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2006年10月16日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay

招鶴洞

 散策のついでに、一人で鎌倉文学館へ寄った。
 「今バラがきれいに咲いていますよ」
 受付で親切に教えてくれた。
 「そうですか。ありがとうございます」
 わたしは、礼を行って招鶴洞をくぐった。

バラ1

 花は大抵好きなのに、バラはあまり好きではない。
 棘があるからってわけじゃなく、昔からなんとなく好きになれないのだ。
 それなのに、百本のバラの花束を貰ったことがあった。
 交通事故で一月ばかり入院した時のこと。
 別れた彼氏が持ってきた。
 もう一度やり直さないか、と花束を抱えたまま、ぼそっと言った。
 「ごめん。それは出来ないわ」
 わたしは、譲らなかった。
 「そうか」
 深くうな垂れて、そのまま石のように動かなかった。

 どうしても忘れることが出来なかったから……。
 「ごめんなさい」
 わたしは泣きそうな声で、もう一度謝った。

 彼が去った後、病室は甘いバラの香りで噎せ返っていた。
 看護師をしている高校の後輩が、

 と、目を丸くした。
 「あげるわ。皆さんで分けて持って帰ってくれない?」
 病室には、真紅のバラは似合わない。
 それに、やっぱりバラは好きじゃない。
 彼女は花瓶に入るだけのバラを挿した後、残りのバラを嬉しそうに抱えて行った。

 だけど、バラがうんと嫌いになったとしても、別に彼のせいではない。
 わたしは、元々バラが好きじゃないだけなのだ……。 


 あの時のシーンが、目の前のバラと重なった。
 今を盛りに、艶やかなバラは見事に咲いていた。
 辺りに強い芳香を放ちながら……。





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最終更新日  2006年10月25日 00時27分58秒
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