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くーる31 @ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
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masashi25 @ コメント失礼します☆ ブログ覗かせてもらいましたm(__)m もし…
Tessera @ どうもありがとうございます。 カモメ7440さん 激励を頂き本当にありが…
カモメ7440 @ うまい! おそらく散文詩だと思います。 ショート…

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Dec 31, 2006
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カテゴリ: 柔らかい思念
これが自分の妻の重さであったらどんなによいだろうと彼は思った。

郊外に向かう列車の中で彼の隣に座った中年の女はとても疲れていたのだろう。
すぐにうたた寝を始めると、女の体は安定感を求めて何度も彼の方に寄りかかってくる。
ほんの1秒か2秒程度なのだが、彼はその女のすべての重さを支えた。意外なほどに軽くて、柔らかかった。

生前の彼の妻は決して弱みを見せない女だった。それだけに彼には妻に頼られたという記憶がなかった。この隣の女が自分にもっと寄りかかってきてほしかった。自分が妻を受けとめているという錯覚に浸りたかった。

しかし、女の降りる駅に列車が着くほんの少し前に、かすかに残っていた女の意識は急速に回復し、体をまっすぐに起こした。隣の男に寄りかかったことなど決してないという風に女は前を見つめた。
思いが突然に断ち切られたことに抗議するかのように彼がその女の横顔を見ようとしたのと、彼女が立ち上がるのはほぼ同時であった。

電車から降りて改札口に向かう途中で、突然、女は亡くなった夫のことを思い出し、このような場所で夫への思いがわきあがったことを不思議に思ったが、子供の待つ家に早く帰らなければならないという気持ちがその感情をあっという間に消し去り、女は振り返ることもなく改札口への歩みを早めた。





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Last updated  Jan 6, 2007 08:55:42 PM
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