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2021.02.19
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カテゴリ: 心暖物語

私は​ 黄桜のCMに出ている女性 ​を見て、10000年に一人だと思ったものです。
単なる私の好みですが……。(右クリックで)
それにしても、1000年に一人の美少女が双子と言うのもすごいですね。

日本酒も実際の私は好きなんだが、種類がたくさんあって迷ってしまう。
それで、隣の客が注文した銘柄が聞こえてくると、
つい冒険したくなり、同じものを頼んだりします。
10000年に一人の美少女、​​ 真野恵里菜 ​ というんですね。知らなかった。


生意気な小娘に、粋な決めセリフを言ったつもりが、
一枚上手の返し技に、唸ったことってないでしょうか。
まあ、それも晴れ晴れしたモノであれば、
ひと時の恋のような、勘違いの気持ちになったりして。

***利き酒***

六本木。久しぶりに都会に戻ってきた。
この街も不景気のあおりを食っていた。
呼び込みがすさましいのだ。
無国籍の女たちが私の腕を引っぱり、暗黒の世界に引きずり込もうとする。

私はがっかりした。
ひたすら明るく、
きらびやかで、
それでいて気取らない六本木を気に入っていたのだ。

私はメインの通りからはずれ、裏道に入った。
赤堤灯系の店が、ちらりほらりと並んでいる。
その中で、遠目にも目立つ、
大きな釜飯用の釜を形取った看板を見つけた。

私は看板の下までやってきて、それを見上げた。
丁度その時である。
地下から階段を、こきみよい下駄の音をさせて板さんが登ってきた。
「ヘイ、いらっしゃい。席、空いていますよ」

タイミングのよいことである。
「ゆっくり、ウィスキーを飲めますか」
私の目的はそれだけだ。
「ヘイ、落ち着いてやす。俺はおっちょこちょいですが」

私は板さんについていった。
「そこを引いてお入り下さい。昔のおきや作りになっています」
地下の入り口に着くと、
板さんがそう言って私をすすめた。

格子の引き戸である。
それも、へその高さほどしかない。
客は腰を折曲げて入らなければいけない。
外人さんや、太った人にはつらい入口だ。

内部は、雪に閉ざされた古民家といった雰囲気だ。
囲炉裏こそないが、掘り机が3つあり、柱はすすけたような配色。
調度品も骨董のタンスが並べられている。
きわめつけは天井をはう電線だ。

白い陶器のがいしが2個づつ平行に並び、
それに布で編込まれた被服の電線が
近代化のあかしとばかりに取り付けられている。
長方形の掘り机の、一方の端に私は案内された。

「ジョニ黒のオンザロックを、ダブルで」
お通しのだいこんの煮込みが置かれる前に、私は注文していた。
机の他方の端には1人の女を含む4人の若者が座っていた。
ビジネスマン風だ。場所をわきまえて、小さな声ではしゃいでいた。


彼等の前には、それぞれにマスの中に入ったガラスのコップがある。
コップには並々と透明な液体が入っていて、
縁からこぼれ出た液体が、マスの中にたまっていた。

面白いものだ。こぼれるほど酒を注がれると得した気分になる。
それぞれが違う酒を選んだらしい。
4人はまず自分のマスからコップを出し、マスの中味を飲み干す。
次に他のコップの酒を少しづつマスの中にこぼし、飲むのである。

これだと女も男との間接キッスを気にせず酒が飲める。
「なるほど」
私は一人、ジョニ黒を舐めながら感心していた。
ただし、今のところ他のウィスキーは飲むつもりはない。

私から見て、正面の端に1人、右側に2人の男が、
そして、左側に女が座っている。
私の目は当然、女に引き付けられる。
女はシックなグレーのスーツを着こなしていた。

胸元から除いている真っ赤なブラウスがワンポイントの花だ。
キュートな日本風の顔だちに、笑顔がとても似合っていた。
そばにいる私までも明るくさせてくれる。
けっこう飲めるようだ。

「これ、甘すぎるわ。こちらの方が辛口で飲みやすい」
いっぱしの批評家である。
ほのかに朱の色が頬に浮かんでいる。
こんな時、男たちは幼く見える。

3人の男はみな同じく、にこやかで、穏やかで、優しいのだが、
控えめな態度で、女の前に思いきって出て見ようとする者はいない。
女と勝負する者がいないと見える。
まあいい、私の視界から男たちが消えていく。

2杯目のロックが私のグラスの中で、『カラン』と乾いた音を響かせた。
その音に女の頭がピクンと反応した。
そして、その頭がそろりと私の方を振り向いたのである。
私の目は女の目をしっかり捕えた。

女をおくびれもせず、小さく私に会釈した。
私にはそう思えた。
私の手元をちらっと見やると、素早く頭を戻した。
「ふーん」

私は理解に苦しんだ。
「よし」
私はもう一度、『カチン』今度はわざとグラフを振りロックを響かせた。
女の頭がまたピクンと反応した。 しかし、今度は振り向かなかった。

音の出どこは分かっているのだ。
「クックック……」
これでは意地悪じいさんだな。
3杯目のオンザロックが運ばれてきた。

ロックが液体の中に浮かんで回転している。 この状態ではロックは響かない。
私はこの液体を一気に飲み干そうかと思案していた。
しかし、さすがに3杯目だ。
ロックを響かせる前に、私の頭の中がまわってしまいそうである。

と、その時。
グラスを見つめる私の視界の隅に、女の顔が現れた。
いつの間にか、私の隣に座っているのだ。
下から私を覗いている。

その顔は満面に笑みをたたえている。
「えっ、何」
私は何か変な顔をしていたのか、
顔に何かついているのだろうか。私は手で顔を拭った。

「ティスティングしてもいいですか」
女は手のひらに赤いマスを頂き、軽やかに美声をころがした。
何事が起こったのか一瞬戸惑った。
私は女の笑顔と、奥で囃し立てている3人の男たちの顔を交互に見つめた。

「ずうずうしんだよ、夏ちゃんは」
「酔っ払っているんですよ」
「自分で注文すればいいじゃないか」
私はもう一度、女の手のひらのマスを見て理解した。

一口、私のジョミ黒を飲ませろというのだ。
「先ほどの音がとても美味しそうだったので。
 それに呼びましたよね、わたしを」
(アチャー、ばれてるよ)

私は心の中で顔を赤らめた。
「どうぞ。そのままでいいよ。
 マスに入れると日本酒と味が混じるから」
「でも……」

そうか、女は私との間接キッスを気にしているのだ。
「唇を奪われるのを気にしているのなら、
 すべて飲み干せばいい」
女の笑顔がフラッシュした。

女はグラスを手にとると、
一口、ゴックンと至福の液体を喉に流しこんだ。
ふうと小さく息を吐くと、グラスを私の目の前に戻し、
「それでは奪って下さい」

そう言って、仲間のところに戻っていった。
「奪って下さいか」
私は琥珀色の液体に、彼女の唾液が拡散していくのを想像していた。
液体のなかでロックがゆっくり回転している。

私はグラスに手を伸ばすことを躊躇しているのだ。
「やられたな」


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最終更新日  2021.02.19 10:52:39
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