仙台市泉区在住の健康オタクの気まぐれ日記

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カテゴリ: 医療問題
仙台市泉区の ながさわ歯科医院 の長澤です。いつも有り難うございます。皆様の健康に役立つ情報をお届けできたらと思っています



続 アメリカ医療の光と影  第167回

ダンスの効能

李 啓充 医師/作家(在ボストン)

不可能だった所作が次々と可能に

 今回は, ダンスの驚くべき効能 について,2つの事例を紹介する。

 最初に紹介する「奏効例」は脳性麻痺。まだ一例報告にしか過ぎないし,報告されたのは医学誌ではなく一般メディアのニューヨークタイムズ紙(2009年11月25日付)。「医学的エビデンス」と呼ぶにはほど遠い段階の情報であることは言うまでもないが,私にとっては「心底驚いた」としか言いようがないほど「劇的な」事例だったのであえて紹介する。

脳性麻痺患者

 ロゴフからの舞踏の誘いにモズガラが応じた理由はただ一つ,「お金がもらえるから」だった。モズガラは,「自分の肉体の制限に適合させた振り付けになるか,ロゴフがプロジェクトそのものをあきらめるか二つに一つ」と高をくくっていたのだが,その予想は見事に外れた。ロゴフは,あきらめるどころか,自分の振り付け通りにモズガラが舞うことにこだわったからだった。

 筋肉の緊張をやわらげるための「シェイキング」等,ロゴフは振り付け師として長年培ったテクニックを駆使,モズガラの肉体改造にとりかかった。そして,その効果はてきめんに現れた。例えば,生まれてこの方,踵を地面につけて歩くことができなかったモズガラが,両の踵を地面につけて歩くことができるようになったのである。ロゴフ自身が「a lot of howling, screaming, crying, sweating」と形容するように,その作業は決して楽なものではなかったが,モズガラにとってこれまでまったく 不可能だった所作が次々と可能になっていった のだった。

 脳性麻痺に対するダンス(より正確にはロゴフが施したリハビリ)の効果,にわかには信じがたいものであるのは百も承知しているので,お疑いの向きは,CBS newsが作成したビデオをご覧いただきたい。

病の牢獄で失われた「自由」を取り戻す

 ダンスが奏効することが示されている疾患の2つ目は パーキンソン病 。上述した脳性麻痺の「一例報告」とは違い,こちらは,少数ながら文献も存在する。例えばワシントン大学Earhartの総説(註1)によると,ダンス療法は,通常の運動療法と比べて,(1)動作の開始(initiation),(2)バランス,(3)歩行の所作・距離の改善等,あらゆる面で優れていた。また,奏効する理由については,ダンスという行為が,通常の動作で使われる神経経路をバイパスする可能性等が示唆されている。

 Earhartらは,ダンスの中でも,特にタンゴの効果について研究を進めてきたが,他のダンスと違って基本ステップが「歩行」であることがタンゴを選んだ理由の1つだった。パーキンソン病患者にとって後ろ向き歩行が特に苦手であることはよく知られているが,タンゴを踊っている間は,後ろ向きのステップが容易になるというから,驚かざるを得ない。

 Earhartらは,さらに,タンゴとタンゴでないダンス(ワルツ・フォックストロット)を比較したが,タンゴのほうが若干効果は優れていたものの,ワルツ・フォックストロットも,動作・歩行・バランスの改善効果を示したという。さらに,タンゴについて,パートナーがいる・いないの効果も比較したが,パートナーをつけないダンスでも同等の効果が得られ,ダンスの治療効果はパートナーの「物理的支え」によるものでないことも示した(ただし,研究に参加した患者たちは「パートナーのいないダンスは面白くない」とこぼしたという)。

 実は,パーキンソン病のダンス療法は,Earhartらの臨床研究よりも,患者に「踊る喜び」を提供するための「ダンス教室」活動が先行した。特に,ニューヨークに本拠を置くマーク・モリス・ダンス・グループ(註2)は,2001年からパーキンソン病患者のためのダンス教室を開催,実績を積み重ねてきた。

 同センターによると,病による身体制限故に家に閉じこもりがちだった患者たちにとって,体が動くこと・踊ること自体の喜びに加えて,社会・コミュニティへの帰属意識が復活することの喜びも大きいという。換言すると,「パーキンソン病」という名の牢獄に閉じ込められてきた患者たちにとって,ダンス療法は,失われた「自由」を取り戻す役割も果たしているのである。

(つづく)



註2:同ダンス・グループのホームページでダンス教室の実際が映像で紹介されている。






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Last updated  2010年02月12日 17時35分53秒コメント(0) | コメントを書く


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