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くーる31 @ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
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masashi25 @ コメント失礼します☆ ブログ覗かせてもらいましたm(__)m もし…
Tessera @ どうもありがとうございます。 カモメ7440さん 激励を頂き本当にありが…
カモメ7440 @ うまい! おそらく散文詩だと思います。 ショート…

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Sep 20, 2009
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カテゴリ: 柔らかい思念
 遠い記憶でそれをうまく掘り起こせないのだけれども、わたしはあのとき確かに空を飛んだ。

 しかし、意識が遠のく直前に、わたしは助けだされたのである。

 そこからは、わたしの想像も入るけれども、巨大な透明な魚が現れた。それは水の流れよりも早く泳ぎ、流されるわたしよりも前に進み出ると反転しその口を大きく開いてわたしを丸呑みした。それから流れに逆らうようにして、体を水流で起こし、その勢いで大きく空中に跳躍した。そのとき、透明な魚は大きく口を開き、胃袋の水を吐き出し、空気を中に取り込んだ。わたしが呼吸できるようにするためだったのだろうか。

 透明な魚はもう一度大きく跳躍して、胃袋の中に大量の空気を取り込むとすぐに水中に戻った。それから、しばらく上流に頭を向け、水に抗しその場に静止するように尾びれをゆるやかに動かしていたが、その間に力を貯めこんだのか、下流に向けて全速で泳ぎ出した。スピードに乗ると水面に近づき、満身の力で飛翔した。今度は落下しない。

 胃液の酸性が眼を痛めるのか、眼を開けていられなかったが、わたしは確かに透明な魚がときどき体をくねらし宙をゆっくりと飛んでいると思った。わたしは時間の感覚をすっかり失くしていたが、少なくとも何秒という単位ではない。わたしを飲み込んだ魚は何分も浮遊していた。ときどき口を開けて空気を取り込むのだろう。冷たい空気が胃袋の中に流れるのをわたしは感じた。

 突然、大きな衝撃が魚体に加わり、思わずわたしが眼を開けると、透けた魚体の向こうに父の姿が見える。父の顔がひどくゆがんで見えたことをわたしは覚えている。
 わたしに向けて父は何かを必死に叫びながら、掌よりも大きな石を右手でつかみ、それで透明な魚の頭をなぐりつける。もう抵抗できないのか、ぐったりと地に腹をつけると胃を痙攣させるかのようにしてわたしを吐き出した。まだ透明な魚の口元あたりに引っかかっていたわたしをひったくるようにして、父はわたしを抱きしめた。

 夥しい血が周囲に飛び散っていた。透明な魚の血は空中の酸素に晒されると見えるようになるのだろうか。どす黒い血が川辺の乾いた小石を染めている。その血しぶきが魚体にもついているだろう。血しぶきが動き、そこに透明な魚がいることがわかる。川の方向に進んでいる。父はもうその透明な魚を攻撃しない。


 父がわたしを抱きしめたとき、皮膚がぬるぬるだったらしい。それは何か粘度の高い溶液が皮膚についたためではなくて、皮膚の表面が胃液で溶かされたためのようだ。わたしの体は真っ白になっていたらしい。父はわたしを自宅に急いで連れてかえると浴室のシャワーで念入りにわたしの体を洗った。
 そのときに体に残ったのだろう。今でも、無数の白い斑点がわたしの体のいろいろなところにある。

 それからしばらくして、眼を固くつむり、膝を抱えた少年が空を飛んでいるのを見たと言う噂を聞いた。しかもその少年の手足や顔が真っ白だったという。そんなことが父の日記に書かれている。ただ、父の日記は透明な魚については何も触れていない。
 父は既に死去している。もはや父に透明な魚について確認することはできない。
 透明な魚は死んでも透明なのだろうか。わたしはぼんやりとそんなことを考えた。





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Last updated  Sep 27, 2009 08:23:25 PM
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