t-cross Private Research Institute (tPRI)

t-cross Private Research Institute (tPRI)

PR

×

Calendar

Profile

t-cross

t-cross

Archives

2026.10
2026.09
2026.08
2026.07
2026.06
2012.03.11
XML
カテゴリ: Science
「空白の天気図」(柳田邦男、新潮文庫)を再読。

まず最初に…私の手許にある本書は古書で買い求めた旧い新潮文庫版であり、紙もかなり焼けてしまっている。しかし、最近文春文庫から新しい版が出ているので、今後の読者には是非そちらをおすすめする。

さて本書は、昭和20年に広島に落とされた原爆と、その後わずか1カ月後の枕崎台風という「二重災厄」を、主に広島地方気象台の台員たちの視点で描いたノンフィクションである。

そこには、原爆投下直後にその調査に乗り出した気象台員の奮闘や放射線障害の発病、広島市とその周辺の被災および被災者の様子、そしてそれに続く枕崎台風についての同様なことがリアルに描写されている。そして、その後日談であるあとがきで締められている。

例えば、原爆投下直後は無線受信機が破損して、中央気象台からの無線放送を受信できず、天気図の作成は出来なかったが、その中でも日常の観測業務だけは続行され、欠測がなかったことが書かれている。

また原爆による死者のためのある死体収容所では「死体収容所」という文字と身元の判明した死者の名前が血で書かれていたといった生々しい記載もある。

更には、原爆とその被害の調査のために広島入りしていた京都大学理学部・医学部の調査班が、枕崎台風による山津波で多くの犠牲者を出したことなども述べられている。

また、私の知らなかった史実としては、岡田武松という気象学者・物理学者の名前がある。彼は 「寺田寅彦と並ぶ知名度があり、中学生でも理工系に興味のある者なら、岡田の名前ぐらいは大抵の者は知っていた」 そうである。



加えて、原爆後に広島地方気象台が広島管区気象台に格上げにされた際、台長に就任した菅原芳生氏は独自の「観測精神」を持っていて、どこからか旋盤を入手して、測器や用具の修理を自ら行ったそうである。彼の観測晴氏は 「観測器械を自分で作ったり修理したりすることができるくらいでなければ、本当の観測など出来ない」 という言葉に端的に表れている。

(嗚呼、ごめんなさい。私は地震学徒であるにもかかわらず観測が好きでなく、器械作りも苦手で、それ故にIT関係の仕事に就いています。)

本書は気象をはじめとする地球科学や医学に興味のある人だけでなく、昨今社会問題化している原発や核兵器について考える上でも重要な示唆を与えるものと思われる。

こういう良書は是非英語に翻訳してアメリカ人にも読んで欲しい。そうすれば「原爆が戦争を終わらせた」という考えが如何に無知蒙昧なものであるか理解されるであろうと思う。


空白の天気図





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.03.11 16:02:49


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: