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前回のブログから,何と3か月以上経過していたとは思いませんでした。ご無沙汰してすみません。その間に,橘玲さんの新刊本『プアジャパンーインフレ世界を生き抜く資本戦略ー』が出たのでした。 発行前夜に「新しい本が明日出ます。」という公式サイトからのお知らせメールが届いたのです。前日にお知らせするなんて,橘さんってずいぶん奥ゆかしい方なのだと思いました。(本を出すなんて一生なさそうな)私だったら,発行が決まった時に「ついに出ます!6月16日は絶対にチェック!!一生に一度の奇跡」とか大騒ぎすると思うのですが,本を出し慣れている方は出版日間近でも案外冷めている,そういうものなのかもしれません。 この「プアジャパン」は,出世魚みたいに名前を変えながら出来上がった本です。こういう本の出し方もあるのですねー。ダイヤモンド社から出された『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』から講談社の文庫本『国家破産は怖くない』を経てプレジデント社から『プアジャパン』になるというもので,書名が変わっていっているだけでなく,出版社も全部違っているので,確実に成長している感があります。法律の先生方の本は,改定版とか言いながら同じ書名で同じ出版社から出ることが多いように思えますが,経済系はそうでないのでしょうか。書名や出版社を変えながらブラッシュアップするという本の書き方もあるんだなあと思いました。 4月に書いた熊野さんの本とほぼ同じ大きさ,ほぼ同じページ数の本ですが,情報量は3~4倍あるような印象です。縦書きと横書きの違いもあるのでしょうが,書き下ろした本とブラッシュアップを何度もしている本の違いもあると思います。文庫本の時よりも断然読みやすいですし,なんだか別の本のような錯覚にとらわれます。近未来小説では,ハイパーインフレ説ではなくて,円安がずーっとジワジワ続いて,インフレもずーっとジワジワ続いていく説になり,それでも日本が貧しくなるという結果は変わらないという話になっていました。多分,日本の将来の展望について,橘さんに迷いはなくなったのだろうと思います。全体的に話がすっきりした印象を受けました。優秀な人は優秀な人なりに成長するのだなあ,と本を見て思いました。 読み手を一生懸命励ましてくださっている本です。私を応援してくれているような気持になりました。「日本は貧乏な国になるけど,自分を守る方法があるから絶望しなくて大丈夫だよ」と言い続けてくれています。複雑な金融商品のしくみをとてもわかりやすく説明してくれているのは相変わらずです。オプション取引のところは,ファイナンシャルプランナーのテキストでは全然わからなかったことがわかった気がしました。ベースマネーのブタ積みの話とか保険とギャンブルは同じ理屈だとか面白い話も書いてありますし,所得の再分配について高齢者と母子世帯で比較しているなど,新たな気付きもありました。結構愕然としたのが,「(投資家は)日本の財政がどうなるのかはあまり気にしません。そんなことを一生懸命考えても儲からないのです。」という記述です。「考えても儲からないことは気にしない」って,そういう割り切りが出来る人がいるのですねえ。しかも沢山いるわけです。それは強烈に強いメンタルですねえ。とても太刀打ちできる世界ではないと思いました。 弁護士目線で見ると,ちょっと気になる部分もあります。「所有権には「使用」「譲渡」「処分」という3つの権利があります」という部分はどうしても「使用」「収益」「処分」ではないか(民法第206条)と思ってしまうなどです。これによれば譲渡は処分の一類型となるわけです。でも,橘さんのような考え方もできますし(経済界ではそう言われているのかもしれません),話の筋としては何も問題ないのでそこで思考を止めてしまってはとてももったいないです。 今回初めて気付いたことに,「この本は個人資産を増やすことのノウハウ本のつもりで書かれたらしい」というのがあります。私は,「財政が悪化すると国がどうなるのか」が知りたくて前の本を買ったので,自分の資産を増やそうとか守ろうとか全然思っていませんでした。それは今でもあまり変わっていなくて,お金には困るのが私の人生で,そうそう簡単に資産が増えたり生活が楽になったりするわけがないと思っています。でも,この本によれば何か防衛していかないといけないということのようでもあります。世の中全体が悪くなっていくのに対し,自分だけが良い状態で生き残るというのも私にとってあんまり得意な事でもなさそうです。だけど,せめて知識を少しでも持っていれば何かの足しにはなるだろうと思いました。急激に大変な変化が来るわけではないらしいというのは良かったと思いますが,社会の変化のスピードは思うよりもずっと早くなっている感じがするので,大変な状況に向かっているのは間違いなさそうです。 この本,いろいろ気付かせてくれます。しばらく手元に置いて読み返そうと思います。
2026年07月26日