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2021.02.20
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カテゴリ: 心暖物語
​酒飲みがつい歌ってしまいたくなる「酒と泪と男と女」
この歌がお酒のCMに使われていないかと探したが、
意外と使われていなかった。
でも、​ カラオケバージョン ​を見つけた。大いに歌ってください。


夜の街を酔いを求めて彷徨うと、
おしゃれな物語ばかりじゃない。
どちらかというと、ごちゃごちゃした
生活の染み込んだ話の方がありふれているのだ。​

**はしご酒 袖振り合うも酔っ払い**​​​

1:きっかけ

仕事で山陽地方の街にやってきている。
私はちょっと、有頂天になっていた。
別の女の記憶を上塗りすることで、
長年追い求めていた女の記憶を頭から抹殺しようとしていたのだ。

一つの事例は、酒癖の悪い女子大生の泣き言を聞いて、
もてた気分になったことである。
妄想は可愛いもので、 私は建て前を言いつつ、安全な逃げ道を作りつつ、
逃げ腰でいながら、何かを期待していたのだが、泡と消えた。

再会はドラマチックに秘密裏にである。
しかし、あっけないのはその砕かれようだ。
視線は合っていても、留まることがない。
行きすぎてしまうのだ。

だったらこっちから止める動きを、と思うのだが、
それはきっと、わずかに残った私のプライドが許さない。
そんなものをプライドと言うのだろうか? 
私は酔っている。頭の中は床にばらまいたジグソーパズルのようだ。

​​​
2:一人酒

時を戻そう。とりあえず酔っぱらいたい。
足早に、
居酒屋『磯』を目指した。
ホテルのカウンターで教えられた店だ。


第2候補は駅前の居酒屋『樽元』。
長いカウンター席に空きを見つけ座ることができた。
多少の余裕があった。
多少の損をした気になったが、酒の味はどちらも同じであろう。

席の隣には、
髪を黄金色に爆発させた女子学生とその友人、
反対側には
OL 4人組。
その間で私は一人で酒を飲んでいる。

OLたちは食べるピッチが早い。
酒を飲むピッチも、また飲む種類も多様である。
うー、しゃこ天がうまい。甘い。
500円。

3:盗み聞き

私は耳をすましている。
そこへ突然、さわらのみそ焼きが。
ちょっと待て、思ったよりずっと小さいが、旨い。
300円。

気を取り直して、耳をすましている。
黄金色の女が話している。
話相手はノーマルな頭の女子大生だ。
彼等は恋愛論を語っていた。

基本的には、女の酒は奇麗だ。
黄金色はミッチーというらしい。2人から断片的に話が漏れてくる。
「好きになったらどこまでもよ。
 つれなくされても、好きな理由はたくさんあるわ」

これ名言だな。
「7ヵ月も続いているのよ。
 私の最長記録。ここで別れたらショックでしょ」
と言うことだそうだ。彼女たちの恋はチャットサイズなのだ。

4:女のルール、男のルール

恋愛論を語る上での女のルールは、だいたいにおいて一方通行である。
一人が自分の実情について物語り、それを他方が人生相談するのである。
物知り顔で答えるが、同じだけの人生しか歩んでいない。
できることは、肯定することだけなのだ。

「分かるわ」 この言葉だ。
ここで、「バカだ、ちょんだ」と反対する人は友達にはなれない。
そこに存在する理由は擁護者だからだ。
聞くことだけ、話は受け身に聞き流すという事らしい。

これが男だと、
「バカだ、ちょんだ」とどやして、
知ったかぶりで「当たって砕けろ」と言う。
多くは砕け散るのを期待している。これが男のルールだ。

5:携帯電話の登場

とうとう携帯電話が登場した。彼氏に電話している。実時間の恋愛講座だ。
分かった。私はひらめいた。
彼女達の時間軸は、私と違うのだ。
超ハイスピードの空想空間で恋をしているから、結論が早いのだ。

その分、多くの恋ができるのかも知れないが、
そこにとどまって考えている時間はない。
つまり、
実 空間における恋を楽しんでいる暇などないのだ。

今の時代、時間の流れがどんどん速くなっている。
携帯のボタンを押すことで、
人はその流れに命綱を投げ込む。
自分がその流れに沿って、連れていかれる感覚に酔えるのだ。

ここで、2人は退場した。
速い。食べるのも、飲むのも、しゃべるのも。
とても奇麗なお酒でした。2人でビール2本。熱かんを大小1本ずつ。
これでは酔わないだろう。

6:一人酒について

騒がしい店で一人酒をしている人を見ると、大体が他人を見ている。
他人を肴に飲んでいるのだ。
それは寂しい酒なのだろうか、
それとも実空間の世界との接点を楽しんでいるのだろうか。

その酒は他人からみれば、
明らかに寂しい酒だ。
しかし、当人にとっては、
この酒が無いほうがもっと寂しいのだ。

パリでローストビーフとワインで夕食を楽しむ老婦人がいた。
その時の老婦人は、初めてパリに来て浮かれる学生たちの、
賑やかな食事風景を見て微笑んでいた。
老婦人にとっては、喧騒の場が生への繋がりを感じる時だったのである。

7:一人酒の練習

私は一人酒を練習している。
一番楽なのは、居酒屋のメニューに『お進めコース』があって、
順番に料理が出てくる時だ。
「これ何ですか」、「おいしいですね」、「今が季節なんですか」

板さんや、仲居さんにその都度、質問していればいいのだ。
一番やっかいなのは、ごく普通の居酒屋に入って、
雑音の中に身を置くときだ。
今の私である。

私はそんなとき、何かをメモする振りをしている。
それは逃げだ。
じっくり酒を飲め。
寂しい酒を。

8:酔った

地酒、極聖(ごくきわみ)+5度、300 ml を2本。
酔った。
でもね、
酔ったら男の本懐は遂げられないのだ。

先程、見るからに金持ち風の男ときらびやかなの女が入ってきた。
秘め事前の腹ごしらえといったところである。
男は巧みに自制している。
大生ビールの後は、酎ハイなのだ。

飲みたいが飲んだら役たたずになる。
その葛藤なのである。
「お兄さん、さわらのみそ焼き、お願い」
女の鼻にかかった声を最後に、私は店を出た。

9:ポン引き達の夜

妄想を絶たれて、一人酒に酔いしれた後、
直ぐにはホテルに帰り難くて、夜の街を彷徨った。
繁華街を離れ、公園につながる道に出る。
そこで自転車に乗った50過ぎのおじさん
A から声を掛けられた。

振り向くと、
おじさん
A は小指を立てて単刀直入に用件をおっしゃった。
「女いらんか」
私ははじけるように笑ってしまった。

女はものではないぞ! 
私は相当に酔っていた。役立たずだ。
手を振って、そそくさとその場を2〜3m歩いて、
ちらっと後ろを振り向いた。

おじさん
A は自転車をころがし、次なる獲物を求めて行った。
私はその姿にもう一度腹を抱えた。
そして私は頭を元に戻した。
そこに、にこにこ顔のおじさん B がいた。

10:必要悪

おじさん B のにこやかさに思わず私は聞いてしまった。
「何ですか。これですか」
私は小指を立てていた。
「必要悪ですから。いいんですよ」

「私、経験ないんですよ、勇気がなくて」
そんなこんなの話をしていたら、話が横にずれていった。
「今、若い流れ者と同居してんだよ。袖振り合うもなんとかってやつでね。
 そいつはここに流れてきて、女とくっついて、子供を作ってしまった。

 その女と子供のために働いていたんだけど、
 どうにもならなくなって、別れてしまったんだ。
 田舎に帰ると言ってたが、今ごろいなくなったかもしれない。
 俺、最近家に帰っていないから」

多くのことを一気に語ろうとしているので、
話が飛び飛びになってしまっている。
人情話で私を信用させようとしているのか、
それとも自分の心配事を誰かに聞いて欲しいのか。

「
たしょうの縁だよ。 袖振り合うもたしょうの縁 」
「えっ」
おじさんは、ぽかんと口を開けている。そして、
「たしょうって、どんな字だ」

「知らないよ」
にこにこしながら、私はおじさん B もパスしていった。



11:追伸

多生:仏語。
   1、何度も生まれ変わってくること。
   2、多くのものを生かすこと。

へえー、こんな字書くんだ。多少だと思っていた。

​

袖振り合うも多生の縁[CD] / Chicago Poodle







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最終更新日  2021.02.20 16:27:52
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