5.1chや7.1chのサラウンドサウンドのスピーカーの音の聴こえ方を、頭部伝達関数(HRTF)を利用した音声処理で2chステレオのヘッドホンやイヤホンで再現するようにしているのが、Windows Sonic for HeadphonesやDolby Atmos for Headphonesの音声処理だと思います。 周波数、レベル、時間差などの音声の要素を処理していると考えられます。
では、Windows Sonic for Headphonesの音声処理は、どのようなものなのでしょうか。
音の感じ方は主観的なものなので、客観的な情報を得るために、音声をWindows Sonic for Headphonesをオンにして録音した場合とオフにして録音した場合とで比較しました。
テストトーンは、Left、Right、Center、Subwoofer、
Side Left、 Side Right、Back Left、Back Right、Top middle Left、
Top middle Rightの順に個別に再生されています。
※スペクトログラム(横軸:時間、縦軸:周波数、色:dB)
Leftのスピーカーの音声の場合、Windows Sonic for Headphonesの処理によってLeftトラックだけでなくRightトラックにも音声が記録されていることがわかります。
左側のスピーカーの音だからといって、左耳にしか音が届かないわけではありません。左耳により強く、右耳にやや弱く音が届いているはずです。微妙な時間差もあるはずです。それを、Windows Sonic for Headphonesの処理が表現しようとしているのだと思います。
また、左から4番目のSubwooferの音声が録音されていますが、Windows Sonic for Headphonesをオフにして録音した場合には、Subwooferの音声が録音されていません。ということは、Windows Sonic for Headphonesをオンにすることによって、低音の迫力を増加できることがはっきりとわかります。
Windows Sonic for Headphonesがオンの場合とオフの場合の音声の聴こえ方の違いを、録音データのスペクトログラムを比較することによって視覚化することができました。
Windows Sonic for Headphonesでは、ヘッドホンやイヤホンの左右2チャンネルの音声出力を活用して、立体音響を表現しようとしていることが、視覚的にもわかりました。
Windows Sonic for Headphonesをオンにして、イヤホンでテストトーンを聴いている際に、例えば、Back Leftのスピーカーの音を聴きながら、右耳のイヤホンを外すと、スピーカーの位置が変化したように聴こえます。左側の音を左右の音声で表現していることがわかります。
また、Windows Sonic for Headphonesをオンにすることによって、Subwooferの効果が得られることがはっきりと示されました。
◆Windows Sonic for Headphonesをオンにした場合のLeftトラックとRightトラックの音声の特徴は?
Windows Sonic for Headphonesでは、ヘッドホンやイヤホンの左右2チャンネルの音声出力を活用して音声を表現していることがわかりましたが、例えば、
Left
(Front Left)
、
Side Left、Back Left、Top middle Leftの4個のスピーカーのテストトーンが左右の2チャンネルでどのように録音されているのかを見てみました。
下の図は、
Left
(Front Left)
、
Side Left、Back Left、Top middle Left
の方向の異なる各スピーカーのテストトーンが再生されている時のLeftトラックの録音のスペクトル解析結果です。横軸が周波数で、縦軸がレベル(dB)です。つまり、イヤホンの左耳から聴こえる音の特徴です。
さらに、その下の図は、
Left
(Front Left)
、
Side Left、Back Left、Top middle Left
の各スピーカーのテストトーンが再生されている時のRightトラックの録音のスペクトル解析結果です。つまり、イヤホンの右耳から聴こえる音の特徴です。
可聴域を超える、20000Hzを超えたところではレベルが急低下しています。Windows Sonic for Headphonesの仕様が48000Hz(48kHz)なので、仕様によるものだと考えられます。
今、使っているソフトでは検証できませんが、「Side Left」「Back Left」「 Top middle Left」のスピーカーの方向の違いは、周波数やレベル以外の要因である「音の時間差」によって表しているのかもしれません。
いずれにせよ、下の図は、Windows Sonic for Headphonesの頭部伝達関数(HRTF)の一側面を示しているのではないでしょうか。
◆
(左耳に届く音の特徴):左側の各スピーカーのうち3個が同じパターン
◆
Windows Sonic for Headphonesをオンにした場合のRightトラックのスペクトル解析結果(右耳に届く音の特徴):右側の各スピーカーのうち3個が同じパターン Rightトラックでは、低音よりも高音のレベルが低くなっていますが、低音よりも高音の方が減衰しやすくて届きにくい、ということを表現しているのでしょうか。
Netflixの5.1ch音声の映画やドラマは、Windows Sonic for HeadphonesやDolby Atmos for Headphonesをオンにして迫力ある音声で楽しみたいと思います。