買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2019年04月23日
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カテゴリ: 読書
でも私が免色のようになることはない。彼は、秋川まりえが自分の子供であるかもしれない、あるいはそうではないかもしれない、という可能性のバランスの上に自分の人生を成り立たせている。その二つの可能性を天秤にかけ、その終わることのない微妙な振幅の中に自己の存在意味を見出そうとしている。しかしわたしにはそんな面倒な企みに挑戦する必要はない。なぜなら私には信じる力が具わっているからだ。
(村上春樹さん「騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編」P540)

村上 そういう物語の「善意」の根拠は何かというと、要するに歴史の重みなんです。もう何万年も前から人が洞窟の中で語り継いできた物語、神話、そういうものが僕らの中にいまだに継続してあるわけです。それが「善き物語」の土壌であり、基盤であり、健全な重みになっている。僕らは、それを信頼し信用しなくちゃいけない。それは長い長い時間を耐えうる強さと重みをもった物語です。それは遥か昔の洞窟の中にまでしっかり繋がっています。
―― 神話や歴史の重みそれ自体が無効になっているとは思いませんか、村上さん。それらが保証する善性のようなもの、それ自体が。
村上 全然なっていない。
(村上春樹さん×川上未映子さん「みみずくは黄昏に飛びたつ」P337)




「みみずくは黄昏に飛びたつ」の第一章は「職業としての小説家」、それ以降は「騎士団長殺し」刊行を受けての、川上未映子さんによる村上春樹さんのインタビューです。
結果からいうと、「騎士団長殺し」について、川上さんが相当攻め込んでおられますので、とても参考になりましたが、第一章のインパクトにはかなわないな、と思いました。第一章だけでも、少なくとも川上未映子という作家(村上春樹とちゃうんかい!)がどういう作家なのか知る意味でも、おすすめです。

肝心の、「騎士団長殺し」なのですが、久々に村上さんの作品にカタルシスを感じました。ここのところ、ちょっと消化不良状態が続いていたので、今回はとても満足です。


ところで、『1Q84』は終わってるのか問題について、 朝日新聞のこんなインタビュー を見ました。

――『1Q84』はBOOK3で完結なのですか。

『1Q84』と『ねじまき鳥』の共通点は、第2部まで書いて間を置かず第3部を書き始めたこと。作品としてまとまった。でも結論は出さない。『1Q84』は、三遊亭円朝の落語『真景累ケ淵(しんけいかさねがふち)』みたいな長い因縁話の一部なんです。天吾のお父さんやお母さんがどうやって出会ったとか、わからないでしょう。天吾と青豆の二人がコスタリカに行った後のこと、二人の娘のこととかも。話はできているんだけど。ジャズで和音の基音を省いちゃうのと同じで、空白を残したい。別の物語が不思議なトンネルでつながる曼荼羅のようなのは好きですね。



これこそ、『1Q84』の 「BOOK3」を読んだとき に、僕の知りたかったことなんで、こんなに簡単に聞き出しちゃってることに拍子抜けしました。やれやれ・・・・・。









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Last updated  2019年04月23日 22時47分43秒
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