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例:工場である化学反応を進めていけば、化学肥料の原料ができる。化学反応式自体は合理的。しかし、その物質を製造していたチッソ水俣工場の排水が深刻な公害病を引き起こした。このように自然科学も「部分合理性」を追求しながら「全体非合理性」に陥っていく危険性をはらんでいる。
社会科学である経済学の領域でも同じ危険性がある。大まかに言って近代経済学は「数式を使って経済現象を解明する」ことをめざしてきた。深刻な社会的格差・貧困をもたらした「市場原理主義」なども「部分合理性」の最たるものだろう。
それまで 市場外だった問題を経済理論の中心に据えた宇沢弘文の立場は、そのような市場原理主義の対極にある。 宇沢弘文 は水俣市で活動していた細川医師とともに水俣病患者と接する中で「公害問題を経済学の課題として真っ向から引き受けること」を決意する。そうする中で最初に書かれたのが 『自動車の社会的費用』。この著書 の中で彼が展開した理論については 前記事 で述べた。

彼は、人命や環境に問題を生み出さないような「条件整備」に必要な社会的費用(それまで市場外に押し出されていた)を経済学の中心部分で扱った。そのためには当然、自然科学・社会科学の様々な分野の垣根を超えた考察が必要となる。部分合理性から全体合理性へ経済学を拡大する方向で踏み出していくわけだ。
さらに、この社会的費用の考え方は、 利潤を追求する企業だけでなく消費者にも責任を負わせることになる 。 気候変動への対策として 1990 年のローマ会議 で 宇沢が「各国の一人当たり GDP に比例させた税率の二酸化炭素税 」を提唱する論文を発表したのもそのような観点からだ。ちなみにこの論文は米国では不評だったが、欧州では高く評価され、 1991 年にはスウェーデンで二酸化炭素税が実現したという。
この問題は、 消費税やガソリン税に関する私自身の考え方にも影響している。ガソリン税は廃止、消費税も減税か廃止というのが多数意見だと承知してはいる が、 私は別の見解を持つ少数派である。当面は、スウェーデンなど北欧の制度も参考に消費税を再編成する(例えば、非正規社員を雇用すれば給与・報酬は「外注費」として処理されるため消費税を節税できるような現状を改正し、食品などの消費税を減税する)のがいいのではと考えている。しかしそれでだけではない。基本的に 「二酸化炭素税」をしっかり打ち出す(ガソリン税や消費税を二酸化炭素税に組み替えていく)ことが大切だ というのが私の考えだ。これは、立憲民主党などよりもっと少数派の考えだろう。しかし、実際二酸化炭素の大幅な削減に成功した国々(北欧の複数の国やドイツなど)は気候変動対策のため、生産だけでなく消費も含め、社会的費用を負担しあっていく制度( 二酸化炭素税や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制 )を取り入れている。
〈参考〉
2019 年のスウェーデンにおけるガソリンの価格は平均 15.75 クローナ/リットル。(250円)
内訳を見てみると、
約 62
%はガソリン税(消費税や炭素税、エネルギー税)
で占められている。これは、気候変動対策や社会保障に使われている。
グローバルノート
-
国際統計・国別統計専門サイトより
確かに、「あまりに生活が苦しい、何とかしてくれ」という声に応えていくことは政治の大きな責任だろう。「格差や貧困を背景とする生活苦」に対して自己責任という名の「社会的無責任」に居直ってはならない。
しかしながら同時に、「五年間で二回も三回も床上浸水の災害に襲われるような環境」を次世代に残してはならないだろう。従来、気候変動の悪影響は発展途上国に集中しやすいといわれてきたが、急流河川ばかりの日本においても予測される被害はあまりに甚大である。
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