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2010.09.02
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カテゴリ: 本
トモ・チェセンといえば、ローツェ南壁疑惑の単独登攀で世界的に有名になってしまったクライマー。
その手記と、ヒマラヤ・クライミング史、疑惑の検証をまとめたのが
「孤独の山」(山と渓谷社)

トモ・チェセンの手記は、アルプス三大北壁冬季連続登攀から、
ヒマラヤ遠征、今も評価の高いジャヌー北壁、そしてローツェ南壁までを書いているが、
どれもがかなりサラリと触れているに過ぎず、登攀の詳細は書いていない。

しかも相変わらず、近藤等の悪訳で読みにくい。
日本語の表現になっていない部分もあり、文意がつかみきれない。

おもしろいのは、池田常道氏による「疑惑の系譜」



ローツェ南壁はヒマラヤ最大の課題とされ、1970年代からヨーロッパの屈強な登山家たちによる遠征が繰り返されたにもかかわらず、
チェセンがやるまで13隊、ことごとく登頂に失敗してきた。

登攀がなされたのは1990年4月末。
単独無酸素アルパイン・スタイルで一撃。
当時にしてはそのあまりの完璧な登攀で賞賛されたが、
ディテールのコメントが変わったり、写真盗用の疑いが出たりして
「本当に登頂したのか?」
と疑われるようになった。

そもそも登山やアルパイン・クライミングは自己満足の世界であり、
自分が納得すればそれでいいものだ。
トモ・チェセンが犯した最大の失敗は、疑惑に対して反論したことだ。


でもそれがまだ人類が成し得なかった困難な「初登」だったら、
羨望や嫉妬心が絡んで本当かどうか疑いたくなるものだろう。

トモ・チェセンがローツェ南壁登攀に納得しているのなら、もうそれでいい。

「登頂」とは山頂に立つことで、
アルパインの場合はルートそのものの登攀に主眼が置かれるから、


ローツェ南壁の場合、壁を抜けてから8516メートルの山頂まで、
悪絶なリッジが続いているという。
そのリスクを背負ってまで山頂に行く必要はない。

だからトモ・チェセンが登頂したか否かという議論は、
ローツェ南壁単独登攀を評価するうえでいささか的が外れている。

そもそもローツェ南壁自体本当に登ったのか?とも疑惑が持ち上がっているのだが。

チェセンによれば上部8200メートルで困難な登攀を強いられ、ピトンを残してきたらしい。
「それが証拠になる」
とチェセンは言った。

その後旧ソ連の隊がローツェ南壁から登頂しているが、チェセンとは違うラインを辿った。
2006年12月、日本隊が稜線まで抜けて、登頂はしていないが南壁の冬季初登攀に成功。
ここではチェセンとほぼ同じラインをとったが、8200メートルのパートは別ラインをとっている。
だから未だに「証拠のピトン」は確認されていない。

稜線に抜けた隊長の田辺治氏は
「山頂まで高差41メートル、距離にして2~300メートルの悪いリッジが続いており、
時間も遅く山頂まで行くと生きて還ってこられないかもしれない」
として、登頂せず、南壁登攀の成功までで納得して遠征を終えた。

その田辺氏はチェセンの登頂を「信じたい」としてはいるが、
単独無酸素で、あのリッジを山頂までトレースすることは想像できないと言っている。
「我々よりずっと優れた登攀能力を持ったチェセンなら可能かもしれない」とも。

その後、チェセンはアルパイン・クライミングの前線には一切登場していない。
それはチェセンが嘘をついていたからという見方もされているが、
おそらく疑惑をかける登山界に幻滅して背を向けたのだろう。

どうやらフリークライミングは続けているようで、
5.13を登る実力を維持しているらしい。
ヨーロッパのフリークライミングのコンペで裏方をやったりしている。

登頂の証明なんてどうでもいい。
伝えて欲しいのはその登攀を成したスピリッツであり、
それこそが登山界に限らず人に刺激を与えるものだと思う。

日本において、最近では山野井さん、今はGiri Giri Boysたちが、
世界のアルパインの先鋒に立っているが、
彼らもまた自分が納得できるクライミングができるかどうかで、山に向かっているだろう。





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Last updated  2010.09.02 10:29:54
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