2012年04月25日
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カテゴリ: 音楽 [JAZZ]
John Coltrane in 1963
①フリーに癒やしを求めたコルトレーン
②フリーに緊張感を見い出したコールマン
③フリーと調和を同居させたメセニー
John Coltrane​​


やさしいJAZZ入門 第5回
めざせ Blue Note 東京
もう JAZZ なんて怖くない!!
『フリーなJAZZ』


​​​​​​​​​​■

さて・・・今回は冒険の旅に出かけてみましょう。 さあ、何の冒険か
フリー・ジャズ の世界へ旅立立って頂きます! と、

ここでページを閉じないでください

大丈夫です、 同じミュージシャンが演奏する 普通の曲 もご用意しております

再生中精神的に無理になりましたら、
即座にそちらを再生されますと宜しいかと思います。

アメとムチ  というわけです。 

先にフリーなジャズを体験されまして充分ムチ打たれた所を
普通の曲を再生されて暫しアメをご堪能頂く

と言ったシステムになってございます・・・

何やら新手の××クラブのご案内の様になっていますが、
当講座は到って良心的でございますのでご安心を・・・


フリージャズについてはウィキペディアなどに記述がありますが、
少しでも理解する為には

実際に聴いて体験するのが一番だと思います。

ジャズとはどんなにアウトしようとも理論に基づいた世界で
ことフリーに到ってはその範疇に無く

本来ジャズの枠内で収まるものですら無い、偶発的で観念的な音空間を
目利きする世界であるように思われます。

難しいのはここまでで
子供の様な気持ちになって音に接してみると、

見えてくるものがあるかもしれません。

ただし(あくまで)念の為に申し上げるが

精神状態のすぐれない方や心臓の弱い方など、雑音の様な音響を耳にして
体調を崩されるような可能性のある方の視聴は固くお断りいたします。



というわけで、今回も一緒に勉強していきましょう♪


△▼ △▼ △▼
■「フリー」に癒やしを求めたコルトレーン■
John Coltrane 1963
John Coltrane (Wikimedia)

【ムチ】 『フリーな曲の方』
John Coltrane - Ascension (1965)​
​ジョン・コルトレーン - アセンション​
Written by Coltrane

収録アルバム『Ascension』


アメリカのサックス奏者。
モードでもフリーでも大きな功績を残したジャズ界の巨匠。

マイルス同様、名前だけは聞いたことのあるミュージシャンの代表で
ジャズに『気難しい』『難解』のイメージがあるとしたら。
全部この人のせいです。

椅子に座って穏やかにたたずむコルトレーンが写る、
本作が収録されたアルバムは

ジャケットを間違えたのではと思う程、
騒がしさに満ちて調和の欠片も無い演奏が飛び出して来ます。

この演奏から 何かの啓示や意味を見出そうとしても
意味は無いと言っているかの様な

それぞれの演奏者が、それぞれの考えと
それぞれのタイミングで演奏し

纏まった「集団」では無く、バラバラな「集まり」そのものを意識して
演奏しているような

一つの目的の為に、チームが一丸となる整然 では無く
それぞれの目的の下、人々が集う盛況を

そのまま表現している様な印象を受けます。

【アメ】 『美しい曲の方』
John Coltrane - Say It ​ (1962)​
​ジョン・コルトレーン - セイ・イット​
Written by Loesser/McHugh

収録アルバム 『ジョン・コルトレーン/ バラード』


対して美しいメロディーに満ちた曲が収録された方の
「バラード」 のジャケットからは

なぜかおびえた様に目を剥いたコルトレーンが 
左下に斜に構えた様な態度を取っており、

まるでコルトレーンにとって調和された美しさには
不自然で居心地の良くないものに捉えているかの

印象を受けるものがあります。

それは、まるで
これまで上質で芸術性の高い作品を仕上げてきた代償として

音楽の為に一丸となって、各人が緊張の糸を張り詰めて
最高に美しい演奏を引き出す為に精神をすり減らし

身を切る思いで演奏した挙げ句
鬱を患うほどに憔悴する様な

そんな壮絶な演奏活動を彷彿とさせるものが
怯えたコルトレーンが写ったジャケットから

見えてくる様な気がします。


一方で、安らかな表情で佇むコルトレーンが写った
「アセンション」 のジャケットからは

「黒人解放」のムーブメントと出会う中で
「フリー」に目覚めたコルトレーンが

無秩序な演奏の中に「孤立」しない「繋がり」を感じて

「孤独」ではない平穏の中に居る様な感覚を
意味深いものに思っているかの

そんな印象を受けるものがあります。


思うにコルトレーンにとって 「フリー」 とは

さながら、都会の街頭で自由に演奏する
「ストリート・ミュージシャン」 の様に

「無秩序」な雑踏の中で「ありのまま」の自分で居られる
「癒やし」 を求める 必要 なもの、だったのかも

しれません。


△▼ △▼ △▼
■「フリー」に緊張感を見出したコールマン■
Ornette-coleman 06N7006sw
Ornette Coleman (Wikimedia)

【ムチ】 『フリーな曲の方』
​​​​​Ornette Coleman with Pat Metheny - Happy Hour (1987) ​​
オーネット・コールマン - ハッピー・アワー
Written by Coleman

アルバム
『オーネット・コールマン&プライム・タイム / ヴァージン・ビューティー』



オーネット・コールマンはアメリカのサックス奏者で
50年代後期に実験的な作品をリリースし後に

フリー・ジャズの流れを生み出した
フリージャズの生みの親と言っても過言ではない人物です。

「フリージャズ」そのものは誰かが生み出したものではありませんが、

50年代後期から60年代前半にかけて「黒人解放運動」に呼応した
同時多発的に発生したムーブメントと呼べる動きであると言えます。


コールマンの「フリー」の考え方はユニークで 
『何をしても良いが人の邪魔だけはしない』というルールで

演奏する所にあります。

本曲は、アルバムバージョンとは異なった
ジャズギタリストの パット・メセニー が参加したテイクとなりますが

このメセニーのギターが本テイクの一つのハイライトとなっております。

まずは都会のお祭り騒ぎをスケッチした様な演奏で始まりますが
フリーでありながら、愉快でユニークな印象で占められた所に

本曲の特徴があります。

誰が主軸になっている訳でも無いフリーな演奏が続きますが

GR300シンセギターを用いたメセニーのソロが始まると
メセニーの為に演奏者は一旦引くので

オーネット・コールマンの「フリー」とは
「雑然」とした中で巨大な「意思」を感じる様な、

ある種の「様式」の中で「流れ」を汲んだ
脚本の無い「ドラマ」があり、

それが漠然と「都会のお祭り」の様な印象を
与えるのかもしれません。

メセニーのギターは祭りもいよいよ最高潮に達したかの様に、
興奮の極みに上り詰めて行き

よく見ると 途中4分過ぎでメセニーのギターの弦が切れるのですが、

それでもメセニーは調子を狂わせる事無く
むしろ更にヒートアップしたプレイを続けて行くので

巨大な山車が思わぬハプニングに見舞われたかの
狂気にも満ちた狂乱の様が描かれ、

それを静かに目を閉じ聞き入るコールマンはやがて口元をニヤリと動かし
何かに納得したのか、おもむろにゆっくりと頷いた所で

メセニーのギターがフェイドアウトし
張り詰めていた様な緊張の糸がほぐれたかの様に

元の愉快でユニークな雑踏をスケッチした演奏に戻って行きます。


コルトレーンはフリーの中に癒やしを見出しましたが、

コールマンのフリーは
「調和」された 「サムシング・エルス!」 のアルバム中には聴かれない

大勢の雑然とした集まりの中で意思を持った巨大な流れが生まれる瞬間の

「緊張感」を切り出す事を愉しんでいるかの演奏に思われ、

ある種「調和」された「サムシング・エルス!」の方が
「落ち着き」感があるので、

同じ「フリー」でありながら、コルトレーンとは取り組み方が 真逆 な所に
大きな特徴がある様に思います。


【アメ】 『普通な曲の方』
Ornette Coleman - When will the blues leave ​(1958)​
​オーネット・コールマン - ホエン・ウィル・ザ・ブルース・リーブ​
Written by Coleman

アルバム 『オーネット・コールマン/サムシング・エルス!』より


△▼ △▼ △▼
■「フリー」と「調和」を同居させたメセニー■
Pat Metheny Venice
Pat Metheny (Wikimedia)

【ムチ】 『フリーな曲の方』
​​ Pat Metheny/Ornette Coleman - Song X (1984) ​​
​P・メセニー/O・コールマン - ソングX​
Written by Coleman

収録アルバム『ソング X』

GKSuJURd9RI&t=26s
【ムチ】 『フリーな曲の方』
Pat Metheny Group - Forward March ​(1984)
​パット・メセニー - フォワード・マーチ​
Written by Metheny

収録アルバム『ファースト・サークル/ パット・メセニー・グループ』


連続しての【ムチ】の楽曲に
どれだけ打たれ強いのか試されているかの様ですがw

と言った所でお馴染みの パット・メセニーの登場です。


一曲目は、コールマンとのコラボで
いたって 正統派 なフリーの演奏です。

何をして「正統派」と定義するかは 定かではありませんが、

この場合は通常のジャズ同様に
テーマを挟んで後はお好きにというタイプのものです。


2曲目は、
何ともヨレた小学校の鼓笛隊の練習風景の様な演奏に聴こえますが、

このバラけた感じが、これから成長の余地がある子供の個性を表した様な

ドラマチックな楽曲を得意としたメセニーらしい
何かを「表現」する一環としての

「フリー」の演奏を見て取れるものがあります。


この曲を聴いた後、次の 『ファーストサークル』 を聴くと 
メセニーの狙いがおぼろげながら掴める様な気がして来ます。

一曲目で、成長の余地がある 子供の健気さを表現し、

二曲目で、
やがて子供達が仲間を作り共に行動し
楽しい事や辛い事、悲しい事を経験していく中で

厚い友情の絆で結ばれて行き

様々な苦境を乗り越えながら、成長していく姿を
描いているかの

「ジュブナイル」 作品の連作と捉えてみますと、

全く個性の違った曲を並べる事で、
何かを表現する方法論の一環として

連続性を利用した 「フリー」 「調和」 を同居させる
導入法の一つとして 捉える事が出来、

ある意味 「フリージャズ」の在り方 としての
完成形 を見る様な、

実験意欲の高いメセニーらしい、
非常に意義のある表現法と言えるものがあります。


【アメ】 『美しい曲の方』

​​Pat Metheny Group - First Circle (1984) ​​​
​パット・メセニー - ファーストサークル​

Written by Metheny/Mays

収録アルバム『ファースト・サークル/ パット・メセニー・グループ』



△▼ △▼ △▼

他にもセシル・テイラー、アルバート・アイラーなどの名前が挙げられるが
フリーと言うより前衛音楽の括りに入り多様化が過ぎるものや

燃やしたピアノを弾き続けた日本の山下 洋輔など、インパクトはあるが
上級者向けだったりと、自分なりの方法論を持った演奏者が大勢存在する。

その多くが、コールマンの影響を言及し
その目的は既存の演奏法に従わない、現状打開の他は

束縛からの自由 が理由と言われている。

△▼ △▼ △▼

と言った所で文字数の制限に達しましたので、本日の講義は終了です。

本日の成果として、

もしシタリ顔の自称・ジャズ・マニアがフリーに付いて尋ねて来る様な
稀有な場面に出くわしたら

『フリージャズと言えば、コルトレーンかしら』 
と語り連中にムチを入れた所で

『でも良く分からないケド・・・』と、暫しアメを与え間髪入れずに

『コールマンもいいわねエ』と、トドメのムチを入れてみましょう。 

では次回 最終回 まで、ごきげんよう☆


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最終更新日  2021年10月24日 07時32分00秒
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