2006年04月24日
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テーマ: 妄想劇場(28)
カテゴリ: カテゴリ未分類
一部で話題のドキュメンタリー映画
「ヨコハマメリー」 を観た。

今は1日1回、午前10時半からしか上映されてない。
月曜だし、映画にしては早いから、
ガラガラだろうとたかをくくっていたら、
ほぼ満員の入りだった。

映画はとても良かった。
制作者が誠実に、
丁寧にカメラを回し続けた事が良くわかった。
この類のドキュメンタリー映画は、
作り手側の被写体やテーマに対しての強い思いが、
現れ過ぎてしまうことがあるが、
この映画はちょっと違った。

主人公のヨコハマメリーを
敢えて、たくさん登場させずに、
彼女の周りにいた人々の証言を中心に
構成したのが成功している。

メリーさんを友情で支えた、
シャンソン歌手の元次郎さんがいい。
この人自身の人生もとても深く
だからこそ、その歌声には迫力がある。

彼女と親交が深かった
クリーニング屋さん、美容室、化粧品やさん…。
皆さん人情味があってメリーさんとの思い出を語っている。

かといって、作品全体が懐古趣味的な
昭和の古き良き人情話に向かっているかといえば、
そうではない。

そうではない所が凄い。

おそらく、30代の監督にとって、
ヨコハマメリーの存在は、
当たり前に存在していた風景の一部であり、
それ以上でも
それ以下でもなかったのだ。

取材の過程で知り得た事実は
もっともっとたくさんあったことだろう。

でも、暴露的にそれを描く事をせず、
強いメッセージ性を込める事もせず、
淡々とメリーさんを巡る人々の口から
彼女と彼女が生きた時代のヨコハマを
語らせる事によって作品を成り立たせたことで、
街の一風景であった、メリーさんという存在が
巧みに表現されているように思う。

それでいて、忽然と姿を消した
彼女のその後の消息も
きっちりと描いているので、
ドキュメンタリーとして観ている側も
フラストレーションを抱かずに済む。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

私は20年以上前、まだ学生だった頃
伊勢崎町で、
初めてヨコハマメリーさんを見かけた。

白塗りの顔に、
白っぽい
フランス人形が着ているようなドレス姿で
たくさんの荷物を持って歩いている姿は異様だった。

その後、ロケの最中に一度、
馬車道の辺りで遭遇した覚えがある。

正直、その姿から、
“ちょっといっちゃったおばあさん”
だと、思っていた。

何かの時に飲み屋で、
『彼女が“ハマのメリー”で
横浜ではとても有名な街娼だった』
と聞いたことがあった。
私が聞いた噂では、
『今でも客を取っている』
との事だった。

それが14,5年前の事だ。

映画によれば、
彼女が街から姿を消したのは1995年らしい。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

メリーさんに限らず、
どこの街にも、いつでもそこにいる、
一風変った有名人というのがいる。

新宿で派手な衣装とかつらで
新聞配っている
通称タイガーマスクのおじさんとかね。

最近は見かけないが、彼も私が学生の頃から、
あの姿で物陰から突然現れて、
道行く女の子を驚かせたり、
笛吹きながら自転車をこいだりしていた。

街頭でロケをしていると
すぐにカメラに映ろうとして
邪魔になったりすることもあった。

原宿の歩行者天国に必ず現れる、
片手に女の子の人形を持って、
時々話し掛けているダンディなおじさんもいた。

以前は腹話術師だったという噂も聞いたが、真実は知らない。
あの人も、もう15年以上見ていない。
80年代後半にはよく見かけたのだが。
どなたか消息ご存じないですか?

そういえば、
新宿駅の雑踏の中、
首から
「私の詩集」と書いた
小さな色紙大の看板をぶら下げて、
じっと佇んで詩集を売っている
いかにも薄倖そうな女の子もいた。

それこそ私が学生の頃は
毎日見かけたのだが、
いつしかいなくなった。

・・・と、思ったら、
つい先日、再び見かけたのだ!

どんな詩を売っているのか?
果たして売れるのか?
とても気になるのだが、
声を掛ける勇気もなく、
そのまま通り過ぎてしまったのだが、
それよりも、何よりも驚きだったのは…。

20年ぶりぐらいに見た、その女の子が
全然歳とって無かったのだ!

いや、夜だったし、
遠目だったからそう見えただけなのかもしれないけどね。
少なくとも私には歳を取ったようには見えなかった。

その瞬間、ハッと気がついたら
20年の時が戻り、
22歳の頃の私になっていた。

髪も黒々として
体重も20キロ減っていた!

……
……

……本当にそうだったとしたら
どんなにいい事だろう…

例によっていつもの妄想だった・・・。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

でも、こういう人たちって
どこかミステリアスな存在で
居続けて欲しいと思いません?

それが更なる都市伝説めいたものを
生み出す要因にもなるのだろうけれど。

いつも同じ場所に必ずいる人というのは、
言い換えれば
いつも変らない人ということだ。

人はどんどん変わっていかねばならない。
嫌でも年齢は重なってゆき、
生活スタイルや仕事の内容や
人間関係もどんどん変ってゆく。

でも、
その人だけはいつも同じ場所にいて、
変わらず同じ行動をしている。

その存在はまるで道端のお地蔵さんのようだ。

本当は何者なのか?
を知りたい興味ももちろんあるが、
いつも、必ずそこにいるというだけで、
そういう人たちには既に価値がある。

日々忙しく変っていかねばならない
一般人にとっては、
どこか安心できる存在なのかもしれない。

きっと私は、その詩集売りの女の子に
歳をとらせたくなかったのだろう。

同時に、そういう人たちは、やっぱり
自分より恵まれないと思われる状況のまま
変らないでいてくれているからこそ、
安心して見られる
という部分が、
恥ずかしいけど私にはある。

私だけではないだろう。
人は悲しいけれど少しだけでも
誰かより優位に立っていたいものだろうから。

いつも駅前に必ず立っている
幸せで大金持ちのおっさん
なんていうものには何の価値も無いのだ。

ちょっと薄倖そうだったり。
ちょっと笑える存在だったりする部分に
価値があり、
それが変らないままでいてくれるからこそ、
余計安心できるのではないだろうか。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

映画「ヨコハマメリー」は
ある意味、物足りなさを感じる人も
多いと思うが
私にとっては久々に面白い
ドキュメンタリーだった。

それにしても、
あの詩集売りの女の子は実に気になる。
本当に20年前から変わっていないように
見えたんだから…。

今度、また、新宿で彼女を見かけたら、
思い切って声を掛けてみようか。

とても売れているとは思えない
あの詩集を、思い切って買ってみようか。

「20年前から、あなたを知ってるんです。
いつもここに立って詩集を売ってますね。
一冊下さい」
おそらく彼女は
ニッコリと微笑んで
詩集を手渡しながら
優しい声でこう言うのだ。

「ありがとう。
20年間待って、やっと
買ってくれる人が現れました。
これで私の役目も終りです…」

次の瞬間
彼女の姿が
フッと目の前から消えうせて……

....
....
...

...もしも、これを読んでくれているあなたが、
今度、新宿駅で
雑踏の中
首から「私の詩集」という色紙大の看板を下げ、
佇んでいる男を見たら…

それは、
きっと、
私かも知れません…。





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最終更新日  2006年12月20日 17時51分56秒
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