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2007年03月08日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay



 母は晩年、書道と和歌をたしなんだ。
 中々の達筆で、何を今更習字なのだろうと不思議な気がしていたけれど、今になってその気持ちがよく分かる。
 わたしもやはりこの年になって、習字をやろうと思いたったからだ。
 母は、小学生に混じって近所の書道教室に通っていた。
 時折、赤字で直された作品を持ち帰っていた。
 それをへぇーと思って眺めたものである。
 元々美しい文字を書く人なのだから、その上達には目を見張るものがあった。


 たまに手紙でも書こうと思うと、手が震えてうまくかけない。
 ようやく書き上げてみると、稚拙な文字の羅列である。
 恥ずかしくて、とても出せるシロモノではない。
 だから、一念発起して文字を書こうと思ったのである。

 父に貰った有名な人が彫ってくれた硯は、実家に置いてきたので今は手元にはなかった。
 娘達の習字セットは、二人分あったのに、これも引越しのドサクサで捨ててしまった。
 いざ習い事を始めようとしたら、その道具を揃えなければならない。
 最低限のもので揃えたつもりだが、結構費用はかさんだ。
 そんな訳で、途中下車は許されない。

 丁寧に墨を磨った。

 心が落ち着いて、頭の芯がしゃんとした。
 母も、こんな気持ちで習字に励んでいたのかもしれない。

 思い切り、墨の匂いを吸い込んだ。
 母の思いと重なった気がした。







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最終更新日  2007年03月08日 22時22分54秒
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