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カテゴリ: 書評
見出し:アーサー王伝説を解く、“アヴァロンへの渡し舟”。

デイヴィッド・デイ著、山本史郎訳『図説 アーサー王伝説物語』(原書房)

 二世紀・ローマのアルトゥリウスという一指揮官が、王となり、キリスト教国の三偉人の一人となり、やがてイギリス王室の正当性の根拠とされ、何より、無限の世界観を持つ伝説中の人へと、いかにして変容して行ったかを解き明かすのが本書である。
本書の原題を直訳すると、まさにアーサー王伝説への探求(いざない)ということになり、この壮大な伝説への手引書・入門書となっている。
 しかし実際には、軽く表現すれば“イコール、ネタ本”でもあるから、イマジネーションの世界に漂っていたい読者は、逆に入門書としてではなく、一通り幻想世界を堪能した後に手に取った方が、順序としては適切かもしれない。
 それほどまでに、細かく丁寧に、伝説と伝説その人、および彼を取り巻く多彩な登場人物の生成の過程を、歴史や伝説から辿っている。
 本書の構成は、物語を形成するテーマを複数選び出し、それらの記述を柱に全体を作り上げる形となっており、テーマの選定、それらのボリュームおよび配置も、よく練られかつ手際よくまとめられている。そして図説というタイトルどおり、ヴィジュアル・イメージがふんだんに使用され、絢爛で、どこかファンタジックな彩りを本書に与えている。
 ただ一点だけ、一指揮官が、さまざまな民話や伝説を吸収しつつ西洋世界のファンタジーの理想的人物、アーキタイプへと育ちながら(=脚色されながら)拡散―拡大してきたのとは逆に、著者は、この物語のエッセンスを限られたエレメントへと集約していこうというベクトルで本書を牽引していく。シンプリファイすることで、物語のルーツへと正確に回帰していこうという試みに違いないのだが、もしこの物語を事実からではなく、やはりファンタジーの世界から眺めていたいという向きにとって、このアーサー王伝説を芳醇なものとしているのは、王と王を囲む円卓の騎士たちの存在である。英雄たちの群像。それが物語の精髄であるという点で、これをピカレスクへと転換した場合に於ける『水滸伝』のそれと同じ感覚があるのではないだろうか。
 出番が多い人物も、少ない人物も、それぞれにかけがえのない役割が公平にあり、それがまるで糸のように織られて巨大なタピストリーを作り上げる。本書には、あまりに英雄が不在なのだ。その点、不足や喰い足りなさが残るのが実に惜しい。絞り込まれ、選び残されたテーマである人物たち、特にマーリンについての考察は濃い。(了)


図説アーサー王伝説物語

何のために生き、死ぬの? 。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/08/21 02:14:50 PM
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