Muti:これはドの音です。この音は呪いの中核と言えるでしょう。ラ・マレディツィオーネ la maledizione にしたかったのです。この呪いの怖ろしさ。モンテローネの呪い。リゴレットに常に頭の中に残っている音、呪いのテーマ。モンテローネが牢屋に移送される時も、ドの音。ライトモティーフはその後ワーグナーが進化させるんですけど、ヴェルディは一つの音の中で…(ベートーベンの運命のメロディを弾く)これはモチーフとは言えないですよね。ヴェルディの同じ音を繰り返すこと(弾く)人間に圧力をかける音。不協和音を聴いてみてください(解説しながらピアノで序曲の音楽を弾く)
Muti:(金魚鉢を見上げながら、)ちゃんと訳してくださいね。スパラフチーレのところに行くとき、「一部屋とワインをほしい(Una stanza e del vino)」と言います。リゴレットはジルダに「見たか?」と言います。このシーン、あなたの楽譜ではどう書いてありますか?(と最前列の女性の楽譜を取り上げて見る。)
Muti:間違ってます!正しくは「お前の妹と酒だ!」 Tua sorella e del vino なんです。(リアクションが薄すぎ)当時はそういう表現が禁止だったので、テキストがそう変えられたのです。だからそのリコルディは間違っています。Money Back (金を返せ)と言ってください(客笑)正しくは「あなたの妹と酒」なんです。
四重唱 Bella figlia dell'amore マントヴァ公爵(テノール):ジョルダーノ・ルカ リゴレット(バリトン):フランチェスコ・ランドルフィ ジルダ(ソプラノ):ヴェネーラ・プロタソヴァ マッダレーナ(メゾ・ソプラノ):ダニエラ・ピーニ