バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

PR

Profile

快筆紳士

快筆紳士

Calendar

Archives

2025/12
2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2025/06
2025/05
2025/04
2025/03
2005/03/13
XML
 どういうことか、これまで私は横浜という町とは縁が薄かった。振り返って、あえて横浜を訪れた回数は、実に五本の指に満たない。ここ数年の間に、その横浜がドラマティックな変化を重ねていたことも、あくまでニュースの向こう側の出来事であった。

 大学生だった頃、私は当時実家のあった××から、実に往復7時間もかけて神奈川県にある校舎に通っていたのであるが、その7時間が6時間に“縮まる”ルートとして、途中から利用したのがここ横浜と海老名市を結ぶ相鉄線であった。
 あの頃はとにかく学業にも部活にもがむしゃらで、睡眠も惜しんだし、7時間の通学も苦でなかった。それを若さといえば野暮になる。そこにあった衝動は、若さとも少し違う、もっと無垢で純粋なものであったような気がする。情熱や勢いに任せた活力ではなく、視野狭窄的でありながらもひたむきな青さ、と言えるような・・・。その後、大学の校舎が県外から都内に移ってからは、年々横浜とは縁が薄れていった。
 2004年1月31日をもって、東急東横線の桜木町駅と高島町駅が、その歴史に幕を下ろした。特に、様々なドラマを生んできた“日本のソーホー”とでも呼べそうな桜木町駅では、大々的な「さよならイベント」が行われたようだ。自身の想い出の数々と重ね合わせて、その別れに号泣する人もいたという。横浜駅で連絡する東横線とみなとみらい線が、渋谷から中華街までをつなげ、東京の都心からのアクセスは大幅に便利になった。
 時折見せる私自身の、無理に感情を覆い隠すかのようなドライさには、いつもながら自分で退屈を覚えるが、桜木町の終焉も、それに捧げられたノスタルジックな涙も共有できない私が横浜を訪れて、醒めながらもチクリと感じた一刺しの喪失感、それはあの青さ‐今や取り戻すこともかなわぬ、痛々しいまでの、しかし完全な透明感‐との別れであった。なるほど、私の心もツールとしては便利に進化しただろうが、その道程では何かを切り捨て、何かと別れてきたのであろう。
 横浜の黄昏に、自身のイノセンスとの惜別を重ねてしばし、この縁遠かった町に急な親しさが込み上げた。
 余談だが、リアルタイム世代でない私もよく混同するのだが、青江三奈の“ブルース”は『伊勢崎町ブルース』で、『桜木町ブルース』は美川憲一である。(了)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/11/10 05:16:49 PM
コメント(1) | コメントを書く
[旅行/散歩(国内)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Comments

プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
バーバリー マフラー アウトレット@ maercjodi@gmail.com はじめまして。突然のコメント。失礼しま…

Favorite Blog

カードケースを試作… New! 革人形の夢工房さん

新・さすらいのもの… さすらいのもの書きさん
価格・商品・性能比較 MOMO0623さん
抱きしめて 愛の姫.さん
天使と悪魔 ♡ り ん ご♡さん

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: