「おとうちゃん」
夕飯どき、あのね!と嫁さんが切りだした。
「わたしね、実は前からやりたかったことがあるんよね、えと、三つほど」
何かな?急にあらたまっちゃって、そういえば四、五年前にもアナタ同じように切りだして、あの時は確か、前からドラムが叩きたかったんだと宣言するが早いか、速攻でヤマハ大人のための音楽教室に入会したよね、飽きずに今も続けてるからいいんだけれども、で、何かな今回は?突如ポールダンスにでも活路を見いだしたのかな?それとも津軽三味線?僕が口には出さずに身構えていると
「えとね、ひとつ目がね、ドロップキックね、で、もうひとつが、こう、バーンて飛んでダーンて胸から体当たりていくやつ、ドーンって・・・」
「フラ、フライング、ボディーアタックかな?」
「そうそう、それそれ、で、さいごのひとつが、こうゴールの前でクルってひっくり返ってバシってシューと決めるやつ、」
「オーバーヘッドキックのこと?」
「そうそう、オーバーヘッド、あれかっこいいよね!」
「・・・」
「やってみたいわぁ~」
「・・・」
プロレス技、プロレス技、サッカーのシュート、あなたの欲求ってのはこれ、いったいどういったくくりなのかな、しかも、あらたまって四十半ばの女性がやってみたいと発表するにしては、ややお茶目過ぎるラインナップだと思うんだけど・・・とは思いつつも。
「あのね、受け身とかデキないでしょアナタ、ドロップキックはやめとこね、あとカラダも爆裂的にカタいからオーバーヘッドも不可かな、ま、なんとか頑張ったらフライングボデーアタックは飛んでぶつかるだけだから努力目標に置いといて、まずはフライングヒップアタックくらいから練習してみない、おケツ、くるっと直前で反転してドン!いかが?これなら何とかなりそうでしょ、伝叙するから」
と、なだめ、説得を試みた。
しかし、今回彼女からフツフツと湧きあがったこの欲求の原因が何であるのかは杳として解らない、ただ願わくばその攻撃の矛先がコチラには向かないでほしい、ただただそう思う。
穏やかな日曜の昼下がり、突如ドロップキックを喰らうのだけはなんとしても阻止せねばならぬ。
今日の一曲 ユニコーン 『ロック!クロック!オクロック!』
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