも無い教頭の自分が、家庭訪問する



若い尾崎などは、どのような事を言いふらすか、分かったものではない。生徒たちへの示し

がつかない結果にもなり兼ねない、そして、変な噂が万が一妻の耳にでも、入ったならーー

想像するだに恐ろしい、眞木は思わず首を竦めて、妄想を追い払うように、頭を小刻みに

左右に振った。

 ーーー それは薄暗い間接照明のなされた、地下の喫茶店のような場所であった。稍古風な

西洋の貴婦人が冠る様な、黒い絹の帽子を頭に戴いた、若い女が、伏し目がちに眞木の前の

椅子に座っている。彼は強い緊張と、照れ臭さを紛らす如くに、やたらと紫煙を口から吐き出し

ている、一廉の紳士たるもの、レディの面前で、こんなにも莨の煙をプカプカやっては、礼儀

を失してはいないだろうか…、第一、彼は烟草を吸い出す前に、一応先方の許諾を得ていたか

どうかさえ、不安になっていた。が、どうあっても、プカプカやることを、止める訳には行かない。

 女は相変わらず、眞木が何か言い出すのを、待っている様な態度で、黒い睫毛を、ピクリとも



眺めている。この女は何者で、自分はどのような目的で、この女に会っているのか?プカプカ

やっている彼の心に、そんな疑問が、今更のように突然に湧いた。で、幾分意識的に相手の顔の

特徴などの観察に取り掛かった。しかし、どう見ても、その女の顔には、見覚えがないのだ。きっと

人違いか何かの、手違いが生じて、この様な窮屈な羽目に、陥ったに相違なかった。眞木が

そう考えて、何か言い出そうとした時、女が形の良い唇を動かした。



重ね誠に申しわけなく思って居ります」

 眞木は、自分の想像と、現実に目の前に座っている人物とが、余りにも違っていることに、

驚きを感じた。そう言えば、どことなく佐々木法子の面影に、似通った所があるようにも思える

のだが、彼には何と言っても、男出入りの激しい三十女という、先入観が強すぎた。

 「私はただ、娘をあの性悪な男の毒牙から、救い出したい一心だっのです。か弱い女性の身と

しましては、ああするしか道がなかったので御座います、どうぞ、その辺のところをお含み

頂いて、寛大な御処置を、教頭先生からも警察の方にお口添え下さいますよう、宜しくお願い

申し上げます」と、法子の母親は、恐縮し切った物腰と口調で、彼に哀願するのだった。日本人

離れした肌の白さが、悲しみの為に、一層青褪めている。殆んど化粧品の気配を感じさせない

素顔の如き自然な美しさが、中年男の心を惹きつけて飽かせない。まるで天女の様な、美しさ

ではないか!普段の眞木からはとても信じられないような、ロマンティックな感想を、抱懐

せしめるに足る、清楚な艶やかさを実際、女は身辺に漂わせていた。

 眞木は為に、益々、困惑の度を、強めた。一体、事態をどのように了解したら良いのか?女は

具体的にはどの様な事柄について、釈明しているのか、又、自分の立場はどの様な物で、それに

いかに対処し、振舞ったら良いのか…、何か途方もなく頓珍漢な事を口にして、自分の無能を

曝け出したりしたら、こんなにも魅力的な婦人と二人差し向かいでいられる、この様な又とない

絶好のチャンスを、ふいにしてしまうことになる。眞木は臆病な癖に、人一倍欲が深かった。

どの様な理由からにもせよ、一度手にした幸運は、そう易易と手放したくはなかった。少しでも

長く、この魅力ある美人と、向かい合って居たかった…、それにしても、何か自分の方から言わな

ければならなかった。

 「法子君のお父さんの事なのですが、現在はどうして居られるのですか…」

 随分と不躾で、失礼な質問だとは思ったが、他に適当な話の接穂が見つからなかった。しかし、この

苦し紛れの問いが、意外な効果を、相手に与えた。





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最終更新日  2016年08月07日 10時46分14秒
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