バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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カテゴリ: 音楽
 タミー・モンゴメリー。後にタミー・テレルと呼ばれ、モータウンの仲間入りを果たし、ヒットに恵まれないマーヴィン・ゲイと、デュエットという架空の世界で、永遠の恋人同士を演じ、謳い、讃え合った女性シンガー。マーヴィンのミューズ。そして、遠い恋人。

 実は、もう10年くらい前になるだろうか、レコードショップで彼女がモータウンから出したソロ・アルバムのアナログ盤が飾ってあり、値札には目の飛び出るような価格が付いていた。欲しかった。でも、買えなかった。
 ソウルフル一辺倒ではなく、さわやかでメロディアスなポッピズムを組み入れた、洗練されたサウンド・オブ・ヤング・アメリカを追求していたモータウンにあって、タミーのような唱法は、果たしてマッチしたのだろうか?
 したのである。それも、モータウンの社長の姉と結婚し、モータウンのプリンスと呼ばれるも、まだまだその有り余る才能を開花させられずにいたマーヴィン・ゲイを、持ち前の明るさと飾らない人柄、チャーミングな容姿、何より、シャイなマーヴィンをグイグイと導くエネルギーで、一躍“理想の恋人”にまで押し上げてしまったのである。
 マーヴィンは、数々の女性シンガーとデュエットをしているが、タミーとの相性は抜群である(最悪の相性なのがダイアナ・ロス)。本来、スムースな歌い方にこだわるナット・キング・コールやシナトラ好きなマーヴィンと、モータウンの歌手にしては少々アーシーなタミー。この二人が組むと、まずはパンチのあるタミーが、敢えて三歩下がって、マーヴィンを強く前に立てる。そうすると、途端に、マーヴィンが誠実な青年らしい青臭いまでのシャウトで弾む。よしよしと頷きながら、確かで力強いタミーの声が、不安定なマーヴィンの声を支え、かえって自由に遊ばせてあげる。
 二人が組んだ瞬間、それまでにない自分を引き出し合うことで、完璧なカップルとなったのである。ジェントルだけど押しの弱いマーヴィンは、やがてタミーをリードし、本来快活なタミーは、自我を抑えることでマーヴィンに安心感を与え、今度はマーヴィンのエスコートを受けて光り輝く。スタジオに入り、二人が声を出した瞬間、立ち会ったミュージシャンたちは、思わず鳥肌が立ったと言う。
 しかし、である。互いに、音楽活動の中では恋人同士であっても、スタジオを離れれば、マーヴィンは妻の元へ、そしてタミーは、恋人であるテンプテーションズのスター、デイヴィッド・ラフィンの元へと、それぞれ別の道を帰途につく。実に切ない。その実生活の二人のロマンスが、上手く行ってなかっただけに。
 後に、マーヴィンは、タミーに対して好意と敬意はあったけど恋愛関係はなかった、と述べたという(マーヴィンとのデュエット=疑似恋愛の美しさに嫉妬したデイヴィッドが、タミーに暴力をふるったという真しやかな噂は、さりげなく某再現ドラマにも描かれている)。本当だと思う。恋愛関係はなかった。だが恋愛感情はあったのではないだろうか。マーヴィンは、タミーを愛していただろう。だが、愛しているからこそ、深入りしなかった。後に、セックス・シンボルとなり、ポルノの権化のようにさえ道化てみせるマーヴィンは、反面過剰に潔癖な男であったのだ。



タミー・テレル/THE BEST 1200 タミー・テレル





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Last updated  2006/12/13 09:32:56 PM
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