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2026.01.02
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「利益ゼロ」のはずが課税対象に?――譲渡所得と減価償却をめぐる“フェラーリ事件”の本質【国際税理士が解説】
1/1(木) 10:00配信 THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)
不動産や高額資産を売却した際、「買った値段と同じで売れたのだから、利益は出ていない」と考える人は少なくありません。しかし、日本の税法は、そのような直感的な理解をそのまま受け入れてはくれません。取得から売却までの期間に応じて行われる「減価償却」が、譲渡所得の計算に大きな影響を及ぼすからです。この考え方をめぐり、限定生産の高級車フェラーリの売却を巡る事案が国税当局と争われ、大きな注目を集めたことがありました。譲渡所得の基本構造を整理したうえで、この“フェラーリ事件”が投げかける税法上の論点を読み解いていきます。
「同じ値段で売ったのに課税される」譲渡所得の基本構造
譲渡所得は、資産を売却した際の「売却価額」から、「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて計算されます。
ここで重要なのが取得費の考え方です。取得費には、購入時の価格がそのまま用いられるわけではありません。建物や車両など、時間の経過や使用によって価値が減少すると考えられる資産については、保有期間中に減価償却が行われ、その分だけ取得費が圧縮されます。
たとえば、1億円で購入した住宅を考えてみましょう。
内訳が土地4,000万円、建物6,000万円で、建物が木造住宅であった場合、法定耐用年数は22年です。22年が経過すれば、建物部分の取得費は原則としてゼロになります。
この住宅を22年間居住した後、1億円で売却したとすると、取得費として認められるのは土地の4,000万円のみとなります。

「売値と買値が同じ=利益ゼロ」という感覚が、税務上は通用しない典型例といえるでしょう。
減価償却しなくてよい資産とは?
もっとも、すべての資産が減価償却の対象になるわけではありません。
税法上、減価償却を行わない資産とは、原則として「時の経過または使用によって価値が減少しないもの」とされています。具体的には、歴史的価値や希少価値を有し、かつ代替性のない資産がこれに該当します。
代表例として挙げられるのが、ピカソやゴッホといった著名画家の絵画、あるいは文化勲章受章者による美術作品などです。
実務上は、美術品について「1点100万円以上」であれば、減価償却の対象としないという取り扱いが、一応の目安とされています。
限定生産フェラーリは「減価しない資産」か
問題となったのは、「Ferrari 612 Scaglietti ANNIVERSARY F1」という限定モデルの売却事案です。
この車両を売却した納税者は、購入価格以下での売却だから、譲渡所得の申告を行いませんでした。その理由として、「このフェラーリは使用や時間の経過によって価値が減少する車ではない」と主張したのです。
納税者側の論理は次のとおりです。
このモデルは全世界で349台しか生産されておらず、購入できるのは長年フェラーリブランドに貢献してきた特定の顧客に限られる。実用的な移動手段としての車両ではなく、走行体験そのものが価値の中核を成す存在であり、美術品オークション会社で取引される性質も有する。他の車両との代替性はなく、希少性は極めて高い――。

国税不服審判所の判断と残された疑問
これに対し、東京国税不服審判所は納税者の主張を退けました。
判断のポイントとされたのは、「数百台が生産されていること」と「売却時点での経過年数が約20年程度にすぎないこと」です。
これらを踏まえ、同審判所は、この車両について「歴史的価値または希少価値を有し、かつ代替性のない資産とはいえない」と判断し、減価償却資産に該当すると結論づけました。
しかし、この判断にはなお疑問が残ります。

この棄却理由は、明確な条文基準というよりも、個別事情を踏まえた評価判断に依拠した側面が強い印象を受けます。
仮にこの事案が東京地方裁判所に持ち込まれた場合、判断が変わる可能性を完全に否定することはできないでしょう。
譲渡所得と減価償却の問題は、不動産に限らず、高額車両や美術品、さらにはコレクターズアイテムにも及ぶテーマです。
「これは減価しないはずだ」という感覚的な判断が、税務の世界では通用しないケースは少なくありません。





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Last updated  2026.01.02 12:00:12
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