バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

PR

Profile

快筆紳士

快筆紳士

Calendar

Archives

2025/12
2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2025/06
2025/05
2025/04
2025/03
2008/01/15
XML
カテゴリ: 書評
見出し:『ザ・シークレット』の秘密。

1: ロンダ・バーン著、山川紘矢・山川亜希子・佐野美代子訳『ザ・シークレット』(角川書店)
2:カレン・ケリー著、早野依子訳『ザ・シークレットの真実』(PHP研究所)

 『ザ・シークレット』(以下1)。世界的ベストセラーだそうである。この休みに書店で手にとったのは、訳者のファンだからである。既に、あらゆるメディアにおいて毀誉褒貶の渦中にある本書に、仮にも目を通すのであれば、その反証本たる『ザ・シークレットの真実』(以下2)も併読せねば公平さを欠く。事実、“ザ・シークレット=秘密”は、この二冊をもって一つのメッセージを発信しており、そのいずれのスタンスを選ぶかは読者の主体性に委ねられているというべきかも知れない。
 1に関して厳密に言えば、まずこれは所謂スピリチュアル本ではない。スピリットではなくマインドに訴えかけるモチベーショナルな内容で、大抵の読者なら、私と同じように、2を読むまでもなく、それほど新しいことが書いてあることではないことに気づくだろう。確かに、深く読めば思考や考察の幅は広がりそうだが、サラリと読ませるように書かれた本であり、だからまた、スヒリチュアルについて感覚するだけの情報も見当たらない。暗示的に読み進むうちに“その気”にさせるシンプルな仕掛けだ。思い切って、もっとオカルトに寄れば、それはまたそれで、新しさがあったはずだが、無論そういうつもりは著者にはないし、畑違いでもある。本書を貫くのはただ一つ、「念ずれば、かなう」(「引き寄せの法則」と呼ばれている)ということである。この昔から言い古されてきた根性論を、巧みなマーケティング戦略(個人的には、造本の巧みさや、それこそ『ダ・ヴィンチ・コード』の聖杯の謎解きでもしでかしそうな装丁といった、出版マーケティングの妙に唸らされた)とメディアミックスの魔法で、ちょっとした“秘密”、それも、誰にでも開かれているが、基本的にはそれを求める人へのダイレクトに響くメッセージ(そう、あたかもVIP会員向けの案内状のようだ)のように仕立てているところに、“秘密の秘密”たる所以があるのだ。
 2に盛り込まれる批判が本質的なのは、1で述べられたポジティヴィティが、現実世界では激しく矛盾すること、また1が暗に引用する諸宗教の教義に反して、利己的なモチベーション開発を促進していること、そしてさらには、1で、古今の成功者・偉人たちがあたかもみなこの“秘密”を秘かに使ってきたかのようなイメージを打ち出しているが、これらはまったく根拠のない援用、言葉尻を捉まえての独断的解釈であり、捏造であることを比較的丁寧(この種の本にしては、であるが)に証明して見せている点である。
ふたたびどちらのスタンスを採るかは読者次第であるが、両著者に私も加えた三者の意見の共通するところは、「ポジティブに考えることは、悪いことではない」ということ(2の著者と私は、「ただし、ポジティブなだけでは健全ではない」という意見を共有するに違いない)。
 さて、スピリチュアルという言葉は、そろそろ一括りではなく、さらに分化して理解されてゆく時代にすでに突入している、と個人的には感じている。大衆社会論や歴史的に見ると、洋の東西を問わず、スピリチュアリズムが十把ひとからげにされて手放しで称揚される時代というのは、社会不安の強い時期であり、しかもその直後には、必ずスピリチュアル批判がヒステリックに展開され、やがてさらなる物質至上主義社会がやってきて、社会が殺伐とする。精神主義への強力な反発、反動である。
 ちなみに、私が共著『何のために生き、死ぬの?―意味を探る旅』(地湧社)で述べたスピリチュアリズムとは、より包括的で、かつ人間を構成する要素の一つとして考えられたものであった。つまりは、学力や、知識、経験だけではないインテリジェンス、つまりは知性であり、少し前に流行った言い方をすれば、品格にあたるようなものであった。これは、スピリチュアリティが神秘主義にいたる前段階のスピリチュアリティと呼ぶべきものかもしれない。私は、一気に神秘主義へと飛躍してしまうのは、2の著者と同じように、“神秘的なるものからの大きな裏切りへの逆恨み”を人々の心身に刻み付けることになるのではないかと危惧している。そうでなくとも、神秘主義が、閉じこもりと逃避のシェルターへと安易に手段化されてしまう危険性もある。さらに、人間という弱い存在は、メッセージを己の都合よく曲解してしまうものだ。スピリチュリティが利己的な自己実現のツールとして喝采を浴びるとき、そこに潜む危険信号を看過してはならないだろう(その意味で1は、スピリチュアリティの理解を、世界的には数年遅らせてしまう本かもしれない)。



ザ・シークレットの真実


ザ・シークレットの真実


何のために生き、死ぬの?





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008/04/03 09:49:33 PM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Comments

プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
バーバリー マフラー アウトレット@ maercjodi@gmail.com はじめまして。突然のコメント。失礼しま…

Favorite Blog

カードケースを試作… New! 革人形の夢工房さん

新・さすらいのもの… さすらいのもの書きさん
価格・商品・性能比較 MOMO0623さん
抱きしめて 愛の姫.さん
天使と悪魔 ♡ り ん ご♡さん

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: