バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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カテゴリ: 書評
見出し:茶碗なんて、ただの土塊じゃねぇか。

谷松屋一玄庵戸田 鍾之助、戸田 博著『美を見抜く 眼の力 夢の美術館』(小学館)

 贅沢な、実に贅沢な本である。これだけ栄養価の高い本を目にすると、眼球がメタボリック・シンドロームになりそうである。
 本書は、私はこれまで読んだことがなかったが、雑誌『和樂』で2年間にわたって連載された記事を単行本化した『美を見抜く 眼の力』の「廉価版」である。
 江戸時代から続く関西屈指の道具商、谷松屋戸田商店・11代目戸田鍾之助氏と博氏父子が対談形式で、茶道具の魅力を語った『美を見抜く 眼の力』は、どちらかといえば玄人向けのスノビッシュでディレッタントな本だった。出版社説明によれば、「著者が日本有数の目利きであること、本書が全国に3000はある骨董店にとってのバイブル的な存在になったことなどから、税込8190円と高価ながら売れ行き好調です。 ただ、やや高価なため、骨董や茶道関係者以外の人には、若干敷居が高い書籍でした」。
 この「廉価版」は、『美を見抜く 眼の力』に新たな1章を加え、また戸田鍾之助氏が選ぶ「26の名茶器」などのコンセプトを一本通して、オールカラーで再編集したものである。重ねてコンセプトが一貫して素晴らしく、畳に置いた茶道具の写真の見せ方もまた秀逸で、本作りの丁寧さそのものもまた贅沢なのである。
 戸田鍾之助・ 博父子が茶道具の名品を手にしながら、まるでオモチャを手にした子供のように語る対談形式も微笑ましい。感受性豊かでやんちゃな父に、クールでいて開明派の息子、といった感があるが、博氏が、鍾之助氏を、父としてのみならず、当代随一の目利きとして、個別に尊敬し、またそこから学ぼうとしている姿勢もまたまばゆい。くだけた、ざっくばらんな中に、美しい一線がある。
 知識でなく、感覚のレベルで、あまりにすごいものを見ると人間逃げ出したくなる。本書は、頭でなく、眼で味わうもの。この“眼”には、高度な知識は当然、洗練された知性や感性が含まれている。それを信じて、その時点の自分で眺め味わう。目の前の名品が解らなければ、また自己研鑽して、縁があれば虚心坦懐相対峙すればいい。自己研鑽が偽りなく本物なら、成長した分、目の前の名物たちは新しい地平を見せてくれるだろう。
 谷松屋戸田商店・11代目戸田鍾之助一代記も痛快。古今の、垂涎ものの茶道具の数々に触れ、近代の数奇者たちとの交流は、華やかに過ぎて目もくらむばかりだ。誰かををうらやむ、とは、ひねこびたことだ。たとえ筆を持たない一日はあっても、誰かをうらやむ刹那は断固ない私であるが、やはり、世の中には天に愛されている人がいるものだと、氏の生き様には驚嘆の念を禁じえないが、そこは本全体から滲み出る氏の豪放磊落さと、何より道具に対する並々ならぬ命がけの恋心とがじわりと出汁になって、嫌味がない。



眼の力夢の美術館


眼の力

著作です: 何のために生き、死ぬの? 。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/04/03 10:08:00 PM
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