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来た日の夕方には、見事な 水中ダンス
を披露してくれたのだが、その後の衰弱振りは目に余るものがあった。
エサに関する知識としては、大学で海洋生物学を学んだという夫の義弟エルカンを頼りにしたのだが、貝だけでなくタコも食べると聞いて、冷凍庫に後生大事にしまっておいた「高級品」のタコを思い切って解凍し、足の先端を与えてみたのに、なぜか全く無視されてしまった。
冷凍もので、活きが悪かったから、いけなかったのだろうか?
それとも、好物は貝だけで、タコはやっぱり食べないのだろうか?
口の肥えたヤツめ。
何度か口(たぶん)の近くにまで持って行ってやったのだが、管足で器用に払いのけてしまった。
他にエサになりそうな魚介類も手に入らず、また少ない海水も汚れる一方。
ヒトデの動きは見る見る衰えてきた。
せめて、一刻も早く海に行って新しい海水を持ち帰ってこなければ。
でなければ、海に返しに行くか。
逡巡しながらも、なかなか機会がつかめず、今日になってしまう。
そして、昨日までただの目の錯覚だと思っていたものが、今日はもう疑いようがない事実として現れてきた。
海から持ち帰ってきた時点では、 写真
でもご覧いただけるよう、完璧な星型をしていたヒトデ。昨日、足といっていいのか、星の5つある 尖がりの一部が欠けている
のに気付いたいたのだが、今日外出から帰ってみたら、それとは別の足が 途中からポッキリとちぎれて
しまっていたのである!
もしや、自分で自分の体を食べようとしたのであろうか?
とっくに食べてしまったのであろうか?
どんよりと砂利の上に横たわって伸びてしまっているヒトデを、恐々覗き込む。
まさか、死んでしまったのであろうか?
時々、管足をゆらゆらと動かしているところを見る限りでは、まだ息絶えてはないようだったが、虫の息であることには間違いないと思った。
ところが、一昨日、昨日と同じことが起こった。
夕方5時頃になるや、息も絶え絶えと思っていたヒトデが、 ちぎれた体でまたもやダンスを始めたのである
。
不思議なものである。マンションの10階にいながらにして、潮の満ち引きでも鋭く感じ取っているのであろうか?
「まだ、生きてるよーーっ!」
私は昨夜アンタルヤの自宅に帰ったばかりの夫と、娘ふたりを呼んだ。
やっぱり、海に返しに行こう!
私は、ヒトデの入ったガラス・ボウルを腕に抱え、娘ふたりと一緒に夫の車に乗り込んだ。
およそ5分。「私たちの海」コンヤアルトゥ海岸に着く。
海風が吹いて涼しくなる夕方。浜辺は涼を求める市民・リゾート客で一杯だった。その間をガラス・ボウルを抱えて進む私の姿は、少々奇異に映ったらしい。何を抱えているんだろうと透かして見る人もいる。
波打ち際には、大きな波が次々と打ち寄せていた。
ショートパンツ姿の夫に頼んで、海の中まで入ってもらい、ボウルの中にあった砂利と海水と一緒にヒトデを静かに水の中に放してもらった。
ジーンズの裾が濡れるのもかまわず、傷ついたヒトデを見送る娘たち。
「ヒトデ、行ったーっ?」
「ヒトデ、行ったのーーっ!?」
海風に向かって叫ぶ私の声は、かき消されてなかなか娘たちに届かない。ヒトデの生還をしかと確認したくて、娘たちに繰り返し訊いてしまう。
最初は娘たちの足元に沈んでいたヒトデだが、やがて高い波に掬われて見えなくなってしまったようだ。
よかった、これで。
生物の自己再生力には目覚しいものがある。きっとすぐにきれいな星型を取り戻してくれることだろう。
美味しいもの、一杯食べてね。
たった2日間だったが、ヒトデは私たちに小さな夏の記憶を残してくれた。
胸元に光るピンブローチのように、ちっちゃい星の記憶を。
私と一緒に、ヒトデの無事の生還を祈ってくださる方、
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