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カテゴリ: 書評
見出し:覚醒した“匂いの帝王”、“天才香料化学者”になる。

ルカ・トゥリン著、 山下 篤子訳『香りの愉しみ、匂いの秘密』(河出書房新社)

 そうか、私の生まれ年のワインは何が当たったか知らぬが、少なくともサンダルウッドという香りが発見された年であるらしい。ともあれ本書からは、ドキュメンタリー・スタイルだったルカ・トゥリン関連本『匂いの帝王』とは打って変わって、自身による書き下ろし、“匂いの帝王”から“天才香料化学者”になったルカの近影が垣間見える。
 化学や物理の素養があればたちどころに、偉大な先人たちの“鼻”が築いた功績のアウトラインが判るのだろうと思うと、不適格者の私は些か悔しい。
 加えて客観的・俯瞰的に、研究を取り巻く概要の今昔が語られる後半部分では、夢見がちだったルカの成長を見ると同時に覚醒したトーンがやけに目立ち、気の利いた文体(なるほど、分子に「スピリチュアル」という言葉を使うのは嫌なのか…)が唯一の救いとなる。あの荒削りなロマンティストの片鱗は、語り口にしか見られない。
 また、重ねて俯瞰的であるがゆえに、思わせぶりなタイトルほどに、香りの謎が詳らかになった、あるいはされているのでもない。かの芳醇で豊かな文章と併せて、これはサイエンス系読み物なのだ、と受け止めるのが正解だろう。
 ただし、あらゆる研究分野において、匂いや嗅覚に関する専門的研究や分析があまり注目されて来なかったこと、この可能性を秘めたセンスが開拓不十分である点についてのルカなりの反骨精神や不満が書かせた本書には、科学・化学のみのらず、人間そのものを考える数々の視点が仄かに薫っている。世界中が注目する生物物理学者、ルカ・トゥリンの芳しい道行に今後も目が離せない。(了)

*蛇足を承知で私の「香りの道行き」は コチラ コチラ


香りの愉しみ、匂いの秘密

著作です: 何のために生き、死ぬの? 。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/04/30 03:46:18 PM
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