庶民生活あれこれ (19)

この絵、作業着の仕事場を飛び出し、店の品物を盗んだ少年をひっ捕らえた主が、少年をいかめしい警察署に突き出しに来た図に見えませんか。主は嫌がる少年を乱暴に引っつかんで、少年の尻を蹴飛ばしながら、警察署の入口まで引き連れてきて、なお嫌がる少年をさらに引っ立てようとしているように見えます。
いかめしい前方の建物が、こうした推測を掻き立てます。しかし、事実は違うのです。
この絵は、1848年1月13日の「シャリヴァリ」紙に掲載された木版画で、「息子を学問の道に押し込もうと…」という題がつけられています。
そうなんです。この手工業者は、学校へ行ったものと思っていた息子が、学校へは行かずに路上で遊んでいることを、誰かに教えられ、仕事着のまま飛び出して息子をひっ捕らえ、嫌がる息子を小学校の門前まで、引きずってきた所なのです。
それにしても、小学校の建物がいかめしいですね。塀は高く、まるで監獄のようです。学校の門をくぐった子ども達は、下校時刻まで絶対に外に出さずに(つまり逃がさずに)、徹底的に社会の規律を教え込むと、親たちに約束しているようです。
19世紀も半ば、ブルジョワ階級の最下層に位置する手工業者や小店主にも、教育熱が及んできていたことが、ここから読み取れます。
親たちはそのうに考えたとしても、腕白盛りの子ども達にとっては、自由がなく、規律ばかりが強調される学校へ通うことは、突然降って湧いた災難だったのです。ですから小学校(初等教育学校)での子ども達は、隙あらば脱走したり、サボったりするのが常だったのです。
無償の義務教育の始まる少し前の時代ですが、小学校の定着には、かなりの苦労があったのです。
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