2007年03月18日
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カテゴリ: OPERA
東京のオペラの森
ワグナー「タンホイザー」

2007年3月18日(日)
東京 上野 東京文化会館

指揮: 小澤征爾
演出: ロバート・カーセン
装置: ポール・スタインバーグ
衣装: コンスタンス・ホフマン
照明: ロバート・カーセン

振付: フィリップ・ジュラウドゥ

演奏: 東京のオペラの森管弦楽団
合唱: 東京のオペラの森合唱団

〈キャスト〉
タンホイザー:ステファン・グールド
エリーザベト:ムラーダ・フドレイ
ヴェーヌス:ミシェル・デ・ヤング
ヴォルフラム:ルーカス・ミーチェム
領主ヘルマン:アンドレア・シルベストレッリ

ヴァルター:ジェイ・ハンター・モリス
ビーテロルフ:マーク・シュネイブル

ラインマール:山下 浩司


大傑作!
本年度ナンバーワン(って早いよ)

ロバート・カーセン演出すばらしい!!!
さすがです。

すごい読み替え!
驚きの演出。
最初はどうなることかと思いましたが、
第2幕でぐんぐんおもしろくなって、
3幕では驚天動地ですわ、もう。
「ほんとの」タンホイザーを知った上で見てもらいたいんですが。

タイトルロールのシュテファン・グールド、すばらしかったです!
これぞタンホイザー。
これこそがタンホイザーの声。
一昨年のギャンビルさんはやはり「タンホイザー」じゃなかったのよね、ジークムントだったのよね。
重唱の中でも光り輝く際立つテナー。輝かしい声。ボロを着てても。これがタンホイザー。

ヴォルフラムのテジエの代役君は、アメリカ人でまさにそういう役作り。これもけっこうはまった~ ハンサムで優男のヴォルフラム。声はリリカルで優しい。声量はそれほどでもないが、若いし背が高い。これからの人でしょう。

これNHKで放送されるそうです。カメラ入りまくり。こりゃ楽しみだ。
それから蛇足ですが来年の「オネーギン」もキャストがちらしに出てました。知らない人だった…残念。来年も小澤さんなのですがね。

※中身を書きますのでご注意ください。でも肝心なとこは書かないようにいたしますので。私の感じたように書きますのでもしかしたらかなり演出家の意図と違うかもしれませんがご容赦ください。

第1幕

ハインリヒのアトリエ

ハインリヒ(タンホイザー)はまったく売れない前衛芸術の画家。いつも妄想の中で描いている。
小澤がタクトを振り、序曲が流れると、漆黒の闇の中に立っている男。男の背後からゆらりと人影が出てくる。裸の女だ。長い金髪を背中まで垂らし、豊かなバストと臀部を惜しげもなくさらしている。
女はハインリヒをあやつる。右に左に。
ハインリヒは魅入られたように動き、袖からイーゼルと絵の具の入ったカートを押してくる。

女は下手(しもて)手前にあるハインリヒのベッドに横たわる。そしてポーズをとる。ハインリヒは絵筆をとって彼女の絵を描き始める。気がふれたように。赤い絵の具で描く。描く、描く。
そしてたまらず女に近づいていく。女は絵筆を奪ってまるで彼女が彼を描くように、彼の体の線をなぞっていく。エロティック。

ハインリヒが増殖する。無数のハインリヒが現れる。みんなカンバスを抱えている。
ハインリヒたちは本物のハインリヒとシンクロして絵を描く。飛んで回って集団で描く。
そしていなくなる。
また現れたハインリヒたちは服を脱ぎだす。パンツ1枚になって、自分のカンバスに体を押し付ける。カンバスには赤い絵の具がべったり塗りたくってあって、彼らは真っ赤になる。そしてカンバスと自慰を繰り返す。これがハインリヒの絵なのだ。現時点での。超アブストラクトで赤一色の絵か。しかし演出は巧みでぜったいハインリヒの絵を見せないのだ。常にカンバスを観客に背を向けられているのだ。

ハインリヒたちは無数のカンバスを壁に立てかける。
ハインリヒは真っ赤な絵の具のついた手でヴェーヌスの裸体を愛撫する。
ヴェーヌスは満足したように白いシーツを、一糸まとわぬ裸体に巻きつける。彼女は男たちの間を歩き回る。
ヴェーヌスは無数の赤く染まった男たちを引き連れて上手に退場する。
そして戻ってくる。戻ってきたときにはミシェル・デ・ヤングに変わっていた。
ようやく歌が始まる。
ミシェル・デ・ヤングはセクシーで声もすばらしい。
別れ話を切り出すハインリヒ。
「このままではオレはだめになる。オレは出て行くよ…」
私の理解ではこのヴェーヌスはハインリヒの同棲相手で、ヌードモデルのバイトもするが本来いかがわしい商売をしているんだろう。(単なる推測)

引き止めても聞かないハインリヒに怒ったり泣きついたりするが、結局アヴェ・マリア!と言われて退場するヴェーヌス。

背後の壁が斜めに倒れ、すきまから外が見える。白い光の中から、羊飼いの歌声が聞こえてくる。羊飼いは現れない。

巡礼たちが現れる。
巡礼はさきほどの絵を持って舞台いっぱいになって合唱する。彼らは巡礼ではなく、夢に向かっているが夢がつかめない画家たちだ。ハインリヒと同じなのだ。

画家たちはいなくなる。
ハインリヒは自分の絵を持ってくる。
そこにやってくる領主へルマンご一行様。実はヘルマンは大手の画廊のオーナーで画壇を仕切っている男。いつも彼に腰ぎんちゃくのように画家の集団がまとわりついている。

彼らは昔の友達にめぐり合う。才能があったのに、自ら画壇を去った男。ヴォルフラムはエリーザベトの名前を出して彼を引き止める。
引きとめたくせして、ハインリヒがその気になると、ちょっと躊躇する。最愛のエリーザベトを失うかもしれないと危惧している。
しかし根っからアメリカ人で人のいいヴォルフラムは彼を祝福する。
男たちの重唱すばらしい。

第1幕了。

ここまでは「ふ~ん」だった。まったく感慨なし。でもここからがおもしろくなったのだ。

第2幕

マシュー・ボーンの世界です。
ここは画廊。オーナーのヘルマンの画廊。絵の展覧会が開かれる。その準備をする男たち。
その場に現れるエリーザベト。???から。エリーザベトは、大好きだったハインリヒがまた帰ってくると聞いて心をときめかせている。
可愛らしい人。
???から現れるハインリヒとヴォルフォラム。
ハインリヒはせつせつと彼への矛盾する気持ちを歌い上げるエリーザベトを、客体としてしか見てない。せっせ、せっせとクロッキーする。
そして2人の二重唱。ハインリヒは下手、エリーザベトは上手でものすごく離れた距離で歌う。これは指揮者泣かせですね。
でもすばらしい! やっぱりグールドが最高!
二人が???で抱き合うと、客席から拍手が。ハインリヒの退場でまた拍手が。ワーグナーでは幕間以外では拍手しないものなのに。新国劇じゃないんだからさ。

そして???から画廊の客が現れる。
この集団の有名な合唱、彼らはその間、ひたすら、飲み、食う。芸術よりも大事なのは… 花よりダンゴなのだ。

そこへヘルマン。コンテストに参加する画家たちが???から登場する。

先頭は意気揚々とヴォルフラム。マスコミがさっとうする。写真を取り捲る。スター扱いの彼ら。彼は画壇の寵児。
客席に背を向けて並べてある白い椅子に座る。
ヘルマンが演説をぶつ中、ハインリヒはしきりにエリザをスケッチしている。
それぞれ絵を披露するときがやってくる。
絵のテーマは『愛の本質』だとヘルマンが告げる。
画廊の係員の姉ちゃんたちが4人で、
「エシェンバハさん、お願いします!」
ヴォルフラムは自分の絵を持ち出す。まだ覆いをしてある。ヴォルフラムはまっすぐエリーザベトを見つめて歌う。そしてめがねをとってハンサムな顔でじっとエリーザベトを見つめる。
そして絵の覆いを取り去る。
絵は水色ベースのものらしい。背を向けてあるので、いっさい客席に絵は見えないのだ。
みな喜び、エリーザベトも納得する。
ところがハインリヒただ一人、気に入らない。難癖をつける。
ビッテルロルフが怒って糾弾し、自分の絵を披露する。それもさんざんこき下ろすハインリヒ。
場内は騒然となる。
ヴォルフラムは事態を収拾しようと、エリーザベトに優しく歌いかける。ところがハインリヒが欺瞞のヴォルフラムを突き飛ばして割って入り、自分の歌を披露する。彼は歌いながら、エリーザベトの体をいやらしく愛撫する。まるでヴェーヌスを愛撫したのと同じように。エリーザベトは不快で身をよじらせる。
そしてついに
「ヴェーヌスのところへ行け!」と歌ってしまう。
彼の絵は人々にはおぞましいものだったらしい。人々は嫌悪し彼を糾弾する。
ヴォルフラムは激昂し、彼に殴りかかる。
ただ一人辱められたエリーザベトだけが彼をかばう。
このへんの重唱、合唱は最高でした。
反省したハインリヒは舞台の真ん中にひざまづく。ここのグールドも絶品! 合唱の中にあっても彼の声だけは際立っている。ほんとにすばらしい。
涙のエリーザベトの懇願がきく。
しかしヘルマンは怒りおさまらず彼を追放にすると告げる。
ハインリヒは???に行くが、自分が何をどうしたらいいのかわからない。
そこで巡礼の歌が聞こえてくる。
ハインリヒは自分の絵をかき抱くと、ローマへ!と叫んでいなくなる。

第2幕了。


Part2





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最終更新日  2007年03月18日 23時32分58秒


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