ひこじいさんのブログ

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2016年01月21日
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清少納言が詠み、百人一首にもなっている有名な歌がある。

後拾遺集(巻16・雑上・939)詞書
大納言行成、物語などし侍りけるに、内の御物忌にこまればとて、いそぎ帰りて、つとめて、鳥の声にもよほされて、といひおこせて侍りければ、夜深かりける鳥の声は函谷関のことにや、といひつかはしたりけるを、たちかへり、これは逢坂の関に侍る、とあればよみ侍りける。
(大納言行成が雑談した時に、内裏の物忌に参内するといって急いで帰り、翌朝、「鶏の声に促されまして」と言って寄越しました。
そこで私は「深夜のうちに鳴いた鶏の声は、函谷関の故事でしょうか」と言い遣ったところ、折り返し「函谷関ではなく、恋人たちが逢い引きするという逢坂の関です」とあったので、詠みました。)

夜をこめて 鳥のそら音ははかるとも よに逢坂の関は許さじ
(深夜のうちに鶏の鳴き声を真似て騙そうとしても、函谷関ならばともかく、私の操は堅く守られているので決して通ることを許しません。)

清少納言と藤原行成は宮中で親しく言葉を交わす仲であったことから、この歌が決して高飛車に行成を拒否しているのでは無く日ごろ親しい間柄故に戯れてやり取りをしているに過ぎない。

「鳥のそら音ははかるとも」と、それに続く「関」はで司馬遷の「史記」に出てくる孟嘗君の函谷関の故事であることを表している。


孟嘗君は追われて逃げ、夜中に函谷関に辿り着いた。ところが、関所は鶏の鳴き声がするまで開門しない決まりとなっていた。
食客の中に鶏の鳴き真似が上手い者がいて、真似をすると周りの鶏がその真似た声に呼応して一斉に鳴き始めた。
関所役人は騙されて、開門してしまう。おかげで、孟嘗君一行は逃げ延びることができた。

清少納言は教養がありこの故事を知っていたため、「夜をこめて…」の歌を詠むことができたものである。

「箱根八里」は中学唱歌として、明治34年(1901)に発表された。この歌の中にも、函谷関の名前が出てくる。
作詞者の鳥居 忱(忠一)には実際に函谷関を見たという記録が無いので、この詩もまた故事から引っ張ったものであろう。

随分と勇ましく驚くほどに誇張された表現だが、20世紀に向けての希望の年であり気分高揚を狙ったものであろうか。

♪箱根の山は、天下の嶮
函谷關もものならず
萬丈の山、千仞の谷
前に聳え、後方にささふ

昼猶闇き杉の並木
羊腸の小徑は苔滑らか
一夫關に当たるや、萬夫も開くなし

…。


万人もの男が攻めて来ても、一人の男が護っていればこの関所を落とすことができない…。と大風呂敷を広げている。
ただ実際には箱根旧街道の最高地点は、標高800mしかない。

箱根の関所の険しさに比較したら比べものにならないという「函谷関」とは、長安と洛陽の間の関所で王朝の死命を制する要衝であったとされ劉邦と項羽の攻防や、孟嘗君の故事などで知られる。

孟嘗君の故事からは、鶏鳴狗盗という諺が生まれた。
鶏の鳴き真似をして騙したり、犬のようにこっそり物を盗んだりするしか能がない者のことの意味の他にとるに足らない技能や芸でも役に立つことがあることの譬えとして使われる。





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最終更新日  2016年01月21日 17時08分39秒


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