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2006/08/16
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『CRONOUS』~眠らない大陸の物語~
第三章・第6話『-おとぎ話-』

決戦を明日に控えているせいかアイナは眠れなかった
とりあえず…フラッと街に出てみる

「何もかもそっくりなのに…静かだな…ココは^^」

そう言ってアイナは街を歩く
そして、噴水の公園に人影を発見する

「焔…さん?」

アイナは噴水のほとりに寝そべる焔を見つけてそう聞く



焔は寝そべったままくわえタバコで夜空を見ながらそうアイナに言った

「うん…わかってるけど…眠れなくて」

アイナはそう言う

「それじゃ、おとぎ話でも聞かせてやるか…」

焔はそう言ってムクッと起き上がる
アイナうなづきながらは焔のいるとこに駆け寄る

「この話しはな…ココとはまったく違う世界の話…神と魔族が住んでる世界の話さ…」

焔はそう言って話し始める
アイナは焔の隣に座る


『神と魔族の話』

神と人間が住む世界があった…

魔族といっても悪魔とかそういう存在ではなく
ある神が、決めたルールを破り翼を黒く塗られ…魔族と呼ばれるようになったれっきとした神の末裔の事

当然、神の世界の住人達と魔族達の仲は良くなく…度々大きな争いもあった
しかし…魔族の長が温厚な者にかわり平和になりつつもあった
だが、仲が良くなったわけではない…ただ争いをしなくなっただけである



しばらく続いた平和な時も残念ながらそう長くは続かなかった
魔族の中で争いが起き…戦いを好む者達の時代にまた変わったからである

大きな戦争になる…

それを危惧した温厚派の長は神々の元に戦争になる事を伝える為に若者を使者として送った
だが、神々の国に住む人間達は『魔族だから…』と理由でこの若者の声を信じようとはしなかった
魔族の若者は何日も神の住む神殿の門を叩いた

そしてついに魔族が攻めて来てしまった

この事に慌てた人間達は危機を知らせに来た魔族の若者を『偵察に来た者』と口々に叫び追い回した
争いを止めに来たのに…ここで戦うわけにはいかない魔族の若者は反撃をする事なくただ逃げ回った
しかし…神々の元に来てから食事もせず傷ついた若者は逃げ込んだ山の中でついに意識を失った

若者が気が付いた時…どこかの洞窟のような所に寝ていた
そして傍らには手当てをしてくれた女がいた
とても美しい女性だった

「ゴメンなさい…あなたが魔族だというだけでその言葉を信じずこのように傷つけてしまって…」

女はそう言った
魔族の若者は首を横に振り

「今は…どうなっている?戦争は?」

と、女に聞いた
国境の砦で攻防は続いているものの
神々の方が劣勢で数日中には落ちるだろう
女は若者にそう答えた

「魔族は人の姿から本来の姿に変態すると殺戮の鬼になってしまいそれは人間では止められない…それを止める事が出来るのは同じ魔族か神の祝福を受けた武器だけだ」

そう若者は言った

「夜にはまた来ます…ありがとう」

女はそう言って若者の言葉を伝えるべく去って行った
若者が女にそう言ったのは手当てをしてくれたお礼ではなく
人目で恋に落ちてしまったからである
若者は痛む体を起こし洞窟の外へと歩く
山の高台にあるのであろうその洞窟からは国の全貌が眼窩に見える
国境の砦からはいくつもの煙が上がり今すぐ落ちても不思議では無い状態だった
若者はさっきの女を守りたい…そう思った
そしてまた洞窟の奥に戻り片腕だけ魔族の状態にする

筋肉が隆起し五指の爪が鋭く伸びる

魔族になっていない左手で右腕の爪を剥がす
激痛が体中を走る
五指から爪を剥がし終えると
今度は左腕を魔族の状態に変え…同じように爪を剥がす

「我が魔族の魂よ…その力…この爪に与えよ!」

若者はそう言って剥がした爪に指から流れる血をかける
バラバラだった爪が怪しく輝き
爪は武器へと変貌する

「これなら非力な者でも…魔族と渡り合う事ができる…」

若者はそうつぶやき近くにあった包帯を口にくわえ自分の指に巻く
そしてまた気を失う

どことなく懐かしい香りと優しい温もりで若者が目を覚ます
若者は先ほどの女の腕の中に抱かれていた

「この手…いったい何をしたんですか?」

目を覚ました若者に女がそう聞く

「この爪を…我が魔族の血を受けた爪だ…これなら魔族とでも戦う事ができるはず…本当なら俺が守ってやりたいが…魔族本来の姿になれない俺に出来るのはこれくらいだ…」

若者はそう言って自分の爪と血で作った武器を女に手渡す

「なんて事を…こんな無茶な事をして…」

女は爪を受け取りそう言って涙を流す
涙は女の頬をつたって
若者の顔に落ちる
若者はまだ痛みの残る両腕で女を強く抱きしめ
優しい温もりの中でまどろみに落ちていく

どのくらいの時間が経ったのだろうか
かすかな血の匂いで若者は目を覚ます
傍らにはもう女は居ない
若者は飛び起きて洞窟の外へと走る
若者の目に信じられない光景が飛び込んできた
すでに魔族は街を滅ぼし神殿に攻め入っていた
その時、若者の脳裏に神殿で戦う女の姿が浮かぶ

「ウォォォォォォォォォォォォ!」

若者は獣のような咆哮を上げる
そして若者の体は魔族の体へと変貌していく
爪を失ったせいなのか…理由は解らないが魔族の姿になっても若者の意識はハッキリしていた
そして若者は山を駆け下りる
街に入ってからも若者の勢いは止まらず辺りにいる魔族を豪腕でなぎ倒しながらまっすぐ神殿へと向かう
意識を無くし獣と化した魔族達は街に火を放ち暴れまわっている…死体を切り刻む者、女を手当たりしだい犯す者すらいる
しかし今はそれにかまっている暇はない
神殿の中もいたる所に死体が転がっている
若者はその死体を踏み越え神殿の奥へと疾走る

そして…ついに神殿の奥にたどり着いた時
たった一人で戦う女の姿を見つける
若者が女の元へ駆け寄ろうとした時…
無常にも魔族の爪が女の体に突き刺さる

その時、若者の中で何かが音を立てて切れる

若者の目は真っ赤に輝き体中の筋肉がさらに隆起する
そして一瞬のうちに辺りの魔族をなぎ払い女を抱きかかえる

「あ…ありが…と…う…」

女はかすかに残る意識の中、魔族の姿へと変わった若者にそう言って微笑む

「我が魔族の魂よ…この者にもう一度生命の息吹を!」

若者はそう言って近くにあった刀で自分の手の平を切り流れる血を女の体に出来た爪痕に流す

その時、若者の頭の中に誰かが語りかけてくる

「我が名はジェクト…我はこの世界の神にして創造せし者…しかしすでに我の力ではこの世界を葬り去る事しか出来ぬ…」

声の主はそう言う
若者はその言葉に耳を傾ける

「そなたがその娘を思う気持ち確かに受け取った…その娘の命の灯はそなたの血で何とかつながるであろう…そして最後にこの神殿の裏にある『はじまりの谷』の入り口を開いてやる…そこから異世界に行け…必ず一緒になれるという保証は無いが、生きてどこかの異世界には行けよう…」

声の主はそう言った
声が消えたと同時に激しい揺れが起き始める
柱が倒れ壁のいたるところに亀裂が入り、天井が崩れ落ちてくる
若者は女を背負うと近くにあった紐のような物で女と自分の体をきつく結ぶ

「この刀は『小烏丸』…我の最後の力…その娘を…いや、我が娘を頼む…」

そう声の主が言うと若者の目の前に光り輝く一振りの刀が現われる
若者はその刀を手に取り襲ってくる魔族を切り払いながら神殿の裏手へと疾走る

「ここが、はじまりの谷…か?」

若者は神殿の裏手にある谷にたどりついた
そこで紐をほどき女を降ろす
そして若者は胸に耳を当てる

かすかではあるが鼓動が聞こえる

若者はとりあえずほっと胸をなでおろす
そして谷を覗き込む
どう見てもただの谷にしか見えない
しかしすぐ近くまで魔族が迫っているのはわかる

「あの声を信じるか…」

若者はそう言って、お互いの左手首を紐でつなぎ女を抱きかかえ谷の縁に立つ
谷底から風が吹き上がってくる

若者は大きく深呼吸をする
そして意を決し…若者は女を抱いたまま目を閉じて谷に飛び込んだ…

若者が目を覚ますと雲ひとつ無い大きな青い空が見えた
そして起き上がり辺りを見渡す
すぐ横になにやら城壁のような高い石壁が見える
壁沿いの少し向こうには入り口らしきものも見える
自分が倒れていた傍らに一振りの刀が突き刺さっている
しかい左手に結ばれた紐は途中で途切れている

「切れちまったのか…」

若者はそうつぶやいて刀を地面から抜き
石壁の入り口と思われる方に向かって歩き出した


「まぁ…このお話はここでおしまい♪」

焔はそうアイナに言う

「え?…そのあとは?」

アイナがそう焔に聞く

「さぁ…どうなったのかね♪」

焔はそう言って笑う

「これじゃあ…よけい気になって眠れないよ…」

アイナはほっぺたを膨らませつつそう言いう

「ははは、そりゃ申し訳なかったね」

焔は笑いながらそう言った

「でも…その2人、どこか違う世界で幸せになれたらいいのにね」

アイナはそうつぶやく

「そだな…そうなったらいいね」

焔はそう答える

「じゃあ…その続きが無いのはしょうがないとして…せめてその魔族の若者と娘さんの名前くらい教えてよ♪」

アイナはそう焔に聞く

「おぉ、名前か…名前…名前…なんだっけな?忘れちまったよww」

焔は頭をかきながらそう答えて申し訳無さそうに笑う

「もぉ、ほんとにダメじゃん…そこも大事なのに!」

アイナはまたも頬を膨らませてそう言う

「スマンスマン…また思い出しておくわ」

焔はそう答えた

「絶対だからね!約束だからね!」

アイナはそう言って立ち上がり大きく背伸びをする

「そろそろ帰って寝な♪」

焔はそう言ってタバコに火をつけてまた噴水の縁に寝転がる

「それじゃ、おやすみなさ~い♪」

アイナはそう言って歩き出す
焔は寝転がったままアイナの方を見て手を振る

「忘れるわけは無いさ…男の名前は焔…女の名前はアイナなんだから…」

焔は歩いて行くアイナの後姿を見ながらそうつぶやいた

…『To Be Continued♪』





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Last updated  2006/08/16 05:34:33 PM
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あとがき♪  
今回のお話は…焔がアイナに聞かせたおとぎ話でした^^
意味ありげな終わり方のお話でしたが…
このお話がどう関わるのか…まったく関わらないのか…
どうなるんでしょうね^^ (2006/08/16 05:36:56 PM)

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