t-cross Private Research Institute (tPRI)

t-cross Private Research Institute (tPRI)

PR

×

Calendar

Profile

t-cross

t-cross

Archives

2026.10
2026.09
2026.08
2026.07
2026.06
2018.12.22
XML
カテゴリ: Book Review
「王とサーカス」(米澤穂信、創元推理文庫)を読む。

以前読んだ​ 「さよなら妖精」 ​や​ 「真実の10メートル手前」 ​に登場した女性記者・太刀洗万智がフリーライターとしての初仕事でネパールに向かう。現地のホテル「トーキョーロッジ」に滞在し、現地の少年ガイドの助けを得ながら仕事を進めようとした矢先、王宮で国王殺害事件が発生。しかも殺されたのは8人に及び、犯人は皇太子でその後自殺を図る。太刀洗は早速取材を開始するも、彼女はいきなりひとつの死体を目にすることになる。殺されたのは誰か?何故こんな殺され方をしたのか?太刀洗は事件の真相へ、一歩また一歩と迫っていく。

それはまた、ジャーナリストとしての己の在り方を問われる過程でもあった。記者は、報道は、悲しいニュースを伝えるが、それは単に読者にとってはサーカスのような娯楽にすぎないのではないのか?太刀洗は己と葛藤しつつ、それでも記者として突き進む決意をする。

話は変わるが、事件の舞台が学校で生徒が探偵役の話を「学園ミステリ」と呼ぶ。では本作のように、ライターやマスコミ関係者が探偵役の場合、何というのかなどと(余計な)ことを考えてしまった。「メディアミステリ」などという言葉が思いついたが、ちょっと違う気がする。まぁ、この「太刀洗万智シリーズ」は普通のミステリと明らかに一線を画していると言いたかったのだ。

というのは、巻末解説に 歴史的にも探偵と記者は類縁性が高いことが見て取れるが、著者も探偵とは何者かを追究する思索から、悩めるジャーナリストの万智を生み出したのではないだろうか

登場人物が個性的なのも光る(私もあの破戒僧とお茶をしてみたい)し、ネパールというあまり馴染みのない国の国情や歴史に触れられるという点でも本書は面白い。あっ、そういえば私は大学院時代に同じ研究室にネパールからの研修生がいた時期があったんだ、と今思い出す。それでもネパールに関する私の知識は皆無に等しい。こうやって久々に思い出させてもらえたのも嬉しい。

以下、気に入ったところの引用。

「子供と歩けば子供の街、坊主と歩けば坊主の街さ、どこでもそうじゃないのか」

ネパール国旗の二つの三角形のうち、一方は王家をあらわすが、もう一方はラナ家をあらわしているという。

「そっか。考えてみればそうかな。飛行機が一番速いけど、バスもリクシャもいらないってことはないもんな」

「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ」

もしわたしが死者の背中に告発のメッセージを刻むとしたら、曲線が多い平仮名ではなく、楽に刻める片仮名を選ぶだろう。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2018.12.22 07:49:40
[Book Review] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: