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カテゴリ: Science
「天の科学史」(中山茂、講談社学術文庫)を読む。

天文学の歴史についての本。世界で一番古い学問といわれる天文学、昔は占星術で政に使われたり、測量に使われたり、暦の作成に使われたりという時代から、ケプラー・ニュートン・ガリレオの時代を経てコペルニクスの地動説、さらに近年の天文学の進歩について、編年体で書かれている。

天文学史というのは今まで読んだことがなかったので、面白い発見やエピソードがいろいろあった。例えば以下のような感じ。

・現在でもイスラム圏では太陰暦に基づいており、ラマダンの時期を知るために飛行機を飛ばして新月の観測をしている。

・第二次大戦時に飛行機で爆撃に行く時に、天体観測による位置決定ができず、同盟国(枢軸国)のドイツから潜水艦で天体位置表を輸入していた。

・天智天皇が漏刻(水時計)を初めて設置した日が「日本書紀」に記されており、それが今の暦で6月1日なので、この日が時の記念日になった。

・アメリカが巨大天体望遠鏡を作成できたウラには、ロックフェラーやカーネギーなどの財閥の力があり、天文学という俗世間離れした学問にも、社会の動きが反映されている。

ただし、本書の底本は1984年刊ということと、筆者の考えによって、最新の天文学・惑星科学の知見は反映されていない。例えば以下のような感じ。

・P.119では、宇宙進化論がほとんど出来あがっていないという記述があるが、これは古い話で、今はビッグバン宇宙論やインフレーション宇宙、宇宙の晴れ上がり(順番がごっちゃになっているが…)など、いろいろな説が定説となっている。



・P.226では、アポロが持ち帰った月の石の分析を過小評価しすぎである。地球と大変違っているので、月の「捕獲説」を採用しているが、これは今の定説に反する。今は「巨大衝突説」といって、地球に巨大な隕石か小惑星が衝突し、地球の一部がはぎとられたものが月になった、という考えがほぼ定説である。

・P.258では、太陽系生成論についていまだ未決着としているが、これも今では原始惑星系円盤から惑星が形成されたという惑星形成論でほぼ決着している。

先にも述べたし、筆者も述べている通り、この辺の最近の知見はこの本には反映されていないので、一般読者が読むときには注意を要する。最近の知見は別の本に譲り、この本では古い時代の話を楽しむのがいいと思う。最新の知見がないからといって、この本の価値を落とすものでは決してない。


天の科学史/中山茂





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Last updated  2012.11.12 11:45:25


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