草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2019年03月01日
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第 四百八 回 目

  「 古典に学ぶ 恋のテクニック 」

 時代:現代

 場所:都会

 ビルの一隅にある教室で、適齢期にある女性達を集めた婚活関連のセミナーが開催されている。

その中に、何故かババの姿もある。

 講師「私は男と女とは磁石のプラスとマイナスのようなものと、考えている。そして又男女の

別は普通に考える程には厳密に区別されるとも、思ってはいません。つまり、全体で円を形作る

半円同士なのだと、そう考えるわけです」



 講師「ですから、結論から申しますと、結婚に甘い夢やロマンを持ち込むのは厳禁なのです」

 生徒の1「それでは詰まらないではありませんか」

 生徒の2「そうよ、そうよ、夢やロマンがあるから生きられるわけじゃないですか」

講師「私から言わせれば、お二人のような非常に幼稚で甘い幻想を抱いて、結婚に臨まれるから

こそ、早々に破局が訪れる。謂わば自業自得なのです」

 生徒の3「誰だって女性なら、白馬に跨った王子様が自分を迎えに来てくれることを、心密かに

夢見、憧れている、期待している。それがいけないと言うのでしょうか」

 講師「いけないとは敢えて申しませんが、少なくともそこからは、センチメンタルな幻想からは

幸福はやって来ない」

 ババ「おセンチなのは、女性の特性だし、権利でもあるでしょうに」

 講師「ああ、そこに年輩のシルバー世代とお見受けする受講生がいらっしゃいました。貴女に



 ババ「吾はとても頭が悪いので、質問なんてされたら、答えに窮してしまいますよ」

 講師「いえ、いえ、何も難しいことをお聞きするのでは、ありません。貴女は一体この講座・セ

ミナーに何を期待されての出席でしょうか?」

 ババ「勿論、結婚ですよ。吾、自身の」

 すると教室中からフゥーという歓声とも溜息ともつかない声が上がっている。



の続きですが、結婚に過大な期待を持ち込むと、必ず手痛いしっぺ返しが返って来る。それを覚悟

の上で甘美な夢やら、美しい幻想に耽るのは勝手気儘。御随意にどうぞと申上げたい」

 生徒の4「結婚は人生の墓場だ、とでも主張したいのでしょうか」

 講師「どういたしまして、結婚こそ人生のハイライトであり、敢えて人生最高の晴れ舞台だと

申上げたい」

生徒の5「人生のハイライト、最高の晴れ舞台と仰いました。その意味を説明して下さい」

 講師「分かりました。結婚は人生の大事であります。だからこそ人は間違うのです。特別な相手

との、何かしら特別な出会い、例えば白馬の王子の出現とか、赤い糸で結ばれた二人とかの、極め

て乙女ティックな、おセンチな夢を織る事ばかりに関心が行ってしまう。だから、駄目なのです」

 生徒の3「でも、でも、結婚に踏み込むにはやはり、どうしてもそう言った夢やロマンティック

な要素が必要なのではないかしら。皆さん、如何ですか(と参加者の全員に同意を求めた)」

 生徒達は皆一様に「そうよ、そうよ」などと同意する。

 講師「私は皆様方のそう言ったお気持ちを、全面的に否定するものではありません。ただし、現

実は直視して頂きたい。そう申し上げたい」

 ババ「現実を直視しているから、夢や憧れが生れるのではありませんかね」

 講師「まさにその通りだと、私も思います。但し、夢は夢、憧れは憧れにしか過ぎません。肝腎

なのはその砂糖菓子の様に甘美な夢から醒めた時であり、ロマンティックな憧れが破れた際の事

なのであります。人生の大半は生活であります。結婚は新たな生活の場を築く土台と言え、恋愛は

そのきっかけを作るだけの意味しか持ちえません」

 生徒の1「恋愛は結婚の切っ掛けにしか過ぎない。だとしたら、恋愛の意味は小さくなってしま

う。そんなの詰まらないわ」

 生徒の2「私は一生恋多き女でありたい。結婚は二の次、三の次だわ」

講師「生き方はそれぞれに自由であると、一応は言えますから御随意にどうぞと申上げましょ

う、ただし後で決して泣き言を言わない事です。所が、人は十中の八九と言いたいが十人中十人が

まるで判でも押したように、後悔して、泣き言を言う様になる。人生とはそうしたものです」

 ババ「(傍白)確かに、そうかも知れない」

 生徒の3「そう言えば、私は後悔ばかりしている」

 生徒の4「私も、泣き言や愚痴ばかり始終口にしているわ」

 講師「何だか、私の注文通りに事が運んでいて、怖いくらいです。いや、その実に好都合なの

で、先を続けさせて頂きますが、私の様な者が必要になり、適切な指導が必須なわけであります。

さて、今回のテーマ 古典に学ぶ恋のテクニック についてです。一言で表現すれば、包み隠す

と言う事になります」

 生徒の5「包み、隠す、ですか?」

 講師「その通りです。オープンにしたり、曝け出したりすることの反対の事柄ですね」

 生徒の1「何だか悪い事をした犯罪者みたいですね、包み隠すだなんて」

 生徒の2「私は何事でもオープンな方が好きだわ。隠すだなんて、後ろ暗い事をしている証拠

みたいで嫌だ」

 講師「どの様な事にも、裏と表、長所もあれば短所もある。この道理はお解り頂けますね。さて

そこで、古典の教える 包み、隠す にも当然に良い面や悪い面があると思われますが、此処では

表のよい面、プラスの側面に注目して頂きたい」

 ババ「(独白)成程、この人は口が上手い」

 生徒の3「包んだり、隠したりに一体どのような利点があると言うのですか」

 生徒の4「まるで訳が解らないわ」

 生徒の5「本当よ、詭弁に類する事を押し付けるのかもしれない。騙されないように用心しなけ

れば」

 講師「現代の 露出する 習俗・習慣とは真逆にある考え方なのです。つまり、男性に女性を

強く注目して貰いたいので、一定の年齢に達した女の子は深窓に、奥まった場所に包み隠すように

して養育する。そして様々な教養や嗜みを教え、いやが上にも成人男性から魅力ある存在として

育て上げるわけです」

 生徒の1「恥ずかしいとか、人目につくと具合が悪いから人目を避けるのではなく、逆に人目を

集め、注目されたいから包み隠す。そいうことですか」

 講師「そうですね、中々老獪で、大人のやり方だとは思いませんか」

 生徒の2「思います、とても頭がよいやり方だと感じます」

 講師「そう素直に肯定して頂くと、ちょっとばかり拍子抜けです。実はここだけの内緒の話なの

ですが、私は現代の露出する傾向の方が大好きなのです、ひとりの男としては。少し古くなります

がマリリンモンローのセクシーな腰振り歩きや、バストの抉れた露出が堪らなく好きなのです」

 ババ「(独白)この人、なかなか正直な所もあるんだ。スケベな男の本音を言ってしまうくらい

だから」

 講師「ただし、刺激というものは段々とエスカレートするものです。そして仕舞いには何も感じ

なくなってしまう懼れが大です」

 生徒の3「確かに。お化粧にしても次第にどぎついものに流れていく」

 生徒の4「水着などの露出度も大幅にアップされ、結局は見慣れてしまうと刺激もあまり感じら

れなくなっているのかも…」

 生徒の5「確かに習慣の力は恐ろしい程に強いのかもしれないわね」

 講師「前口上はこれくらいにして、私の主張を申し上げることに致します。こうです、つまり

結婚において一番大事なことは結婚するそのこと自体なのだと言う事です。相手など、極論を

言えば誰でもよいのです」

 「えーっ、何ですって」などと生徒達の間から不平や不満の声が一斉に上がった。

 講師「最初に私は、個人を半円に譬えました。半円はパートナーを得て始めて曲がりなりにも

完全な円になる事が出来る。真に生活が出来る、謂わば態勢が整うのです。確かに半円同士ですか

ら最初からぴったりと一致するとは限りません。相手に合わせる微調整のような仕事が残っては

いますが、これは両者の誠意ある努力によって解決が可能であり、現実に幾多のカップルがそうし

て来ている」

 生徒の1「理窟はそうかも知れませんが、それでは余りにも味気ないと言うか、詰まらないでは

ありませんか」

 生徒の2「そうよ、そうよ。そんな、相手は誰でも構わないような言い方をされては、結婚しよ

うという意欲さえ湧かないわ」

 講師「それでは私の方から質問しますが、そこの貴女、そうです貴女です。貴女はこの世に何か

特別な目的があって生まれて来たのでしょうか?」

 生徒の3「別に、何か特別の目的と言われても…、そんな事あたし考えた事も無い。あなたは、

如何なの?」と隣の生徒に振った。

 生徒の4「私だって同じよ。そんなこと、思ってもみなかった」

 講師「私が今とても意地の悪い質問をしたのは、皆さん方を困らせるのが目的ではありません。

目的などという特別な目標も無く生きているのが、普通の私達の生き方であります。それは、例え

ば良い学校に入りたいだの、評判の高い一流企業に入社したいだのと、当座の目的やらゴールのよ

うな目標を掲げて頑張るという事はありましょう。しかし通常は幸福という非常にボンヤリとした

目標とも理想ともつかないものを目指して生きている。それすら持たずにとも角も惰性の様に生き

ている人も少なくない。そうした人生に於いて人は何故に、結婚にだけ 特別 を求め、過大な

要求を突きつけるのでしょう」

 ババ「それが知りたいので、吾はここに来たようなものですよ」

 生徒達は口々に「そうよ、そうよ」などとババに同調する。

 講師「分かりました。人生を幸せに生きるためには、それ相応の準備が必要であります。半円で

居るよりは半円同士が自分に相応しいパートナーを探して、一個の完全な円になる事が必要です。

高学歴とか容姿端麗とか、性格が善いとか、その他様々な高い要求を結婚相手に要求する。それは

各自の勝手でありましょうが、一番大切な事が忘れ去られている。俗に相性と呼ばれている。要

するに気が合えばよい。気などは合わせようと思えば誰とでも大概は合わせられる」

 生徒の5「暴論です、そんなの」

 生徒の1「結婚相手は気が合えば誰でもよいなどと、そんなの厭だ」

 生徒の2「こんな講座は受講しなければよかったわ」

 生徒の3「夢が無さすぎでしょうに」

 生徒の4「がっかりだわ、本当に」などと教室は騒然としている。が、講師は何故か平然として

いるのだ。


 数日後。いつもの公園でババとジジがベンチに腰を掛けて仲良く日光浴を楽しんでいる。

 ジジ「ところで、先日は又何か勉強をしに出かけたようだけれど、収穫はあったの」

 ババ「ああ、その事。有ったと言えば有った、無かったと言えばなかった」

 ジジ「何だか禅問答を聴いているようだね」

 ババ「禅問答みたいな難しいことを吾が、頭の悪い吾が知っているわけが、ないでしょうよ」

 ジジ「そうでないよ。あんたは自分が考えている以上に賢いと、俺は思うよ」

 ババ「そう言うおめえの方が、ずっと頭がいいよ。吾、そう思う」

 ジジ「有難う。俺、あんたから褒められるのが一番嬉しいから」

 ババ「そうやって、おめえが吾に上手い事合わせてくれるから、吾達は気が合うのだよ、きっ

と」

 ジジ「うんにゃ、そうでないの。あんたが俺に上手く合わせてくれるから、吾達気が合うんだ」

とババの顔を見てニッコリと笑った。ババもジジの顔を見て優しく笑いかけた。倖せその物の二人

である。


                            《  完  》





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最終更新日  2019年04月08日 09時46分36秒
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