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カテゴリ: 書評
見出し:“耳の痛い一冊”に、現代日本の豊かさと階層化を読む。

三浦展著『 下流社会  新たな階層集団の出現』(光文社新書)

 “耳の痛い本を読む”ということは、実に後味の悪いことであるが、同時に痛烈な批判に身を晒すことの価値を思い出させてくれるものだ。本書は、かつて「一億総中流」といわれた日本社会が、事実上「下流社会」へと堕している点について、豊富なデータと綿密な調査から、実に怜悧に説明している。こうしたテーマが“カミナリ親父のお小言”的に展開されると面白くもなんともないのだが、データで裏付けられると実に恐ろしいものだ。
 時代の下流社会への移行について私が常々考えることは、結局現代のマスには、含羞の念と、知足の思想が欠けているということである。つまり高度な美意識の放棄である。美意識の欠如を問いただせば、それを根性論や精神論と同じにして嘲弄する者があるが、これらは全く別物である。
 ではなぜそれらがないか。それは自尊心がないからである(ナルシシズム的プライドは増長したが、それが自尊心と同じでないことは説明不要である)。では己を尊ぶ精神が培われなかったのはなぜか・・・。
 それはもしかしたら、本書で言う団塊ジュニア以降の世代の自尊心は、すべて“お金で買ったもの”だからに違いない。「中流」化して豊かになった親が、子供の為に買ってくれ、与えてくれた自尊心。服もゲームも、学歴さえも・・・。そして、人と競うことは覚えても、その競う土俵はすべてお金で買えるものばかりである。いや、“土俵をお金で買える人だけが勝てる競争”ばかりがいたずらに林立し、当然、そういう競争では豊かな者だけが勝つ。成金根性の王国が、美意識を無視して好き放題に振る舞う様は、もはやおなじみの光景だ。
 そうして、親のお金で買える土俵でばかり競い合った結果、リアリティを伴う自尊の念がはぐくまれなくなり、「中流」の子女が下流に向かったとて、それは水が上流から下流へと流れるのとおなじだけ明白だ。
 と同時に、この国の「上流」は、市場経済の競争原理の中で叩き上げた“今太閤殿下”で成り立っているという点、「上流の本来的意味」と大きな隔たりがあるように思えてならない。

 また、本書の中で使用されるイメージ写真の数々は、“下流社会・日本”を印象づけようという魂胆から、過度に恣意的・作為的で不自然なカットばかりで、これがかえって本書の鋭さを浅薄でコマーシャルなものにしてしまっている点残念である。(了)

*読み比べという行為に、さしたる明確なルールなど存在しないが、敢えて近しいボリュームのもの同士でそれを行えば、質は措くとして少なくとも量においては公平を期すことができる。標題の本は、佐藤俊樹『 不平等社会日本  さよなら総中流』(中公新書)と併せて読むことで、双方のより深い理解や、特に階層性というテーマそのものの背景の読解について、相互に補完し合って説得性をもって読み手に訴えかけてくる。

下流社会
下流社会

不平等社会日本
不平等社会日本





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Last updated  2008/03/31 12:17:04 PM
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