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カテゴリ: 書評
見出し:最高の香水とは、畢竟体臭である。

パトリック・ジェースキント著、池内紀訳『香水 ある人殺しの物語』(文芸春秋)

 果たして、映画を先に観るべきか、原作を読むべきか、迷ってしまう作品が世の中にはある。そして、そのどちらがすぐれていて、どちらが正解だったのかを判断するのは、大抵難しくない。
 今春公開された映画『パフューム』の原作であるこの小説。読後に、これは映画を先に観るべきでない作品と知る。
 汚濁した街・パリに立ちこめる臭気は、無臭の文字でこそ読者の想像力(汚臭の場合には、迷惑な想像力を、であるが)を掻き立て、やがて読者は、物語の展開につれてあらゆる世界を支配する絶世の香りに出会うことになる。いつしか、この一冊の本は強烈な、あるいは芳醇な、個性的な香りを放っていく。
 究極の匂いフェチ小説である本作はまた、嗅覚に訴える作品である。平板な匂いに馴れてしまった読者の鼻に、嗅覚の意味を思い出させる。脳トレならぬ、嗅トレである。鼻腔を全開にして通読いただきたい。
 本作品は、訳がまた良い。適度に古風で、適度に芝居がかった翻訳は、言葉選びと言葉遊びに訳者のセンスを嗅ぐことが出来る。
 孤独な主人公(あえてその理由は書かないが)の憑かれた短き生き様を伴走するにつけ、「この世で最高の香水とは、畢竟体臭のことである」という持論に確信を強めざるを得なかった。アラン・コルバンはいざ知らず、実在する調香の天才であるルカ・トゥーリンのドキュメンタリーとの併読をお薦めする。(了)


香水








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Last updated  2008/04/03 09:14:07 PM
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