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2019年03月27日
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第 四百十九 回 目

サンプル・ストーリー の 三


     時代劇 「 ひらに、平に 御容赦を 」

 時代:江戸の中期頃

 場所:江戸の町とその周辺

 人物:清川平四郎(浪人)、紫頭巾の武士、長屋の住人たち、狼藉を働く悪人ども、その他


  プロローグ

 冬の夜である。「火事だ―ッ」の叫び声、カーンカーンと鳴り響く半鐘の音。或る藏屋敷の蔵が

火元らしい。昼間は大勢の人で賑いを見せる大通りであるが、先程までは人影がぷっつりと途絶え



 時間経過。 火元に近い呉服屋の店先にも既に人だかりが出来ている。呉服屋の奥座敷も先程か

ら火が廻っていて従業員達が大童で商品や手荷物などを店の外に運び出している。

 やがて、従業員の誰かが「お嬢様が、奥座敷で逃げ遅れて…、誰か助けて!」と店先に走り出て

来た。もう店全体が炎に包まれて手の施しようもない状態にみえる。誰もが驚き慌てているだけ

で、救助に向かう者はいない。その時であった、何者かが人混みの中から抜け出し、飛鳥の如く

店の奥座敷に向かって姿を消した…。店の主人夫婦にとって目の中に入れても痛くない幼い一人

娘が九死に一生を得て、無事に助け出された。

 これが清川平四郎が貧乏長屋の人気者となった経緯である。


  夏祭り

 お神輿を担いだり、山車を曳いたり、神社の境内には色々な仮設の出し店が賑やかに客達を

惹きつけている。するとその人混みの中から「うわーッ、喧嘩だ、喧嘩だ」と声が挙がった。祭り



雰囲気の中で、この血走った血気の若者グループの中に割って入った浪人者がいた。貧乏長屋の

住人・平四郎である。

 平四郎「あいや御両所、今日は目出度い祭礼の吉日、この私に免じて和睦して頂きたい」と、

両方のグループの先頭に立って殺気だって睨み合いをしていたリーダーの二人を、両手を広げて

制した。



 火消しのリーダー「邪魔だ、そこをどけ」

 平四郎「拙者は清川平四郎と申す浪人者。天下泰平の世を謳歌致す軟弱至極の卑怯な奴で御座

る、どうかこの場は拙者に免じて穏便に事を収めて頂きたい」

 火消し「邪魔だから、早くそこをどけと言っているのだ」

 鳶「そうよ、怪我をしたくなかったら、とっとと消えてしまえ」

 鳶も火消しも酒の勢いがあるので、火に油を注いだような形になってしまった。周囲を遠巻きに

した人垣も固唾を呑んで成り行きや如何にと、見守っている・

 平四郎「これ程に申しても聞き入れて呉れぬとあらば、已むを得ぬ…」と腰に差した大刀に手を

指し述べた。対峙する両グループ共に、緊張して一瞬腰が引けている。平四郎は鞘ごと大小の剣を

両の手で腰から引き抜くと、忽ち地面に平伏して、

 平四郎「これこの通りで御座る。浪人の身分に落ちぶれていても拙者も武士の端くれ、何卒、こ

の場は拙者の顔を立てて、怒りを収めて頂きたい」

 唖然としている両方のグループの面々。周囲の見物たちも呆気に取られている。

 やがて、あたかも潮が引くように青年たちはその場から一人、二人、三人と立ち去って行った。

  一膳飯屋の中

 客たちがさっきの喧嘩の噂話をしている。

 職人「一時はどうなる事かと肝を潰したよ」

 大工「本当よ。俺も喧嘩っ早い方だが、あんな向こう見ずな連中を相手には、早々に三十六計

を決め込むよ」

 物売り「それにしても、あの御浪人さん、年は若いが中々人物が出来ている。大したものだ」

 職人「本当だね。見た所は腕の方も立ちそうな立派な姿形だったな」

 給仕の小女「あら、平さんの事を知らないの。剣道の達人なんですよ」

 大工「そうか、道理で…」

 と、そこへ外の暖簾を潜って平四郎が飄然と姿を現した。そして奥の隅に腰を下ろし、

 平四郎「いつものあれを大盛りでお願いしようか」とお決まりの定食を注文した。


 お寺の庫裡の一隅(数日後)

 平四郎が時折開いている寺子屋で習字などを子供達に教えている。そこへ大工見習の三吉が蒼褪

めた顔色でやって来て、平四郎を中庭の方に呼んだ。

 三吉「平四郎さん、今日は折り入って相談したい至急の用があって、やって来たのです」と

涙を流しながら訴え始めた。事情は次のようなものであった。三吉が密かに恋心を寄せているおみ

つという今年十四になる気立ての良い娘がいる。平四郎と同じ貧乏長屋の住人で、父親と娘の二人

暮らしをしているが、この父親が腕の良い職人だが、無類の博奕好きで貧乏から抜け出せないで

いた。一週間程前に性質の悪いいかさま博奕に誘われて、莫大な借金を抱えてしまった。このまま

では一人娘のおみつを女郎屋に身売りさせないと、用心棒のヤクザ達に殺されてしまう。何とか

ならないだろうかと、三吉は実に生きた空もないと言った風情で話した。さすがの平四郎も「うー

ん」と言った儘しばらくは言葉も出せない。


  或る剣術指南道場の玄関(翌日の朝)

 神楽のお亀の面を付けた武士がやって来て、「頼もーっ」と声を発した。道場の門弟の一人が

「どーれ」と応対に出た。

  同・道場の稽古場

 門弟「それがし、師範代の森山と申す者。他流試合が望みと聞いた。先ず、お相手申そう」

 道場破り「拙者は海野お亀と申す。譯あってお面を付けての失礼、平に御容赦をお願い致す。

いざ」と手にした竹刀を肩に担いだ。相手の師範代は「むむ、無礼な」と怒りを露わにして相手に

突進したが、忽ちに竹刀を叩き落とされてしまった。

 道場の主「それでは今度は拙者が相手を致す。竹刀では手ぬるいので、木刀での立ち合いを所望

致す」

 道場破り「お断り致す。拙者にとって木刀は真剣も同様。拙者の目的は貴道場の看板を申し受け

ることにある。命の遣り取りでは御座らぬ故、竹刀での立ち合いを所望致す」

 道場の主「相分かった。しからば希望通り竹刀にて相手致そう。但し前以って言っておくが、儂

の流儀はいささか手荒いので、その積もりで」

 道場破り「望む所。いざ」と、やはり竹刀を肩に担いだ。

 道場の主「ええいっ、無礼者めがッ」と鋭く切り込んだが、忽ちに竹刀を叩き落とされてしまっ

た。「参った」と床に平伏する。

 道場破り「それでは約束通り表に掲げた道場の看板を頂戴致す」と玄関の方に歩き去ろうとす

る。道場主は慌てて門弟たちに道場破りを止めさせ、奥の座敷に案内させる。こうしてお亀の面を

被った平四郎の乱暴な道場破りは功を奏して、数日のうちに數十両という大金が集まり、三吉とお

みつの若い恋人は窮地を脱したのだった。しかし、これが後に思わぬ災難の火種になったのであ

る。


  大川端・隅田川に近い場所(一か月後)

 子供たちと釣りを楽しみ家路を辿る平四郎。茶店で団子などを食べて休憩する平四郎達を樹の陰

などから様子を窺う不審な武士の一団がいる。平四郎は素早くその気配を察して一緒にいた子供達

に先に帰るよう促すと、茶代を支払った後、子供達とは反対方向に何食わぬ風を装って、ぶらりぶ

らりと歩き始めた。

  同・林の中の道

 呑気そうに歩いて来る平四郎。と、ばらばらと四方から平四郎めがけて殺到する武士たちの集団

がある。その数はざっと五十人は居るであろう。

 武士の一人「待て、待て、暫らく待って貰おう」と平四郎との距離を置きながら編み笠を目深に

かぶった武士が声を掛けた。その声には異様なまでの緊張感が籠っている。

 平四郎「拙者でござるかの」とゆらりと足を止めた。

 別の武士「如何にも」

 平四郎「何用で御座ろうか」

 最初の武士「お主の命を貰い受けたい」

 平四郎「物騒な、人違いで御座ろう」と平然と受ける。と、相手は深編笠をかなぐり捨てて、「

この顔に見覚えがあろう」と決死の形相である。

 更に別の武士「拙者にも見覚えが有ろう」と刀の柄に手を掛けた。

 平四郎「ひらに、ひらに、ごようしゃをねがいたい」と謡う様に言葉に出しながら、脱兎の如く

斜め横の繁みの中に飛び込み、姿を消した。武士たちは口々に、「逃すな」、「油断するな」、

「相手は袋の鼠も同然、慌てる必要などない」などと叫びながら抜刀している。しばしの静寂。

突如、木の上から鳥のように舞い降りた人物がいた。紫の頭巾に面を隠した謎の剣士の登場であ

る。この後は詳述する必要もないので簡潔に描写しよう。

 瞬く間に十数人がなぎ倒されていた。それを見た残りの武士たちは潮が引くように一斉に姿を

消していた。紫頭巾の見事な剣さばきで倒された十数人は皆一様に峰打ちであり、一撃で悶絶して

いたが命に別状はなかった。

この騒動の後、謎の人物・紫頭巾の噂は江戸の八百八町に広がり、一躍有名人の仲間入りをした

が、貧乏長屋で庶民と共に平和に暮らす清川平四郎の存在は、ごく一部の限られた人々の間でのみ

知られるだけであり、表立ってあれこれと穿鑿されることはなかった。

 この物語のファンにだけそっとお知らせすると、平四郎は生まれながらの天才的な剣士である

が、人間の赤い血を見るのが異常に嫌いであり、為に藩での自分の身分を棄て、気儘な浪人生活に

入ったのだが、持って生まれた優しい心根と強い正義感を抑制する事が出来ず、止むを得ない場合

に裏の顔・紫頭巾の力を借りて事件の解決を図るのであった。勿論、この事実は観客だけが知る

ことで、ドラマの登場人物たちは全く気付かない。故に、ドラマを楽しむ上では無関係な事柄で

あることを、念の為に申し添えて置く。

                        (  紹介編 完  )





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最終更新日  2019年04月01日 19時05分23秒
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