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カテゴリ: 書評
見出し:享楽の斜塔は崩落するか?自己愛のレンズで人類の歴史を覗く。

岡田尊司(著) 『自己愛型社会』 (平凡社新書)

 自己愛性人格障害の“条件”は、相当に細かく具体的で、かつ広範である。だから、熟考して、自己愛性人格障害が本当に病理であるなら、この世にこれに罹患しなかった者など一人として存在しないのではないだろうか。
 歴史というものは思いのほか非ロマンティックだ。それらはきわめて論理的な繰り返しの連続であり、おまけに、後代の何者かによって、ご丁寧な分析と理由付け、そして解説がなされているからである。
 さておき本書の最大の面白さは、その生真面目にして悲壮感漂う終末論的展開ではもちろんなく、「自己愛の観点から歴史を見直す」という点である。いかなるレンズで歴史を覗いても、そこに自己愛のみが存在することは分かりきったことである(そう、そのオブライジこそが自己愛性人格障害のレンジの広さというミソなのだから)とは言え、これが大変興味深く、実に見事に我々人類の辿ってきた歴史のダイナミズムを合点のいくよう説明してくれて、喉のつかえがとれる爽快感も味わえる。この説得力は、むしろ精神科医というよりも歴史学者のそれだ。
 一方で、歴史の転回と自己愛の結び付けは鮮やかながら、その解釈にはいささか紋切り型なものが散見され、その広範な知識でもって我田に水を引くような筆者の強引さも目につく。
 私は、自己愛性人格障害という病理の定義や存在の有無の確定については待ったをかけたい立場であるし、ゆえになおさら、筆者の論調にサヴォナローラ的熱狂を感じ取って、いささか慄然とせざるを得ない点もある。そして何より、もし自己愛が人類の歴史を作ったのなら、今日の社会を形作るのも自己愛であり、それこそ筆者の考えるように、自己愛こそが世界を崩壊させるのであろうが、これはもはや人知で止めるべきものではなく、否応なく実現するということである。禁欲の修道僧の辻説法も、歴史の論理的な振り子-そう、歴史の力学である-に抗すること能わず、ではないであろうか。(了)

自己愛型社会





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Last updated  2008/03/31 12:12:25 PM
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